2027年度(令和9年度)は診療報酬の改定がない年ですが、薬価だけを見直す「中間年改定」が行われる予定です。中医協の薬価専門部会は、2026年10月7日に新薬、10月28日に安定供給をテーマに議論を進めました。
この記事では、厚生労働省の会議資料をもとに、決まっていること・決まっていないこと、過去3回の中間年改定で何が起きたか、薬局で働く薬剤師に関わる点を整理します。
※2026年11月3日時点の中医協資料の内容をもとにしています。改定の対象範囲や引き下げ幅は、まだ示されていません。
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この記事の要点
- 2027年度の薬価改定は、骨太方針2026(2026年7月21日閣議決定)で「実施する」とされている
- 10月7日(新薬)・10月28日(安定供給)の薬価専門部会の論点は、どちらも「対象品目の範囲と適用ルールをどう考えるか」。範囲や引き下げ幅は未定
- 過去3回の中間年改定の対象品目は、全品目の69%(2021年度)、69%(2023年度)、53%(2025年度)
- 2026年8月の調査で、限定出荷・供給停止の医薬品は全体の12%(1,855品目)。後発品が多い
- 薬価より高い仕切価が設定された包装単位の割合は、5.8%→6.4%→6.9%(各年3月)と上昇
決まっていること・決まっていないこと
| 項目 | 状況 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2027年度に薬価改定を行うこと | 実施する方針 | 大臣折衝事項(2025年12月24日)、薬価制度改革の骨子(同26日 中医協了解)、骨太方針2026(2026年7月21日) |
| 改定の対象となる品目の範囲 | 未定(議論中) | 10月7日・10月28日の薬価専門部会の論点 |
| どのルールを適用するか(不採算品再算定、最低薬価の引き上げなど) | 未定(議論中) | 同上 |
| 改定後の薬価・引き下げ幅 | 未定 | 薬価調査の結果をもとに決まる |
大臣折衝事項と骨子は、対象範囲とルールを「創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、現役世代の保険料負担を含む国民負担の軽減といった要請についてバランス良く対応する」という考え方で検討するとしています。10月7日の資料は、このうち創薬イノベーションの推進や国民負担の軽減を、10月28日の資料は安定供給の確保や物価上昇への対応を、どう考えるかを論点にしました。
出典:中医協 薬-1「令和9年度薬価改定について②(新薬)」(2026年10月7日) p.2、p.35/中医協 薬-1「令和9年度薬価改定について③(安定供給)」(2026年10月28日) p.2、p.40、p.42〜43
過去3回の中間年改定では、何が対象になったか
中間年改定は2021年度に始まり、2023年度、2025年度と続いてきました。対象は、薬価と実際の取引価格の差(乖離率)が大きい品目です。基準の決め方は回ごとに変わっています。
| 改定 | 対象の決め方 | 対象品目数(全体に占める割合) | 影響額 |
|---|---|---|---|
| 2021年度 | 平均乖離率8.0%の0.625倍(乖離率5.0%)を超える品目 | 約12,180品目(69%) | ▲4,300億円 |
| 2023年度 | 平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目 | 約13,400品目(69%) | ▲3,100億円 |
| 2025年度 | 平均乖離率5.2%を基準に、品目の種類ごとに倍率を変えた(新薬創出等加算の対象品・後発品・その他は1.0倍、それ以外の新薬は0.75倍、長期収載品は0.5倍) | 約9,320品目(53%) | ▲2,466億円 |
2025年度は、長期収載品(後発品のある先発品)の基準が最も厳しく、対象は長期収載品の88%、後発品の66%でした。一方で、医薬品の安定供給のために、不採算品再算定を臨時的に行い、最低薬価を概ね3%引き上げています。
出典:10月28日資料 p.3、p.14、p.45〜47。影響額は各年度の予算ベースの概数
10月28日の資料:安定供給と「逆ザヤ」の現状
限定出荷・供給停止は全体の12%
2026年8月の調査で、限定出荷・供給停止の医薬品は合計12%(1,855品目)でした。内訳は限定出荷966品目、供給停止889品目で、どちらも後発品が6割前後を占めます(限定出荷613品目、供給停止518品目)。限定出荷の理由は「自社の事情」が50%、「他社品の影響」が43%です。
10月14日時点の出荷状況(薬価削除予定の品目を除く)では、通常出荷が91.4%。後発品は、基礎的医薬品の対象外のもので通常出荷が88.7%でした。
薬価より高い仕切価が増えている
メーカーが卸に示す価格(仕切価)が薬価以上に設定された包装単位の割合は、2024年3月の5.8%、2025年3月の6.4%、2026年3月の6.9%と上がっています。設定の理由は、原材料費の高騰が約7割、人件費や配送費などの販売管理費の高騰が5割弱でした(複数回答)。
薬価が仕入れ値を下回ると、その薬を使うほど薬局や医療機関の持ち出しになります(いわゆる逆ザヤ)。薬価を下支えする仕組み(基礎的医薬品、不採算品再算定、最低薬価)を2027年度にどう使うかが、論点の一つです。
最低薬価は2年続けて引き上げ
| 区分(例) | 2025年度改定前 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|---|
| 日本薬局方収載品の錠剤(1錠) | 10.10円 | 10.40円 | 10.80円 |
| その他の医薬品の錠剤(1錠) | 5.90円 | 6.10円 | 6.30円 |
| 日本薬局方収載品の散剤(1g) | 7.50円 | 7.70円 | 8.00円 |
資料によると、2000年に薬価算定基準が明文化されて以降、消費税率の引き上げへの対応を除いて、最低薬価を引き上げたことはありませんでした。2026年度には、塗布剤の最低薬価も新しく設けられています。
出典:10月28日資料 p.14〜15、p.21、p.23、p.29〜32
乖離率はどの分類で大きいか
前回(2025年度)の薬価調査の速報値では、分野別の乖離率は次のとおりでした。中間年改定の対象は乖離率で決まるため、2027年度も、どの分類の基準をどう置くかで対象の範囲が大きく変わります。
| 分類 | 乖離率 |
|---|---|
| 先発医薬品(後発品なし) | 3.6% |
| 先発医薬品(後発品あり) | 9.6% |
| 後発医薬品 | 8.7% |
| その他の品目 | 1.9% |
出典:10月28日資料 p.26(中医協 総-1-1、2025年12月3日)
薬局で働く薬剤師に関わること
中間年改定は、患者さんの負担や薬局の売上、在庫の価値に関わります。改定のたびに、改定前の在庫の評価額や、採用している後発品の切り替えの検討が必要になる薬局もあります。限定出荷や供給停止が続けば、代わりの薬の確保や処方医への問い合わせも増えます。最近の販売中止の例は、クラリス錠200の販売中止やインスリン7製品の販売中止の記事で紹介しています。
こうした仕事が誰にどれだけかかるかは、職場によって大きく違います。転職や異動を考えている人は、見学や面接で次のような点を確かめておくと、入ってからのずれが小さくなります。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 在庫と発注の担当 | 「発注や在庫の管理は、薬剤師と事務のどちらが担当していますか。本部が決める部分はありますか」 |
| 供給不足の品目への対応 | 「限定出荷の薬が入らないとき、代わりの薬の手配や処方医への連絡は誰が行っていますか」 |
| 後発品の採用の決め方 | 「後発品のメーカーは、店舗と本部のどちらで決めていますか。切り替えの頻度はどれくらいですか」 |
| 薬価改定の前後の業務 | 「薬価改定の前後に、棚卸しや在庫の調整で残業が増えることはありますか」 |
勤め先の経営の見方は勤務先の調剤薬局が危ないサイン、見学の申し込み方は薬局見学の申し込み方、業界の動きは薬剤師業界ニュース解説まとめで紹介しています。
よくある質問
Q. 2027年度の薬価改定は、実施されることが決まっていますか?
実施する方針です。2025年12月24日の大臣折衝事項と、2025年12月26日に中医協が了解した「令和8年度薬価制度改革の骨子」に「令和9年度薬価改定を着実に実施する」とあり、2026年7月21日に閣議決定された骨太方針2026にも「2027年度薬価改定を実施する」と書かれています。
Q. どの薬が、どれくらい下がりますか?
まだ決まっていません。10月7日と10月28日の薬価専門部会で示されたのは「対象品目の範囲と適用ルールをどう考えるか」という論点で、範囲や引き下げ幅は示されていません。
Q. いつ決まりますか?
時期は資料に書かれていません。参考までに、これまでの中間年改定の「骨子」は、2020年12月18日、2022年12月21日、2024年12月25日に中医協で了解されています。
Q. 最低薬価は2027年度も上がりますか?
決まっていません。2025年度の改定では概ね3%、2026年度の改定では概ね3.5%引き上げられました。10月28日の資料は、こうした経緯を踏まえて「安定供給確保の必要性や物価上昇等への対応についてどのように考えるか」を論点にしています。
まとめ
- 2027年度の薬価の中間年改定は、骨太方針2026などで「実施する」とされている
- 10月7日(新薬)と10月28日(安定供給)の薬価専門部会で、対象品目の範囲と適用ルールの議論が進んでいる。範囲や引き下げ幅は未定
- 過去3回の対象は全品目の69%・69%・53%。2025年度は品目の種類ごとに基準を変えた
- 限定出荷・供給停止は全体の12%(2026年8月)、薬価以上の仕切価は6.9%(2026年3月)。安定供給と物価への対応が論点
- 決まった内容は、今後の中医協の資料と告示で確かめる
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会議資料の一覧:厚生労働省「中央社会保険医療協議会(薬価専門部会)」
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