てんかんの治療薬を飲んでいる人の自動車の運転について、電子添文の書き方が変わりました。これまでは「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と一律に書かれていましたが、2026年3月17日の改訂で、てんかんの効能に限り、医師が患者さんごとに運転の適否を判断できるようになりました。
対象は、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムの5成分です。日本てんかん学会の要望を受けたもので、学会は医師と患者さんが守る留意事項もまとめています。この記事では、改訂の中身と、薬局の服薬指導で確かめておきたいことをまとめます。
※2026年11月5日時点で、厚生労働省の事務連絡(PMDA掲載)と、その別紙・日本てんかん学会の留意事項をもとにしています。運転してよいかどうかは医師の判断です。最新の情報は各製品の電子添文で確かめてください。
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この記事の要点
- 抗てんかん剤5成分の経口剤で、てんかんの効能に限り、自動車の運転などの適否を医師が判断することになった(2026年3月17日の改訂)
- 医師は日本てんかん学会の留意事項を十分理解したうえで慎重に判断し、運転する場合は十分な注意が必要なことを指導する
- 眠気などがあらわれた場合は運転しないよう指導することは、これまでどおり
- 躁病、双極性障害、片頭痛の予防、三叉神経痛などの効能では、従来の「従事させないよう注意すること」のまま
改訂の中身
5成分の「8. 重要な基本的注意」は、てんかんの効能について次のように変わりました。
| 内容 | |
|---|---|
| 改訂前 | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること |
| 改訂後(てんかんの効能) | 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある。自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること |
ラコサミドは、もともと「浮動性めまい、霧視」も書かれており、改訂後もそのまま残っています。
効能によって書き方が分かれた
| 成分(主な製品) | 新しい書き方になった効能 | 従来の書き方のままの効能 |
|---|---|---|
| カルバマゼピン(テグレトールなど) | 精神運動発作、てんかん性格・てんかんに伴う精神障害、てんかんの痙攣発作 | 躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛 |
| バルプロ酸ナトリウム(デパケンなど) | 各種てんかん、てんかんに伴う性格行動障害 | 躁病・躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症抑制 |
| ラモトリギン(ラミクタールなど) | 各種てんかん | 双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制 |
| ラコサミド(経口剤) | てんかん | ― |
| レベチラセタム(経口剤) | てんかん | ― |
同じ薬でも、何の病気で使っているかによって、運転についての説明が変わる点に注意が必要です。
出典:厚生労働省 事務連絡「抗てんかん剤に係る自動車運転等についての注意喚起に関する情報提供」(2026年3月17日)と別紙2〜6
なぜ変わったのか
事務連絡によると、日本てんかん学会から「抗てんかん剤の添付文書における自動車の運転等に関する注意喚起の改訂についての要望書」が出され、薬事審議会の安全対策調査会(2026年1月28日)で検討した結果、改訂することになりました。厚生労働省は、医療機関と薬局への周知を都道府県などに依頼しています。
日本てんかん学会の留意事項
電子添文が参照先としている「関連学会の留意事項」は、日本てんかん学会が2026年3月17日にまとめたものです。主な内容は次のとおりです。
医師が注意すること
- てんかんが適切に診断され、標準治療が行われていることを確かめる
- 発作が運転などに支障がないように抑えられているかを確かめる。発作抑制の基準は道路交通法とその下位法規で定めたもの
- ストレス、睡眠不足、発熱、疲労など、その人の発作の誘因があるときは運転しないよう指導する
- 用法・用量を守り、服薬が守れているか確かめる
- めまい、眠気、運動失調などの副作用があるときは運転しないよう指導する。併用薬の相互作用にも注意する
- すでに運転している人で、他剤への切り替えや用量変更をした場合は観察期間を設け、その間は運転しないよう指導する(発作の再発は処方変更から6か月、副作用は1か月が目安)
- すでに運転している人には、少なくとも3か月に1回の外来診察で問題がないか確かめる
薬を飲む人が注意すること
- 運転を希望するときは、医師に十分な発作抑制効果と副作用がないことを確かめてもらい、許可を得る
- 発作の誘因を避けられないときは運転しない
- 処方どおりに服薬し、医師や薬剤師の指導を守る
- めまい、眠気、運動失調などの自覚症状があるときは運転しない。運転中にそうなったら、すぐに運転を中断する
- ほかの病気で処方を受けるときや市販薬を買うときは、抗てんかん薬への影響を医師や薬剤師に確かめる
出典:日本てんかん学会「抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項」(2026年3月17日、事務連絡の別添2)
薬局で確かめておきたいこと
- 服薬指導の定型文:「運転しないでください」と一律に伝える定型文が、てんかんの患者さんにもそのまま使われていないか見直す。運転については医師の指示を確かめるよう伝える
- 何の病気で使っているか:バルプロ酸ナトリウムやラモトリギンは、てんかん以外の効能では従来どおりの注意。処方の目的を確かめてから説明する
- 処方変更のとき:切り替えや増量があった患者さんには、観察期間中は運転を控えるよう医師から説明があったか確かめる
- 併用薬と市販薬:眠気を起こしやすい薬(抗ヒスタミン薬を含むかぜ薬など)との併用に注意し、市販薬を買うときは相談するよう伝える
- 飲み忘れ:服薬を守ることが前提になっている。飲み忘れが多い場合は処方医に情報を伝える
同じ時期の安全性の改訂は、炭酸リチウムの「妊婦禁忌」削除の記事や、コルヒチン錠の用量変更の記事でも紹介しています。
服薬指導の質は職場の体制で変わる
今回のように「一律に禁止」から「医師が個別に判断」に変わると、薬局では処方の目的や医師の指示を確かめたうえで説明する必要があり、時間がかかります。1人あたりにかけられる時間や、改訂を定型文に反映する仕組みは職場によって違います。転職を考えるときは、次の点も聞いてみましょう。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 改訂の情報共有 | 「添付文書の改訂は、どのように店舗に共有されますか」 |
| 定型文の管理 | 「薬歴や服薬指導の定型文は、誰が見直していますか」 |
| 処方の傾向 | 「神経内科や精神科の処方箋はどのくらい来ますか」 |
よくある質問
Q. 抗てんかん薬を飲んでいても、運転してよくなったのですか?
一律に運転してよくなったわけではありません。改訂後は、てんかんの効能で使う場合に限り、医師が日本てんかん学会の留意事項を十分理解したうえで、患者さんごとに運転などの適否を慎重に判断することになりました。眠気などがあらわれた場合は運転しないよう指導することも、引き続き求められています。
Q. どの薬が対象ですか?
カルバマゼピン(テグレトールなど)、バルプロ酸ナトリウム(デパケンなど)、ラモトリギン(ラミクタールなど)、ラコサミド(ビムパットなど)の経口剤、レベチラセタム(イーケプラなど)の経口剤の5成分です。
Q. 躁病や片頭痛の予防で飲んでいる場合も同じですか?
いいえ。カルバマゼピンの躁病・三叉神経痛など、バルプロ酸ナトリウムの躁病・片頭痛発作の発症抑制、ラモトリギンの双極性障害などの効能では、これまでどおり「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」とされています。
Q. 薬を変えたばかりのときは、運転してもいいですか?
日本てんかん学会の留意事項では、すでに運転している人が他剤への切り替えや用量変更をした場合、十分な観察期間を設け、その間は運転しないよう指導するとしています。目安は、発作の再発がないことの確認が処方変更から6か月、運転に影響する副作用の確認が1か月です。
まとめ
- 抗てんかん剤5成分の経口剤で、てんかんの効能に限り、運転などの適否を医師が判断することになった(2026年3月17日)
- 医師は日本てんかん学会の留意事項をふまえて判断する。眠気などがあれば運転しないよう指導するのは同じ
- 躁病、双極性障害、片頭痛の予防、三叉神経痛などの効能では、従来の書き方のまま
- 学会の留意事項では、処方変更後の観察期間(発作は6か月、副作用は1か月が目安)や、少なくとも3か月に1回の診察が示されている
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