PMDA(医薬品医療機器総合機構)は2026年10月30日、チェプラファームと住友ファーマによる「ファンギゾン注射用50mgとアムビゾーム点滴静注用50mgの取り違え注意のお願い」を掲載しました。2つの薬を取り違えたことで、ファンギゾンが過量に投与され、患者さんが亡くなった事例が1例報告されたためです。
どちらも有効成分は同じアムホテリシンBですが、投与量や投与時間、調製の方法が大きく違います。この記事では、メーカーの資料に書かれている事例、2つの薬の違い、求められている対策と、薬剤師が職場で確かめておきたいことをまとめます。
※2026年10月のメーカーの資料(PMDAのサイトに掲載)をもとにしています。実際の使用にあたっては、最新の電子添文を確認してください。
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この記事の要点
- ファンギゾン注射用50mgとアムビゾーム点滴静注用50mgの取り違えで、ファンギゾンの過量投与による死亡事例が1例報告された
- 同じアムホテリシンBでも、通常投与量はファンギゾン0.25〜0.5mg/kg/日、アムビゾーム2.5〜5mg/kg/日と10倍の差がある
- 投与時間(3〜6時間以上と1〜2時間以上)や調製の方法も違い、同じ用量で置き換えることはできない
- メーカーは、一般名だけでなく販売名を書くこと、投与量の確認、オーダーシステムの警告、新しく配属された人への周知を求めている
どんな事故が起きたのか
資料に載っている事例は、日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業」に報告されたものを改変したものです。
- 心不全を併存する移植後の患者さん。集中治療室(ICU)で全身管理中に、心不全からショック、多臓器不全となった
- 抗真菌薬を変更する際、外科から相談を受けた内科医は、アムビゾームを想定して「アムホテリシンB 5mg/kg 1日1回 1-2時間かけて投与」とカルテに書いた
- 外科医はカルテを見ながら、アムホテリシンBの注射剤として「ファンギゾン 250mg(約5mg/kg)」を、重症部門専用のシステムで指示した
- ファンギゾンの投与から1時間後に心停止となり、患者さんは亡くなった。翌日、投与量・濃度・速度が過剰だったことが分かった
背景・要因として、資料は次の点を挙げています。
| 背景・要因 | 内容 |
|---|---|
| 2種類の採用が知られていなかった | アムホテリシンBの注射剤として「アムビゾーム」と「ファンギゾン」の2製品を採用していることが、処方した医師に十分に認識されていなかった |
| システムの警告がなかった | 重症部門のシステムには薬剤の上限用量をチェックする仕組みがなく、警告が表示されなかった |
| 薬剤師の監査がなかった | 重症部門では病棟薬剤師による投与前の監査が必須ではなく、夜間は薬剤師の監査なしに投与される運用だった。一括請求用の注射剤伝票には患者情報や用法・用量が書かれておらず、薬剤部での処方監査は行われていなかった |
出典:チェプラファーム・住友ファーマ「ファンギゾン注射用50mgとアムビゾーム点滴静注用50mgの取り違え注意のお願い」(2026年10月、PMDA掲載)
ファンギゾンとアムビゾームの違い
資料の比較表を、そのまま整理すると次のとおりです。
| 項目 | ファンギゾン注射用50mg | アムビゾーム点滴静注用50mg |
|---|---|---|
| 一般名 | アムホテリシンB | アムホテリシンB |
| 製剤の特性 | デオキシコール酸塩製剤 | リポソーム製剤 |
| 通常投与量(真菌感染症に静注する場合) | 0.25〜0.5mg/kg/日 | 2.5〜5mg/kg/日 |
| 調製の方法 | 注射用水など10mLでゆっくり振とうして溶かし、5%ブドウ糖液500mL以上で薄める | 注射用水12mLで激しく振り混ぜて溶かし、5μmのフィルターでろ過した後、5%ブドウ糖液100mLまたは250mLで薄める |
| 投与時間 | 3〜6時間以上かけて点滴静注 | 1〜2時間以上かけて点滴静注 |
| 過量投与 | 心停止、呼吸停止が起こることがある。血液透析で除去できない | 血液透析や腹膜透析では、体内から除去されないと思われる |
どちらも重大な副作用に心停止の記載があります。名前の響きが違っても、「アムホテリシンB」という一般名でやりとりすると、どちらの製品を指しているのかが分からなくなるのが、この取り違えの怖いところです。
メーカーが求めている対策
- 処方オーダー、処方監査、調製、投与の各段階で、一般名だけでなく販売名、用法・用量を確認する
- 処方オーダーシステムで、「アムホテリシンB」で検索したときに「同一有効成分を含むアムビゾーム(ファンギゾン)と投与量が異なることに注意」といった表示を出す
- 2つの薬を取り違えやすい医薬品として知ってもらう機会を設ける。医師・薬剤師などが新しく配属されたときは、特に周知を徹底する
- 販売名や用法・用量を並べた表(資料の4ページ目)を薬局内に掲示する
ほかにも出ている「取り違え注意」
PMDAの同じページには、製薬企業からの取り違え注意のお願いが並んでいます。保険薬局やドラッグストアでも扱う内服薬では、次のようなものがあります(掲載年月はPMDAの一覧のとおり)。
| 掲載 | 組み合わせ |
|---|---|
| 2026年1月 | ゾフルーザとゾコーバ |
| 2016年3月(2025年8月更新) | ノルバデックスとノルバスク |
| 2020年10月(2026年6月更新) | グラセプターカプセルとタクロリムス普通製剤(後発医薬品を含む) |
| 2020年9月 | タケキャブ錠とタケルダ配合錠 |
| 2022年7月 | マイスリーとマイスタン |
一覧はPMDA「製薬企業からの医薬品の安全使用(取り違え等)に関するお知らせ」で確かめられます。新しく掲載されたものを、職場で誰が確認して共有するのかも決めておきたいところです。ヒヤリ・ハットの集計は半年で49,794件のヒヤリハットの記事、情報の共有のしかたは公開ヒヤリ・ハット事例から考える薬局の転職先選びで紹介しています。
監査の体制は職場によって違う
今回の事例では、夜間は薬剤師の監査なしに投与される運用だったことや、処方監査に必要な情報が薬剤部に届いていなかったことが、要因に挙げられています。取り違えを防げるかどうかは、個人の注意だけでなく、職場の仕組みと人員にも左右されます。病院や薬局への転職を考えているなら、面接や見学で次のように聞いてみましょう。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 夜間・休日の監査 | 「夜間や休日の注射薬は、薬剤師が監査していますか」 |
| 病棟薬剤師の配置 | 「病棟薬剤師はどの病棟にいて、ICUなどの重症部門にも関わっていますか」 |
| 似た名前・同じ成分の薬の対策 | 「名前の似た薬や、同じ成分で用量の違う薬は、どのように区別していますか」 |
| 安全性情報の共有 | 「PMDAやメーカーの注意喚起は、誰がどのように共有していますか」 |
よくある質問
Q. ファンギゾンとアムビゾームは同じ薬ですか?
どちらも有効成分はアムホテリシンBですが、ファンギゾン注射用はデオキシコール酸塩製剤、アムビゾーム点滴静注用はリポソーム製剤です。用法・用量(投与量・投与時間)と調製の方法が大きく異なり、同じ用量で置き換えることはできないとされています。
Q. 通常の投与量はどのくらい違いますか?
メーカーの資料の比較表では、真菌感染症に静注する場合の通常投与量は、ファンギゾンが0.25〜0.5mg/kg/日、アムビゾームが2.5〜5mg/kg/日です。投与時間も、ファンギゾンは3〜6時間以上、アムビゾームは1〜2時間以上と異なります。実際の使用にあたっては最新の電子添文を確認してください。
Q. どんな事故が起きたのですか?
内科医がアムビゾームを想定して「アムホテリシンB 5mg/kg 1日1回 1-2時間かけて投与」とカルテに書き、それを見た外科医がファンギゾン250mg(約5mg/kg)を指示しました。投与の1時間後に心停止となり、患者さんは亡くなりました。翌日、投与量・濃度・速度が過剰だったことが分かっています。
Q. メーカーはどんな対策を求めていますか?
処方時に一般名だけでなく販売名を書き、特に投与量を確かめること、処方オーダーシステムで警告を表示するなどの防止策を検討すること、新しく配属された医師・薬剤師に周知すること、両剤の違いをまとめた表を薬局内に掲示することなどです。
まとめ
- ファンギゾン注射用50mgとアムビゾーム点滴静注用50mgの取り違えで、死亡事例が1例報告された(PMDAが2026年10月30日に掲載)
- 同じアムホテリシンBでも、通常投与量は10倍違い、投与時間や調製の方法も違う。同じ用量で置き換えることはできない
- 一般名だけでなく販売名を書き、投与量を確かめる。オーダーシステムの警告や、新しく配属された人への周知も求められている
- 夜間の監査や病棟薬剤師の配置など、職場の仕組みも事故を防ぐ鍵になる
ほかの安全性情報は、アメナリーフ錠のアナフィラキシーの追加やGLP-1受容体作動薬の美容・痩身目的の使用、業界の動き全体は薬剤師業界ニュース解説まとめで紹介しています。監査の体制や人員まで担当者に確かめてもらいながら職場を探したい場合は、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較や薬剤師転職エージェントの選び方と9社の比較も参考にしてください。
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