2026年10月21日、厚生労働省は、血管炎の治療薬「タブネオスカプセル10mg」(一般名:アバコパン、キッセイ薬品)について、新しい患者さんへの投与の開始を差し控えるよう求める方針を示しました。承認の主な根拠となった臨床試験の成績に、信頼性の問題があると判断されたためです。
この記事では、発表の内容、問題とされた点、肝機能障害への注意、服用中の患者さんがいる薬局・病院の薬剤師が確かめておきたいことをまとめます。
※2026年10月25日時点の報道の内容をもとにしています。最新の情報は、厚生労働省・PMDA・製造販売元のお知らせで確かめてください。治療をどうするかは主治医の判断です。
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この記事の要点
- 新しい患者さんへの投与の開始は差し控えるよう求められた
- 投与中の患者さんは、中止または別の治療への切り替えを原則として検討する。続ける場合は、5月の安全性速報(ブルーレター)に沿った使い方を続ける
- 承認の根拠となった国際共同試験(ADVOCATE試験)の成績が、信頼性の基準に合わないとPMDAが判断した
- 国内の承認取り消しは未定。厚生労働省は年内を目標に手続きを進める
- 患者さんには、自己判断でやめず、主治医と相談するよう伝える
発表の内容
厚生労働省は、薬事審議会の医薬品第二部会に方針を示し、通知「アバコパン製剤の使用に当たっての留意事項について」で、医療関係団体に次のような対応を求めました。
| 対象 | 求められる対応 |
|---|---|
| 新しい患者さん | 投与の開始を差し控える |
| 投与中の患者さん | 中止または別の治療への切り替えを、原則として検討する。病状、治療の効果、ほかの治療の選択肢、治療を変えることの影響をふまえて判断する |
| 切り替えまでの間など、続けなければならない場合 | 5月に出された安全性速報(ブルーレター)をふまえた適正な使い方を続ける |
対象の病気は重い希少疾患のため、投与中の患者さんの治療をどう変えるかは、一人ひとり個別に判断する必要があるとされています。
出典:薬+読「タブネオス、有効性検証されず ~ 新患投与中止と代替治療へ 厚生労働省」(2026年10月23日、出典:薬事日報)、GemMed「血管炎等治療薬の『タブネオス』、新規患者への投与は控えよ!」(2026年10月22日)
タブネオスとは
タブネオスは、顕微鏡的多発血管炎と多発血管炎性肉芽腫症の治療に使われる薬です。2021年に承認され、2022年に販売が始まりました。承認のときから重い肝機能障害への注意が呼びかけられていましたが、販売後に死亡例を含む重い症例の報告が集まり、2026年5月に安全性速報(ブルーレター)が出されていました。
何が問題とされたのか
承認の主な根拠になったのは、米国の会社が実施した国際共同の第III相試験「ADVOCATE試験」です。報道によると、PMDAは次の点を確認しました。
- 最初の解析では、主な評価項目(投与52週の時点で寛解を維持できているか)で、タブネオスの群が比較の群より優れていることが示されていなかった
- その後、最初の解析の結果とどちらの群かを知っている担当者が、判定をやり直す候補として9例を選んだ
- 外部の専門家による判定委員会が判定をやり直し、その結果を反映した解析が、承認申請の資料に最終の結果として載った
- 判定委員会や承認申請の資料には、こうした経緯が適切に説明・記載されていなかった
PMDAは、この試験の成績は承認申請の資料の信頼性の基準に合わず、有効性を裏付ける資料として扱うのは不適当と判断しました。販売後に得られた情報などからも、有効性が確かめられたと判断するのは難しいとしています。これを受けて厚生労働省は、いまの時点で治療上の利益がリスクを上回ると判断するのは困難としました。
海外では、欧州で2026年8月に承認が取り消され、米国でも4月に承認の取り消しが勧告されています。国内では、厚生労働省が6月に製造販売元へ報告命令を出し、PMDAが回答を確認したうえで、10月19日に報告書を提出していました。
肝機能障害への注意(ブルーレターの内容)
5月の安全性速報では、胆管消失症候群を含む重い肝機能障害が起こることがあり、死亡に至った例も報告されているとして、医療関係者に次の点への注意が求められています。
- 投与の開始前と投与中は、定期的に肝機能検査を行い、患者さんの状態をよく観察する
- 多くの場合、肝機能障害は投与開始後3か月以内に起きているため、開始後3か月間は少なくとも2週間に1回、その後の3か月間は少なくとも4週間に1回、肝機能検査を行う
- ALTまたはASTが基準値の上限の3倍を超えて上がった場合は、投与を中断し、すぐに患者さんの状態を評価する
- 異常があれば、ただちに医師・薬剤師に相談するよう患者さんに伝える
薬局・病院の薬剤師が確かめておきたいこと
服用中の患者さんの把握
- 処方の記録から、タブネオスを使っている患者さんを洗い出す
- 次の受診日と、手元に残っている量を確かめる
- 肝機能検査をいつ受けたかを、お薬手帳や患者さんへの聞き取りで確かめる
処方医との連携
- 投与中の患者さんについて、中止・切り替えの方針と時期を確かめる
- 続ける場合は、肝機能検査が決められた間隔で行われているかを確かめる
- 新しい患者さんへの処方があった場合は、投与開始の差し控えが求められていることをふまえて、処方医に確かめる
患者さんへの説明の例
ニュースを見て不安になり、自分で薬をやめてしまう患者さんもいるかもしれません。たとえば次のように伝えられます。
「タブネオスについて、国から、新しく飲み始める方には使わないように、いま飲んでいる方は別の治療への切り替えを検討するように、という連絡が出ています。ただ、ご自分の判断でやめると病気が悪くなるおそれがあります。次の受診のときに、主治医の先生と今後の治療を相談してください。だるさや、皮膚や白目が黄色くなるなど、いつもと違う体調の変化があったら、すぐに相談してください。」
今後の見通し
国内での承認の取り消しについて、厚生労働省は、現時点で結論は決まっておらず、法令の要件や事実関係を確かめたうえで、年内を目標に承認の取り消しを含む行政上の対応の手続きを進める考えを示しています。最新の情報は、厚生労働省・PMDA・キッセイ薬品のお知らせで確かめてください。
安全性の情報が届く職場か、確かめておきたいこと
今回のような安全性の情報は、急に出て、すぐに現場の対応が必要になります。情報が本部や医薬品情報の担当から速やかに共有されるかどうかは、職場によって違います。転職や異動を考えるときは、次の点も確かめておくと安心です。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 安全性情報の共有 | 「ブルーレターなどの安全性情報は、どのように店舗や病棟に共有されますか」 |
| 対象患者の洗い出し | 「対象の薬を使っている患者さんを、どのように確認していますか」 |
| 医薬品情報の担当 | 「医薬品情報の担当の方や部署はありますか」 |
職場の体制は、見学で確かめるのがいちばんです。見学の申し込み方は薬局見学の申し込み方で紹介しています。ほかの薬の動きはモビコールの限定出荷と薬局で確かめること、ロキソニンSの指定第2類への変更、業界の動き全体は薬剤師業界ニュース解説まとめにまとめています。
よくある質問
Q. タブネオスを飲んでいます。すぐにやめたほうがいいですか?
自己判断でやめないでください。厚生労働省は、投与中の患者さんについて、病状や治療の効果、ほかの治療の選択肢、治療を変えることの影響をふまえて、中止または別の治療への切り替えを検討するよう医療機関に求めています。どうするかは主治医と相談して決めます。
Q. これから新しくタブネオスを処方されることはありますか?
厚生労働省は、新しい患者さんへの投与の開始を差し控えるよう求めています。
Q. タブネオスの承認は取り消されたのですか?
2026年10月25日時点では、国内の承認取り消しは決まっていません。厚生労働省は、年内を目標に、承認の取り消しを含む行政上の対応の手続きを進める考えを示しています。
まとめ
- 厚生労働省は、タブネオスの新しい患者さんへの投与の開始を差し控えるよう求めた
- 投与中の患者さんは、中止または別の治療への切り替えを原則として検討。続ける場合はブルーレターに沿って肝機能検査を続ける
- 承認の根拠となった試験の成績が信頼性の基準に合わないと判断された。国内の承認取り消しは年内を目標に検討
- 患者さんには、自己判断でやめず主治医と相談するよう伝える
安全性情報の共有の仕組みまで、担当者に確かめてもらいながら職場を探したい場合は、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較も参考にしてください。


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