今年の「過労死等防止対策白書」が閣議決定され、医療業界では精神障害の労災認定が10年前のおよそ3倍に増えていると報じられました(TBS NEWS DIG、2026年10月9日)。厚生労働省の担当者は、上司とのトラブルやカスタマーハラスメント(カスハラ)の増加が要因の一つだとしています。
患者さんと毎日向き合い、少ない人数でシフトを回す薬局やドラッグストアも、同じ「医療、福祉」の現場です。この記事では、厚生労働省の公表データを確認したうえで、薬剤師の職場に置き換えたときに気をつけたいこと、2026年10月から会社の義務になったカスハラ対策、自分を守るための記録と相談先をまとめます。
この記事の要点
💊 薬剤師転職をお考えなら
- 令和7年度の精神障害の労災の支給決定は1,082件。業種別では「医療、福祉」が最も多い
- 原因となった出来事では、パワーハラスメントが最も多い
- 2026年10月1日から、カスハラ対策が会社の義務になった
- つらいと感じたら、記録を残し、早めに相談する。働き方や職場を見直すことも選択肢
ニュースと、厚生労働省のデータ
報道によると、白書では、昨年度の労災認定が1,082件で7年連続の過去最多となり、医療業界では精神障害の労災認定が10年前のおよそ3倍に増えたとされています(TBS NEWS DIG(Yahoo!ニュース))。
厚生労働省が公表している令和7年度の「過労死等の労災補償状況」でも、精神障害についての数字を確かめることができます。
| 項目 | 令和7年度 |
|---|---|
| 精神障害の労災の請求件数 | 4,958件 |
| 精神障害の労災の支給決定件数 | 1,082件(前年度より26件増) |
| 業種別(大分類)で最も多い業種 | 「医療、福祉」292件 |
| 出来事別で最も多い出来事 | パワーハラスメント 222件 |
出典:厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』を公表します」
労災として認められた件数なので、実際に心身の不調を抱えながら働いている人は、さらに多いと考えられます。
薬剤師の職場に置き換えると
薬局やドラッグストアでは、次のような場面でストレスが重なりやすくなります。
| 場面 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 患者さんからの強い苦情 | 待ち時間や在庫切れへの不満から、大声や長時間の苦情、繰り返しの電話につながる |
| 上司や本部との関係 | 人前での叱責、過大な数値目標、相談しても取り合ってもらえない |
| 一人薬剤師の時間帯 | 調剤・監査・投薬・電話を一人で抱え、ミスへの不安が強くなる |
| 人員不足と長時間労働 | 休憩が取れない、閉局後の薬歴が続く、急な応援が多い |
どれも、本人の頑張りだけでは解決しにくい問題です。つらさを「自分が弱いから」と考えず、仕組みの問題として捉えることが大切です。
2026年10月から、カスハラ対策が会社の義務に
改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、顧客などからの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)から働く人を守るための措置を講じることが、会社の義務になりました(厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」)。
薬局で働く人にとっては、患者さんやその家族からの、社会通念上許容される範囲を超えた言動が問題になる場面があります。会社がどのような方針や相談の仕組みを用意しているかを、確認しておきましょう。
- カスハラにあたる言動があったとき、誰に報告し、誰が対応するのか決まっているか
- 一人で長時間の対応をしないための、交代や応援のルールがあるか
- 相談の窓口があり、相談したことで不利益な扱いを受けないと周知されているか
つらいと感じたら:記録と相談
記録しておくこと
- いつ、どこで、誰から、どんな言動を受けたか
- その場にいた人
- 勤務時間、休憩が取れなかった日
- 体調の変化(眠れない、食欲がない、出勤前に気分が悪くなる など)
相談先
| 相談先 | できること |
|---|---|
| 社内の相談窓口・人事 | パワハラやカスハラの相談。会社には相談の体制を整える義務がある |
| 総合労働相談コーナー(労働局・労働基準監督署内) | 職場のトラブル全般の相談を受け付けている |
| こころの耳(厚生労働省) | 働く人のメンタルヘルスの情報と相談窓口の案内 |
| 医療機関 | 心身の不調があるときは、早めに受診する |
総合労働相談コーナーの所在地は厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」、メンタルヘルスの相談先はこころの耳で確認できます。パワハラの記録の残し方は薬局のパワハラで辞めたい薬剤師へでも解説しています。
働き方や職場を見直すことも選択肢
相談しても状況が変わらない、心身の不調が続くという場合は、働き方や職場を見直すことも考えましょう。転職を考えるときは、次の点を確かめておくと、同じことのくり返しを防ぎやすくなります。
| 確かめること | 聞き方・見方の例 |
|---|---|
| 人員の体制 | 「薬剤師が一人になる時間帯はありますか」 |
| カスハラへの対応 | 「患者さんから強い苦情があったときは、どのように対応していますか」 |
| 相談の仕組み | 「困ったときに相談できる窓口や、本部の担当者はいますか」 |
| 残業と休憩 | 「休憩は交代で取れていますか。閉局後の業務はどのくらいありますか」 |
職場の見分け方は残業が少ない薬剤師の職場の見分け方やブラック薬局の特徴と相談先、職場の雰囲気を確かめる見学の頼み方は薬局見学の申し込み方で紹介しています。
よくある質問
Q. 患者さんからの暴言も、カスハラにあたりますか?
業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えた言動で、働く人の就業環境が害されるものは、カスハラにあたりえます。会社の方針に沿って報告し、一人で抱え込まないようにしましょう。
Q. 仕事が原因で心の不調になった場合、労災になりますか?
業務による強い心理的負荷が認められるなど、一定の基準を満たす場合は労災の対象になることがあります。詳しくは労働基準監督署に相談しましょう。
Q. 休むことに罪悪感があります。
心身の不調は、早めに休んで治療するほど回復しやすいものです。まずは医療機関を受診し、必要に応じて休職の制度も確認しましょう。
まとめ
- 精神障害の労災の支給決定は1,082件。業種別では「医療、福祉」が最多
- 原因の出来事はパワーハラスメントが最多。薬局でもカスハラや一人勤務の重圧に気をつけたい
- 2026年10月1日から、カスハラ対策が会社の義務になった
- つらいときは記録して相談する。状況が変わらなければ、働き方や職場を見直す
人員体制や職場の雰囲気を、担当者に確かめてもらいながら転職先を探したい場合は、ファルマスタッフとレバウェル薬剤師の比較も参考にしてください。



コメント