2024年1月から6月までの半年間に、全国の薬局から49,794件のヒヤリ・ハット事例が報告されました。 公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の数字です。この事業は2009年4月から続いています。 半年で約5万件。しかもこれは、事業に参加して報告している薬局からの分です。 この数字が意味しているのは、ひとつです。 ヒヤリハットは、起きるものとして扱われている。
まず、これは個人の資質の話ではありません
国が15年以上にわたって事例を集め続けているのは、根絶できるものだと考えていないからです。
集めて、分析して、共有する。そういう仕組みが必要だと判断されている領域だということです。
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もし「気をつければ防げる」性質のものなら、こうした事業は必要ありません。
ミスをしたあと、自分の注意力を責めてしまう人は多いと思います。
ただ、半年で5万件という数字の前では、それは正確な見方ではありません。
それでも、責任は個人に向きます
ここは正直に書きます。
調剤録に残るのは、監査した薬剤師の名前です。患者に健康被害が出れば、確認されるのはその人が適切に確認したかどうかになります。
体制が悪かった、人がいなかった、忙しかった。どれも事実であっても、そのときの主要な論点にはなりにくいのが現実です。
つまり構造はこうなっています。
起きることを前提に仕組みが作られている一方で、起きたときの責任は個人が負う。
だからこそ、どういう体制の中に自分を置いているかが決定的に効いてきます。
過誤が起きやすい体制には、共通点があります
自分の職場がどちら側かを、静かに点検してみてください。
- ① 調剤した本人が、そのまま監査までしている(第三者の目が入らない)
- ② 処方箋の枚数に対して、薬剤師の人数が明らかに足りていない
- ③ 監査中に電話や窓口対応で中断されることが日常になっている
- ④ 監査支援システムや自動分包機などの仕組みが入っていない
- ⑤ ヒヤリハットを報告すると、責められる空気がある
①と⑤が揃っている職場は、かなり危険です。
⑤が特に重要です。報告が上がらない職場では、同じ事例が繰り返されます。誰かが黙って処理した分だけ、次の人が同じ場所でつまずきます。
報告して責められるなら、報告しなくなる。それは個人の問題ではなく、その職場の設計の問題です。
「気をつける」で減らないことは、データが示しています
事故が起きたあとの対策が「今後は注意します」で終わる職場があります。
これは対策ではありません。何も変えていないからです。
実際に効くのは、手順を変えることです。監査を別の人がやる。中断が入らない時間を作る。確認の順番を固定する。仕組みで担保する。
この事業が集めた事例が公開されているのも、個々の薬剤師を戒めるためではなく、手順を見直す材料にするためです。
あなたの職場では、直近のヒヤリハットのあとに、手順が実際に変わったでしょうか。
変わっていないなら、同じことがまた起きます。そのとき名前が残るのは、またあなたかもしれません。
一度やってしまったあと、立ち直れないときの話
実害が出た経験のある人は、そのあと長く引きずります。
調剤の手が止まる、同じ薬を何度も確認してしまう、出勤前に動悸がする。よく聞く話です。
ここで多くの人が「自分は薬剤師に向いていないのではないか」と考えます。
ただ、順番が違います。
同じ人が、監査者のいる職場に移った途端に落ち着くことは珍しくありません。変わったのは本人ではなく、確認が二重になったという事実です。
向き不向きの問題として処理してしまう前に、環境を変えるという選択肢を一度検討してみてください。
出口は3つあります
① 監査を必ず別の人が行う体制の職場へ移る
これがいちばん直接的です。面接で「調剤者と監査者は分けていますか」と聞けば分かります。一人体制の店舗があるかどうかも、あわせて確認してください。
▶ あわせて読みたい:一人薬剤師がつらい・限界と感じたら|リスクと抜け出す方法【2026年版】
② 仕組みが入っている職場へ移る
監査支援システム、自動分包機、電子薬歴の連携。設備投資をしている会社は、過誤を個人の注意力で防ごうとしていないということです。設備の有無は、会社の考え方がそのまま出る部分です。
③ 調剤以外の職種へ移る
品質管理、学術・DI、安全性情報、薬事。いずれも医薬品に関わる仕事ですが、目の前の患者に直接渡す業務ではないため、リスクの構造が変わります。調剤で消耗した人が移る先として、現実的な選択肢です。
▶ あわせて読みたい:【必見】企業薬剤師という選択肢|病院・薬局に限界を感じたあなたへ
確かめる順番があります
STEP1 直近のヒヤリハットのあと、職場の手順が実際に変わったかを思い出してください。変わっていないなら、それが体制の答えです。
STEP2 自分が担当した処方箋の枚数と、そのときの薬剤師の人数を書き出してください。感覚ではなく数字にすると、忙しさの正体が見えます。
STEP3 監査を分けている職場、設備が入っている職場が、実際にどんな条件で募集しているかを見てください。ここは中にいる限り分かりません。
STEP1とSTEP2は今日できます。急いで辞める必要はありません。
体制で守っている職場は、確かにあります
調剤者と監査者を必ず分けている会社、設備に投資している会社、ヒヤリハットの報告を評価する会社は実在します。
ただ、どちらの側かは外からは見えません。求人票に「監査は別の薬剤師が行います」とは書かれていないからです。
複数の薬局を見ているエージェントであれば、応募前に確認してもらえます。一人薬剤師の店舗があるか、監査の運用はどうなっているか、設備は入っているか。聞けば分かることです。
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まとめ|責めるべきは自分ではなく、確認が一重であることです
半年で49,794件。この数字は、あなたが特別に不注意ではないことを示しています。
同時に、起きたときに名前が残るのは個人だという現実も変わりません。
この2つが同時に成り立っている以上、個人にできる最も効果的な対策は、確認が二重になる場所に自分を置くことです。
注意力を上げることではありません。
あなたの職場では、あなたの確認のあとに、もう一人の目が入っているでしょうか。
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この記事の運営者:ぴろしき
調剤併設ドラッグストアで働く現役の管理薬剤師・薬局長。自身のパワハラ・転職経験をもとに、薬剤師が働きやすい環境を選ぶための情報を発信しています。詳しいプロフィールはこちら


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