育休届を出したら破いてやる――。そんな趣旨の発言を社長から受けたと、ウエディングドレスのレンタル事業を営む会社の40代の男性社員が主張し、会社の社長らに損害賠償を求めて提訴したと報じられました(FNNプライムオンライン、2026年10月7日)。
男性が育児休業を取ろうとしたときの嫌がらせは「パタハラ(パタニティハラスメント)」と呼ばれます。少人数で回している職場が多い薬局やドラッグストアでも、決して他人事ではありません。この記事では、報道の内容を整理したうえで、法律の決まり、薬剤師の職場に置き換えたときに気をつけたいこと、相談先、育休を取りやすい職場の見分け方をまとめます。
この記事の要点
💊 薬剤師転職をお考えなら
- 会社は、育児休業の申出を拒めない。申出や取得を理由とする不利益な扱いも禁止されている(育児・介護休業法)
- 上司が「取るなら辞めてもらう」と示唆したり、申出をしないよう言ったりすることは、1回でもハラスメントに当たる
- 困ったときは、社内の相談窓口のほか、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できる
- 転職先を選ぶときは、男性の育休の取得状況や、休む人が出たときの体制を確かめる
報道の内容
報道によると、40代の男性社員は、2023年から2024年にかけて育児休業を取る前後に、社長や役員から、育休届を出したら破いてやるという趣旨の発言を受けたほか、育休中も業務への対応を求められたと主張しています。請求額は220万円で、会社側は取材に対し「担当者が不在のためコメントできない」としています(FNNプライムオンライン(Yahoo!ニュース))。
これは訴えた側の主張で、裁判で事実と認められたものではありません。この記事では、個別の会社の是非ではなく、同じような状況に置かれたときに知っておきたい決まりと対処を整理します。
法律ではどう決まっている?
| 決まり | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 育児休業の申出を拒めない | 会社は、要件を満たす労働者からの育児休業の申出を拒むことができない | 育児・介護休業法 第6条 |
| 不利益な扱いの禁止 | 育児休業の申出や取得を理由に、解雇・降格・減給・不利益な配置転換などをしてはならない | 同 第10条 |
| ハラスメントの防止措置 | 上司や同僚の言動で就業環境が害されないよう、相談窓口の設置などの措置を講じる義務が会社にある | 同 第25条 |
出典:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」、厚生労働省「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策…は事業主の義務です!!」
男性は、配偶者の出産予定日または子の出生日から育児休業を取ることができます。子の出生後8週間以内に、通常の育休とは別に取れる「産後パパ育休(出生時育児休業)」もあります。
どんな言動がハラスメントに当たる?
厚生労働省は、育児休業などの制度の利用に関するハラスメントを、次の3つの型で示しています。
| 型 | 例(厚生労働省の資料より) | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの | 休みを取るなら辞めてもらう、と言われた | 上司の言動なら1回でも該当 |
| 制度の利用の申出や利用を妨げるもの | 「男のくせに育児休業をとるなんてあり得ない」と言われ、取得をあきらめざるを得ない | 上司は1回でも該当。同僚は繰り返し・継続的なもの |
| 制度を利用したことで嫌がらせをするもの | 利用を理由に雑務ばかりさせる、繰り返し「迷惑だ」と言う | 繰り返し・継続的なもの |
一方で、業務の体制を見直すために、上司が育児休業をいつからいつまで取るのかを確認することなど、業務上の必要性に基づく言動はハラスメントに当たらないとされています。
薬剤師の職場に置き換えると
薬局やドラッグストアは、少ない人数でシフトを組んでいることが多く、「代わりの薬剤師がいない」ことを理由に、育休を言い出しにくい雰囲気になりがちです。たとえば次のような言動は、内容や状況によっては、制度の利用を妨げる言動にあたるおそれがあります。
- 「うちは一人薬剤師の店だから、育休は無理だよ」と言われ、申出をあきらめさせられる
- 「管理薬剤師が育休なんて聞いたことがない」と、申出を取り下げるよう言われる
- 育休から戻ったら、理由の説明なく調剤から外され、雑務ばかりになった
人手が足りないことは、本来は会社が体制を整えて解決する問題です。管理薬剤師の育休については管理薬剤師は育休を取れる?、引き継ぎと復帰の体制については積水ハウスの男性育休プロジェクトから考えるも参考にしてください。
育休を言い出す前に準備しておくこと
- 就業規則で、育児休業の手続きと申出の期限を確認する
- 取りたい期間と、業務の引き継ぎの案をまとめておく
- 上司に伝えたら、日時と内容をメモしておく。申出は書面やメールでも出しておく
- 否定的な言動があったら、日時・場所・言われた内容・その場にいた人を記録する
記録は、社内で相談するときにも、外部の窓口に相談するときにも役に立ちます。
困ったときの相談先
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 社内の相談窓口・人事部門 | 会社には、育児休業に関するハラスメントの相談窓口を設ける義務がある |
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 育児休業に関するハラスメントや不利益な扱いの相談。会社への助言・指導、紛争解決の援助や調停の制度もある |
相談先の連絡先は、厚生労働省「都道府県労働局所在地一覧」から確認できます。相談したことを理由に不利益な扱いをすることも禁止されています。
育休を取りやすい職場の見分け方
今の職場で状況が変わらない場合は、育児と両立しやすい職場への転職も選択肢になります。応募の前や面接で、次の点を確かめておきましょう。
| 確かめること | 見るところ・聞き方の例 |
|---|---|
| 男性の育休の取得状況 | 従業員300人を超える企業は、2025年4月から男性の育休取得率などの公表が義務になった。会社のホームページなどで確認する |
| 休む人が出たときの体制 | 「急な休みや長期の休みのときは、どのように薬剤師を手配していますか」 |
| 実際に取った人がいるか | 「男性の薬剤師で、育児休業を取った方はいますか」 |
| 復帰後の働き方 | 「育休から復帰した方は、どのような勤務になっていますか」 |
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管理薬剤師でも、育休は取れる
管理薬剤師であっても、要件を満たしていれば育児休業を取ることができます。管理薬剤師が1年間の育休を会社に伝えたときの記事は「育休1年取ります!」現役管理薬剤師が会社に伝えた結果、1年間の収入と支出の考え方は薬剤師が1年間育休を取るとどうなる?にあります。言い出しにくいと感じている人は、あわせて読んでみてください。
よくある質問
Q. 少人数の薬局でも、育休は取れますか?
要件を満たしていれば、会社は申出を拒めません。人手の手配は会社が考えるべきことです。早めに伝え、引き継ぎの案を一緒に示すと話を進めやすくなります。
Q. 上司から「育休を取るなら辞めてもらう」と言われました。
上司が不利益な扱いを示唆する言動は、1回でもハラスメントに当たるとされています。日時と内容を記録し、社内の窓口や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談しましょう。
Q. 育休中に仕事の連絡が来て困っています。
育児休業は、原則として働かない期間です。対応できる範囲を会社と話し合い、改善しない場合は相談窓口に相談しましょう。
まとめ
- 会社は育児休業の申出を拒めず、申出や取得を理由とする不利益な扱いも禁止されている
- 上司が不利益を示唆したり、申出をしないよう言ったりすることは、1回でもハラスメントに当たる
- 言動は記録し、社内の窓口や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する
- 転職するなら、男性の育休の取得状況と、休む人が出たときの体制を確かめる
育児と両立しやすい職場を担当者と相談しながら探したい場合は、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較も参考にしてください。



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