「調剤だけでなく、病棟で患者さんに関わりたい」「専門性を磨けるところで働きたい」。そう考えて、病院への転職を検討する薬剤師は少なくありません。一方で、「病院は給料が低い」「当直がきつい」という話を聞いて、迷っている人もいるでしょう。
この記事では、中医協の「医療経済実態調査」で見る病院と保険薬局の薬剤師の給与、病院薬剤師の仕事、給与の決まり方、病院に移るメリットと注意点、病院の種類ごとの特徴、応募から内定までに確かめたいことをまとめます。
この記事の要点
💊 薬剤師転職をお考えなら
- 医療経済実態調査(令和6年度)では、一般病院の薬剤師の平均年収(給料と賞与)は約581万円、保険薬局(法人)の薬剤師は約480万円、管理薬剤師は約726万円
- 前年度からの伸びは、一般病院の薬剤師が2.1%、保険薬局の薬剤師が0.3%
- 病院の給与は給与表で決まることが多く、前の職場の経験を何年分と数えてもらえるか(前歴の換算)が大切
- 病棟業務やチーム医療に関われる一方、当直や夜勤、土日の勤務がある病院もある
- 病院の種類(大学病院、公的病院、医療法人など)で、給与の仕組みや働き方が違う
データで見る:病院と保険薬局の薬剤師の年収
中央社会保険医療協議会の「第25回医療経済実態調査」(調査の概要)では、医療機関や保険薬局で働く職種ごとの給与(給料と賞与の合計、年額)が公表されています。薬剤師の結果は次のとおりです。
| 施設 | 令和5年度 | 令和6年度 | 伸び率 | 令和6年度の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 一般病院(全体)の薬剤師 | 約569万円 | 約581万円 | 2.1% | 約580万円 |
| 一般病院(医療法人)の薬剤師 | 約534万円 | 約540万円 | 1.1% | 約548万円 |
| 保険薬局(法人)の薬剤師 | 約479万円 | 約480万円 | 0.3% | 約493万円 |
| 保険薬局(法人)の管理薬剤師 | 約725万円 | 約726万円 | 0.2% | 約668万円 |
この調査では、一般病院の薬剤師の平均は、保険薬局(法人)の管理薬剤師ではない薬剤師より高い結果でした。ただし、保険薬局の管理薬剤師は病院の薬剤師より高く、病院の中でも開設者(国公立、医療法人など)によって差があります。「病院は給料が低い」と一律には言えず、どの病院・どの役割かで変わると考えるのがよいでしょう。
病院薬剤師の主な仕事
| 仕事 | 内容 |
|---|---|
| 調剤 | 入院・外来の処方の調剤、注射薬の調製 |
| 病棟業務 | 入院患者さんへの服薬指導、持参薬の確認、医師への処方提案 |
| 医薬品情報 | 医師や看護師からの問い合わせへの対応、院内の情報の発信 |
| チーム医療 | 感染制御、栄養、緩和ケアなどのチームへの参加 |
| 薬剤の管理 | 院内の医薬品の在庫や品質の管理 |
| 当直・日直 | 夜間や休日の調剤や問い合わせへの対応(病院による) |
どの仕事にどれくらい関われるかは、病院の規模や薬剤部の人数によって違います。
病院の給与の決まり方
- 給与表(等級と号俸)で決まることが多く、経験年数で格付けされる
- 前の職場の経験を何年分として数えるか(前歴の換算)は病院によって違う
- 当直手当、夜勤手当、住宅手当などの手当で、年収が変わる
- 公的な病院では、給与や手当の仕組みが規程で決まっていることが多い
前歴の換算は、年収に大きく関わります。応募の段階で「前職の経験は何年分として格付けされますか」と確かめましょう。年収の交渉の考え方は薬剤師の転職での年収交渉で紹介しています。
病院に転職するメリットと注意点
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 病棟業務やチーム医療で、患者さんの治療に深く関われる | 当直や夜勤、土日の勤務がある病院もある |
| 医師や看護師と直接やり取りし、専門的な知識を深められる | 病院の規模によっては、調剤や注射の業務が中心になることもある |
| 認定薬剤師などの資格を目指しやすい環境がある | 異動や配属で、担当する業務が変わることがある |
| 給与が規程で決まっていて見通しが立てやすい | 前歴の換算によっては、年収が下がることもある |
残業の上限や当直の扱いを確かめるときは薬剤師の残業の上限と36協定も参考にしてください。
病院薬剤師に向いている人・慎重に考えたい人
| 向いている人 | 慎重に考えたい人 |
|---|---|
| 医師や看護師と話し合いながら、治療に関わりたい | 決まった時間に、決まった業務をしたい |
| 注射や病棟業務など、新しい業務を学ぶのが好き | 当直や夜勤、土日の勤務が家庭の事情で難しい |
| 認定薬剤師など、専門性を高める目標がある | 今すぐ年収を大きく上げることを最優先にしたい |
| チームで役割を分けて働くのが得意 | 異動や配属の変更を受け入れにくい |
「慎重に考えたい人」にあてはまっても、病院が合わないとは限りません。当直のない病院、日勤のみの求人、外来中心の病院など、条件を絞れば選択肢が広がることもあります。
応募のタイミング
- 民間の病院は、欠員や増員にあわせて随時募集していることが多い
- 公的な病院は、採用試験の時期が年に数回に決まっていることがある
- 新年度(4月)の入職にあわせた募集は、前年の秋ごろから始まることがある
- 気になる病院がある場合は、募集の時期を早めに調べ、在職中から準備しておく
病院の種類ごとの特徴
同じ病院でも、開設者や規模によって給与の仕組みや働き方は違います。気になる病院の種類があれば、それぞれの記事で詳しく確かめてください。
| 病院の種類 | 特徴の例 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 大学病院 | 高度な医療や研究に関われる。給与の水準は病院による | 大学病院の薬剤師 |
| 国立病院機構 | 全国に病院があり、異動がある | 国立病院機構の薬剤師 |
| 日本赤十字社 | 各地の基幹病院が多い | 日赤病院の薬剤師 |
| 済生会 | 全国に病院・施設がある社会福祉法人 | 済生会病院の薬剤師 |
| 徳洲会 | 救急医療に力を入れるグループ | 徳洲会病院の薬剤師 |
| JA厚生連 | 地方の基幹病院が多い | JA厚生連病院の薬剤師 |
| 労災病院 | 労働者健康安全機構が運営 | 労災病院の薬剤師 |
薬局やドラッグストアから病院に移るとき
- 注射薬の調製や病棟業務は、病院で初めて経験することが多い。研修の内容と独り立ちまでの期間を確かめる
- 前歴の換算で、薬局での経験がどう数えられるかを確かめる
- 当直・夜勤の回数と、明けの休みの扱いを確かめる
- 公的な病院は、採用試験の時期が決まっていることがある。募集の時期を早めに調べる
40代での転職の考え方は40代薬剤師の転職、病院から薬局や企業に移る場合は病院薬剤師を辞めたいときで紹介しています。
面接・見学で確かめたいこと
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 業務の範囲 | 「病棟業務には、入職後どのくらいで関われますか」 |
| 研修 | 「未経験の注射の調製は、どのような研修がありますか」 |
| 当直・夜勤 | 「当直は月に何回くらいありますか。明けの休みはどうなりますか」 |
| 前歴の換算 | 「前職の経験は、何年分として格付けされますか」 |
| 資格の支援 | 「認定薬剤師の取得の支援はありますか」 |
| 薬剤部の人数 | 「薬剤部は何人で、病棟には何人が担当していますか」 |
面接での質問の仕方は面接で使える逆質問、内定後の書面の確かめ方は労働条件通知書のチェックポイントで紹介しています。
よくある質問
Q. 病院薬剤師は給料が低いのですか?
一律には言えません。医療経済実態調査(令和6年度)では、一般病院の薬剤師の平均は約581万円で、保険薬局(法人)の薬剤師の約480万円より高い一方、保険薬局の管理薬剤師は約726万円でした。病院の種類や役割によって違います。
Q. 薬局からの転職でも、病院に採用されますか?
採用されることがあります。注射の調製や病棟業務は入職後に学ぶことも多いため、研修の内容と、前歴の換算を確かめましょう。
Q. 当直は必ずありますか?
病院によります。当直や夜勤の有無と回数、明けの休みの扱いを、応募の前に確かめましょう。
Q. 病院の求人はどう探せばいいですか?
病院のホームページで募集していることもありますが、条件の比較や前歴の換算の確認を担当者に頼みたい場合は、転職エージェントを使う方法もあります。
まとめ
- 令和6年度の平均年収は、一般病院の薬剤師が約581万円、保険薬局(法人)の薬剤師が約480万円、管理薬剤師が約726万円
- 病院の給与は給与表で決まることが多く、前歴の換算が大切
- 病棟業務やチーム医療に関われる一方、当直や土日の勤務がある病院もある
- 病院の種類で給与の仕組みや働き方が違う。応募の前に、業務の範囲・研修・当直・前歴の換算を確かめる
病院の求人を、条件や前歴の換算まで確かめながら比べたい場合は、薬剤師の転職エージェントの選び方と比較と、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較を参考にしてください。



コメント