転職で年収を上げたい。でも、面接で希望年収を聞かれたときに何と答えればいいのか、内定のあとに「もう少し上げてほしい」と言ってもいいのか。年収交渉は、多くの薬剤師にとって切り出しにくいものです。
この記事では、年収交渉の前に知っておきたい相場の目安、交渉できるタイミング、根拠の示し方と伝え方の例、年収の中身の確かめ方、転職エージェントに交渉を任せるときのポイントまでをまとめます。
この記事の要点
💊 薬剤師転職をお考えなら
- 交渉の前に、統計の平均と、同じ地域・同じ職場の種類の求人で相場を知る
- 交渉しやすいのは、応募の段階で希望を伝えるときと、内定のあと承諾の前。承諾したあとの交渉は難しい
- 根拠は「今の年収」「できる業務」「勤務の柔軟さ」。数字と具体例で伝える
- 年収の総額だけでなく、基本給・賞与・手当・固定残業代の内訳と、試用期間中の給与を確かめる
- 転職エージェントは原則として求職者から手数料を取れない(職業安定法)。交渉を任せる選択肢もある
交渉の前に、相場を知る
年収交渉で一番大切なのは、自分の希望が相場と比べてどうかを知っておくことです。目安の一つとして、厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、役職者を除く一般労働者の薬剤師(全国)の平均は次のとおりです(e-Stat 賃金構造基本統計調査、都道府県別参考表4)。
| 項目 | 薬剤師(役職者を除く・男女計) |
|---|---|
| 平均年齢 | 38.2歳 |
| きまって支給する現金給与額(月) | 37万6,700円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 78万9,400円 |
| 年収の目安(月額×12+賞与) | 約531万円 |
ただし、これは全国の平均です。実際には、地域、職場の種類(調剤薬局・ドラッグストア・病院・企業)、管理薬剤師かどうか、残業の有無などで差があります。統計に加えて、同じ地域・同じ職場の種類の求人を複数比べて、自分の希望の位置を確かめましょう。
パートの場合の時給の目安は、薬剤師パートの時給相場で紹介しています。
年収が上がりやすい条件
交渉の前に、そもそも年収が上がりやすい転職かどうかを考えておくと、希望の金額を決めやすくなります。
| 条件 | 年収に影響しやすい理由 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 役割が増える | 管理薬剤師や薬局長など、責任のある役割には手当がつくことが多い | 業務の量や、店舗を空けにくくなる負担も増える |
| 人手が必要とされている地域 | 薬剤師の確保が難しい地域では、条件を上乗せして募集することがある | 通勤や転居、地域の生活の条件もあわせて考える |
| 人手が必要な曜日・時間帯 | 夜間や土日の勤務に手当がつくことがある | 家庭の予定や体調と両立できるか |
| 職場の種類を変える | 調剤薬局・ドラッグストア・病院・企業で、給与の仕組みが違う | 仕事内容や働き方も大きく変わる。年収だけで選ばない |
どれも「必ず上がる」ものではありません。応募先ごとの条件を、同じ見方で比べることが大切です。
交渉できるタイミング
| タイミング | できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 応募の前・応募のとき | 希望年収と、譲れない条件を伝える | 高すぎる希望は応募の段階で見送られることがある。幅を持たせる |
| 面接 | 希望年収を聞かれたら、根拠とあわせて答える | 最初から金額の話ばかりにならないよう、仕事への関心も伝える |
| 内定のあと・承諾の前 | 提示された条件を確かめ、相談したい点を伝える | 一番交渉しやすい時期。返事の期限を確かめてから相談する |
| 承諾のあと | 原則として条件の変更は難しい | 入社後の昇給の時期と基準を確かめておく |
内定の承諾の返事の仕方と、期限の相談の仕方は内定承諾の返事で紹介しています。
交渉の根拠になるもの
年収交渉は「希望」ではなく「根拠」で話すと通りやすくなります。根拠になるのは、主に次の3つです。
| 根拠 | 具体的には | 準備すること |
|---|---|---|
| 今の年収 | 基本給・賞与・手当の内訳 | 源泉徴収票や給与明細で、正確な金額を確かめる |
| できる業務 | 在宅訪問、管理薬剤師の経験、一包化や無菌調剤、教育の担当、認定の資格など | 経験年数と、どのくらいの規模で担当したかを数字で書き出す |
| 勤務の柔軟さ | 土日の勤務、遅番、応援への対応、転勤の可否など | 会社にとって助かる条件を、無理のない範囲で示す |
ほかの会社からの提示条件も根拠になりますが、伝えるときは正確な内容だけを伝えましょう。条件を大きく言うと、あとで信頼を失うことがあります。
職場の種類ごとの、交渉で見るポイント
年収の決まり方は、職場の種類によって違います。交渉のときに何を話すとよいかも変わります。
| 職場の種類 | 年収の決まり方の傾向 | 交渉で話したいこと |
|---|---|---|
| 調剤薬局 | 基本給に、管理薬剤師手当や地域手当などが加わることが多い | 管理薬剤師の経験、在宅や施設への対応、応援や一人薬剤師の店舗への対応 |
| ドラッグストア | 基本給に加え、調剤の担当や役職、勤務時間帯で手当が付くことがある | 調剤とOTCの両方の経験、店舗の運営への関わり、シフトの柔軟さ |
| 病院 | 給与表(等級と号俸)で決まり、経験年数で格付けされることが多い | 前職の経験年数がどう格付けに反映されるか(前歴の換算) |
| 企業 | 職種と等級で決まり、成果や評価で賞与が変わることがある | 担当できる業務の経験、語学、資料作成などの具体的なスキル |
病院のように給与表で決まる職場では、金額そのものの交渉より、「前の職場の経験を何年分として数えてもらえるか」を確かめることが大切です。管理薬剤師の求人では、手当の額と、管理薬剤師を外れたときの扱いもあわせて確かめておきましょう。
伝え方の例
面接で希望年収を聞かれたとき
「現在の年収は〇〇万円です。〇〇の業務を〇年担当してきた経験を活かしたいと考えており、〇〇万円から〇〇万円の範囲を希望しています。勤務の条件によっては相談させてください。」
希望は一つの金額ではなく、幅で伝えると話が進みやすくなります。
内定のあと、条件を相談したいとき(メールの例)
「このたびは内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。ご提示いただいた条件を拝見し、前向きに検討しております。一点ご相談させてください。現在の年収が〇〇万円であることと、〇〇の業務を担当できることを踏まえ、年収について〇〇万円程度でご検討いただくことは可能でしょうか。お返事の期限までに、改めてご連絡いたします。」
面接での質問の仕方は面接で使える逆質問で紹介しています。
年収の「中身」を確かめる
同じ年収でも、中身によって働きやすさや、毎月の手取りは変わります。交渉のときも、総額だけでなく内訳を確かめましょう。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 基本給 | 賞与や退職金の計算のもとになることが多い |
| 賞与の回数と月数 | 年収に占める賞与の割合が大きいと、毎月の手取りは思ったより少ないことがある |
| 手当の内容と条件 | 管理薬剤師手当や住宅手当は、条件によって支給されないことがある |
| 固定残業代 | 何時間分が含まれているか。超えた分が支払われるか |
| 試用期間中の給与 | 試用期間中は給与が低く設定されていることがある |
| 昇給の時期と基準 | 入社後に年収がどう上がっていくかの見通しになる |
会社は、労働契約を結ぶときに賃金などの労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条)。内定のあとは、労働条件通知書で交渉した内容が反映されているかを確かめましょう。確かめ方は労働条件通知書のチェックポイント、求人票と違う点があったときの対応は内定条件が求人票と違うときで紹介しています。
転職エージェントに交渉を任せる
自分で年収の話をするのが苦手な人は、転職エージェントの担当者に交渉を任せる方法があります。
- 担当者が、求人を出している会社の給与の決め方や、過去の採用の条件を知っていることがある
- 自分では聞きにくい、賞与の実績や昇給の基準を確かめてもらえる
- 複数の求人の条件を、同じ項目で比べやすくなる
有料職業紹介事業者は、原則として求職者から手数料を受け取ってはならないとされています(職業安定法第32条の3)。薬剤師の転職エージェントの多くは、求人を出している会社から報酬を受け取る仕組みです。
任せるときは、「最低限ほしい年収」と「できれば達成したい年収」、そして「年収より優先したい条件」を、担当者にはっきり伝えておきましょう。
やってはいけないこと
- 今の年収を実際より多く伝える(源泉徴収票の提出を求められることがある)
- 内定を承諾したあとに、条件の変更を求める
- ほかの会社の提示条件を、実際より良く伝える
- 年収の話だけをして、仕事への意欲を伝えない
交渉がうまくいかなかったときは
希望の年収に届かなかった場合も、すぐにあきらめる必要はありません。
- 入社後の昇給の時期と基準を確かめ、書面に残してもらう
- 一定の業務を担当したら見直す、などの条件を相談する
- 年収以外の条件(勤務時間、休日、通勤など)で、働きやすさを上げられないか考える
- ほかの求人と比べて、改めて判断する
今の職場で給料が上がりにくい理由と見分け方は薬剤師の給料が上がらない理由と対策、住宅ローンの返済に備えて収入を見直したい人は住宅ローンの返済が苦しい薬剤師へも参考にしてください。
よくある質問
Q. 年収交渉をすると、内定が取り消されることはありますか?
根拠を示して丁寧に相談すれば、それだけで内定が取り消されることは通常考えにくいです。ただし、強い言い方や、承諾後の条件変更の要求は、信頼を損ねることがあります。
Q. 希望年収は、いくらと答えればいいですか?
今の年収と、同じ地域・同じ職場の種類の求人の相場を踏まえて、幅で伝えるのが基本です。最低限ほしい金額を下回らない範囲で設定しましょう。
Q. 年収交渉は、エージェントに任せた方がいいですか?
自分で話すのが苦手な人や、相場が分からない人は任せる方法があります。任せる場合も、自分の希望と優先順位は担当者にはっきり伝えましょう。
Q. パートでも時給の交渉はできますか?
できます。経験やできる業務、勤務できる曜日や時間の柔軟さを根拠に相談しましょう。
まとめ
- 交渉の前に、統計の平均と同じ条件の求人で相場を知る
- 交渉しやすいのは、応募の段階と、内定のあと承諾の前
- 根拠は「今の年収」「できる業務」「勤務の柔軟さ」。正確な数字で伝える
- 総額だけでなく、内訳・試用期間中の給与・昇給の基準まで確かめ、書面で確認する
- 話しにくい場合は、転職エージェントに交渉を任せる方法もある
年収の交渉や条件の確認を任せられる相談先を選びたい場合は、薬剤師の転職エージェントの選び方と比較と、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較を参考にしてください。



コメント