胃潰瘍や逆流性食道炎で長く使われることの多いプロトンポンプインヒビター(PPI)とボノプラザン(タケキャブ)の電子添文に、「低マグネシウム血症」の注意が加わりました。厚生労働省が2026年7月14日に出した使用上の注意の改訂指示によるもので、長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測ることが求められています。
この記事では、改訂の中身、対象になった製品、PMDA(医薬品医療機器総合機構)がまとめた国内の症例の集積状況、薬局で確かめておきたいことをまとめます。
※2026年11月5日時点で、PMDAに掲載された改訂指示の資料と調査報告書をもとにしています。処方を変えるかどうかは処方医の判断です。最新の情報は各製品の電子添文で確かめてください。
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この記事の要点
- PPI(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、エソメプラゾール)とボノプラザンの電子添文に、低マグネシウム血症が加わった
- 長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測ることが「重要な基本的注意」に入った
- QT延長、痙攣、しびれなどを伴うことがあり、低カルシウム血症や低カリウム血症を伴う場合もある
- タケルダ、キャブピリンなどの配合剤、ボノサップ・ボノピオンのパック製剤、要指導医薬品のPPIも改訂の対象
改訂の中身
経口剤(オメプラール、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャブなど。後発品を含む)には、次の2か所が新しく加わりました。
| 電子添文の項目 | 加わった内容 |
|---|---|
| 8. 重要な基本的注意 | 本剤の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること |
| 11.1 重大な副作用 | 低マグネシウム血症:長期投与により、QT延長、痙攣、しびれなどを伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症などの電解質異常を伴う場合がある。これらが疑われる症状があらわれた場合は血中マグネシウム濃度を測り、異常があればマグネシウムの補充などの適切な処置を行う |
アスピリン・ボノプラザン配合剤(キャブピリン配合錠)にも、「ボノプラザンの長期投与により」として同じ内容が加わりました。注射剤(オメプラゾールナトリウム、ランソプラゾール)も改訂の対象です。
出典:経口剤の改訂内容(別紙1)、注射剤の改訂内容、アスピリン・ボノプラザンの改訂内容(別紙4)
対象になった主な製品
| 成分 | 主な製品(先発品) |
|---|---|
| オメプラゾール | オメプラール錠、オメプラゾン錠 |
| オメプラゾールナトリウム(注射剤) | オメプラゾール注射用・注用(後発品) |
| ラベプラゾールナトリウム | パリエット錠 |
| ランソプラゾール | タケプロンOD錠・カプセル・静注用 |
| エソメプラゾールマグネシウム水和物 | ネキシウムカプセル・懸濁用顆粒分包 |
| ボノプラザンフマル酸塩 | タケキャブ錠・OD錠 |
| 配合剤・パック製剤 | タケルダ配合錠、キャブピリン配合錠、ボノサップパック、ボノピオンパック |
出典:PMDA「プロトンポンプインヒビター含有製剤(医療用)の「使用上の注意」の改訂について」(2026年7月14日)の別紙。後発品も対象です。
改訂の理由と国内の症例
PMDAは、低マグネシウム血症に関連する症例を評価し、専門委員の意見も聞いたうえで、PPI含有製剤と低マグネシウム血症との因果関係が否定できない症例が集まったことから、改訂が適切と判断したとしています。
集計の対象は、PMDAの副作用報告のデータベースに登録された症例のうち、重症度がグレード3以上で、PPIを中止した後に血中マグネシウム値を複数回測っている症例です。
| 成分 | 国内の症例 | うち因果関係が否定できない症例 |
|---|---|---|
| オメプラゾール | 1例 | 0例 |
| オメプラゾールナトリウム | 0例 | 0例 |
| ラベプラゾールナトリウム | 3例 | 2例 |
| ランソプラゾール | 6例 | 5例 |
| エソメプラゾールマグネシウム水和物 | 12例 | 5例 |
| ボノプラザンフマル酸塩 | 17例 | 8例 |
いずれも死亡例はありませんでした。配合剤とパック製剤は、単剤で因果関係の否定できない症例が複数確認できたため、集積状況は確認していないとされています。症例の数は報告を集めたもので、起こる頻度や成分どうしの差を示すものではありません。
市販の胃薬(要指導医薬品)も改訂
同じ日の改訂指示には、要指導医薬品のオメプラゾール含有製剤、ラベプラゾールナトリウム含有製剤、ランソプラゾール含有製剤も含まれています。オメプラゾール含有製剤では、「まれに下記の重篤な症状が起こることがある」の欄に低マグネシウム血症が加わり、次の症状が挙げられました。
吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える、しびれ、めまい、動悸、気を失う
あわせて、これまで「相談すること」の欄にあった一部の症状(一時的にボーっとする、筋肉がぴくつくなど)が、低マグネシウム血症の症状として整理されました。
出典:オメプラゾール含有製剤(要指導医薬品)の改訂内容(別紙15)、PMDA「使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)2026年度指示分」
薬局で確かめておきたいこと
- 長く続いている処方:PPIやボノプラザンが長く続いている患者さんでは、血中マグネシウム濃度を測っているか、お薬手帳や検査値の共有があれば確かめる。必要に応じて処方医に情報を伝える
- 患者さんへの説明:しびれ、筋肉のぴくつき、動悸、だるさなどがあれば受診するよう伝える。自己判断で中止しないことも添える
- 市販薬の相談:要指導医薬品のPPIを購入する人にも、改訂後の添付文書の症状を伝える
- 薬歴や監査システムの設定:重大な副作用の追加を薬品情報に反映できているか確かめる
同じ時期の安全性の改訂は、ナウゼリン・プリンペランに「重篤な不整脈」追加の記事でも紹介しています。品質の面では、ニトロソアミン検出のお知らせのまとめも参考にしてください。
検査値を確かめられる環境は職場によって違う
「定期的に測定すること」という注意は、検査値を見られるかどうかで、薬局でできることが大きく変わります。病院では検査値を確かめながら処方を見られますが、薬局では処方箋への検査値の印字や、トレーシングレポートの運用があるかどうかで差が出ます。転職を考えるときは、次の点も聞いてみましょう。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 検査値の確認 | 「処方箋に検査値が印字される医療機関は多いですか」 |
| 処方医への情報提供 | 「トレーシングレポートはどのくらい使っていますか」 |
| 改訂の情報共有 | 「添付文書の改訂は、どのように店舗に共有されますか」 |
よくある質問
Q. タケキャブやネキシウムは、もう長く飲めないのですか?
いいえ。今回の改訂は、電子添文の「重要な基本的注意」と「重大な副作用」に低マグネシウム血症の注意を加えるもので、長期投与をやめるよう求める内容ではありません。長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測ることが求められています。
Q. どんな症状に気をつければいいですか?
医療用の電子添文では、QT延長、痙攣、しびれなどを伴う低マグネシウム血症と書かれています。要指導医薬品のオメプラゾール含有製剤の添付文書では、吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、しびれ、めまい、動悸、気を失うなどの症状が挙げられています。
Q. なぜ低カルシウム血症や低カリウム血症まで書かれているのですか?
改訂では、低マグネシウム血症に起因して、低カルシウム血症や低カリウム血症などの電解質異常を伴うことがあるとされています。これらが疑われる症状があれば血中マグネシウム濃度を測り、異常があればマグネシウムの補充などの処置を行うとされています。
Q. 市販の胃薬も対象ですか?
はい。2026年7月14日の改訂指示には、要指導医薬品のオメプラゾール含有製剤、ラベプラゾールナトリウム含有製剤、ランソプラゾール含有製剤も含まれています。オメプラゾール含有製剤では「まれに起こる重篤な症状」に低マグネシウム血症が加わりました。
まとめ
- PPIとボノプラザンの電子添文に、低マグネシウム血症が加わった(2026年7月14日の改訂指示)
- 長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測ることが求められている
- 国内の症例は、ボノプラザン17例(うち因果関係が否定できない8例)、エソメプラゾール12例(同5例)など。死亡例はなし
- 配合剤・パック製剤・注射剤、要指導医薬品のPPIも改訂の対象
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