門前薬局で働いていて、ふとこう思ったことはないでしょうか。「この診療所が閉まったら、うちはどうなるんだろう」。
その不安を裏づける数字が、また更新されました。東京商工リサーチによると、2026年1〜9月の医療機関の倒産は59件で、過去最多です。中でも、身近なクリニックと歯科医院の苦境が目立ちます。この記事では、最新のデータを確かめたうえで、門前薬局で働く薬剤師が自分の職場のリスクをどう測り、何を準備しておけばいいかを整理します。
この記事の要点
💊 薬剤師転職をお考えなら
- 2026年1〜9月の医療機関の倒産は59件(前年同期比28.2%増)で過去最多。クリニックは29件で過去最多
- 原因では「後継者難」が14件と約3倍。経営が順調でも、院長が高齢で継ぐ人がいなければ閉院はありうる
- 調剤薬局の倒産も、2025年は38件で2年連続の過去最多。8割近くが負債1億円未満の小規模な薬局
- 処方箋の多くを1つの医療機関に頼る薬局ほど、閉院の影響を直接受ける
- 応需先の偏り、院長の年齢、会社の備えを確かめ、慌てなくて済むよう在職中に選択肢を知っておく
2026年1〜9月、医療機関の倒産が過去最多に
東京商工リサーチの集計(Yahoo!ニュース掲載、10月18日配信)によると、2026年1〜9月の医療機関の倒産は59件で、前年同期から28.2%増えました。1〜9月としては、これまで最も多かった2009年(53件)も上回っています。このペースが続くと、年間で70件を超え、2025年の67件を上回る可能性があるとされています。
| 業態 | 2026年1〜9月 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 病院 | 8件 | 9件 |
| クリニック | 29件(過去最多) | 18件 |
| 歯科医院 | 22件 | 19件 |
| 合計 | 59件(過去最多) | 46件 |
倒産の形はほとんどが破産で、57件(96.6%)でした。医療機関であっても、立て直しは簡単ではないということです。
「後継者難」が約3倍に
原因では、「後継者難」が14件と、前年同期の5件から約3倍に増えました。病院・クリニック・歯科医院のすべてで前年を上回っています。このほか「人手不足」が7件(前年同期4件)でした。光熱費や備品の値上がり、人口減少による患者数の減少、設備の老朽化も、経営を苦しくしている背景として挙げられています。
調剤薬局の倒産も、2年連続で過去最多
薬局自身も例外ではありません。東京商工リサーチの別の集計(「調剤薬局」の倒産が止まらない、過去最多の38件)では、2025年の調剤薬局の倒産は38件(前年比35.7%増)で、2年連続で過去最多を更新しました。
- 負債1億円未満の小規模な倒産が29件で、全体の76.3%
- 原因では「販売不振」が25件で最多(65.7%)
- 大手の再編が進み、規模と資金力のある大手と、独立系の小規模な薬局との差が広がっている
- 薬剤師不足のなかで大手が待遇を上げて採用を進め、そのしわ寄せが中小に及んでいる
処方元の医療機関が閉じる。薬局そのものが立ち行かなくなる。門前薬局で働く薬剤師は、この2つのリスクを同時に抱えています。
処方元が閉じるとき、薬局に起きること
門前薬局の収益は、目の前の医療機関の処方箋に支えられています。処方箋の応需先が1つに偏っているほど、その影響は大きくなります。
- 処方箋の枚数が、閉院した翌日から一気に減る
- 在庫していた医薬品の多くが動かなくなる
- 店舗の維持が難しくなり、統廃合や閉局の判断が早まる
- 働いている薬剤師には、異動か退職かの選択が突然やってくる
医療機関の閉院は、薬局に前もって相談されるとは限りません。勤務先の薬局が閉局することになったときの権利やお金の扱いは、勤務先の薬局が閉店・閉局に…薬剤師が知るべき権利とお金で紹介しています。
「後継者難」が増えているという意味
経営の悪化による倒産なら、患者数の減少やスタッフの離職など、兆しが見えることがあります。しかし後継者難は違います。経営が順調でも、院長が高齢で継ぐ人がいなければ、ある日終わります。「混んでいるから安心」とは限らないのです。そして院長の年齢や、後継の医師がいるかどうかは、多くの場合、調べれば分かります。
自分の薬局のリスクを測る
| 確かめること | 見方 |
|---|---|
| 処方箋の何割が、1つの医療機関から来ているか | 割合が高いほど、その医療機関の閉院の影響を直接受ける |
| その医療機関の院長の年齢 | 高齢で、後継の医師が見えない場合は要注意 |
| 後継の医師、分院、法人化の動き | 承継の準備がされている様子があるか |
| 処方箋以外の収益 | 在宅、施設、OTCなど、別の柱があるか |
| 会社の店舗数と、近くの店舗 | 閉局しても異動で雇用を守れる体制か |
| 会社が応需先を広げる動きをしているか | 複数の医療機関から応需できる立地への出店など |
処方箋の枚数と薬剤師の人数から職場の状況を読む方法は処方箋枚数と薬剤師数の見方、門前薬局の将来性の考え方は門前薬局に将来性はない?で紹介しています。
会社の備えで、あなたの選択肢が変わる
| 会社の状態 | もし処方元が閉院したら |
|---|---|
| 在宅や施設対応で、処方箋以外の柱を作っている | 店舗の収益の落ち込みを、ほかの柱で支えられることがある |
| 同じ地域に複数の店舗がある | 統廃合になっても、異動で雇用を守れることがある |
| 複数の医療機関から応需できる立地に出店している | 1つの閉院の影響が小さい |
| 今の処方箋の枚数が続く前提で運営している | 閉院と同時に、店舗の存続が難しくなることがある |
異動になった場合の通勤や応援の条件は、他店舗への応援勤務も参考にしてください。
確かめる順番
- 処方箋の応需先の内訳を確かめ、1つの医療機関への依存度を把握する
- 「応需先が閉院した場合、この店舗はどうなりますか」と会社に聞き、答えが用意されているかを見る
- 在職中に求人を見て、自分の条件が業界の中でどのあたりかを知っておく
3つ目は、今すぐ転職するという意味ではありません。閉院が決まってから動く人と、その前から相場を知っている人とでは、選べる範囲が違います。在職中の転職活動が職場に知られないための注意点は在職中の転職活動が職場にばれないためにで紹介しています。
応需先に左右されにくい働き方
- 複数の医療機関の処方箋を受ける薬局や、面で応需する薬局
- 在宅や施設に力を入れている薬局
- 店舗数が多く、異動で働き続けられる会社
- 病院や企業など、門前の医療機関に左右されない職場
病院への転職は薬剤師が病院に転職するには、企業で働く道は企業薬剤師という選択肢で紹介しています。
よくある質問
Q. 門前のクリニックが閉院したら、薬局も閉局しますか?
必ずしも閉局するとは限りませんが、処方箋の多くをそのクリニックに頼っている場合は、店舗の存続が難しくなることがあります。会社の店舗数や、ほかの収益の柱によって対応は変わります。
Q. 勤務先の薬局が閉局したら、どうなりますか?
同じ会社のほかの店舗への異動か、退職かを選ぶことが多くなります。退職する場合の給与や有給休暇、失業手当の扱いは、事前に確かめておきましょう。
Q. 院長の年齢は、どうやって知ればいいですか?
医療機関のホームページの院長紹介や、経歴の記載から分かることがあります。後継の医師が在籍しているかもあわせて確かめましょう。
Q. 今すぐ転職すべきですか?
今すぐ転職する必要はありません。ただ、応需先への依存度が高く、会社の備えも見えない場合は、在職中に求人を見て選択肢を知っておくと安心です。
まとめ
- 2026年1〜9月の医療機関の倒産は59件で過去最多。クリニックは29件で過去最多
- 原因の「後継者難」は約3倍。繁盛している医療機関でも閉院はありうる
- 調剤薬局の倒産も、2025年は38件で2年連続の過去最多
- 応需先への依存度、院長の年齢、会社の備えを確かめる
- 慌てなくて済むよう、在職中に自分の条件の相場を知っておく
応需先に左右されにくい職場を、担当者に確かめてもらいながら探したい場合は、薬剤師の転職エージェントの選び方と比較と、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較を参考にしてください。「今すぐ転職」ではなく「今の条件が業界の中でどのあたりか知りたい」という相談の仕方でも構いません。



コメント