調剤の現場から企業へ移る際、最も現実的な入口のひとつが学術・DI(医薬品情報)職です。薬剤師としての知識をそのまま活かせて、土日休みで働ける——そんな職種の実態を、仕事内容・年収・未経験から目指す方法まで解説します。
学術・DI職とは何をする仕事か
製薬企業やCROにおいて、自社医薬品の情報を収集・評価し、社内外に提供するのが学術・DI職です。調剤現場で疑義照会に答えていた業務の「企業版」と考えると分かりやすいでしょう。
- 医療従事者や社内MRからの問い合わせ対応(コールセンター的な役割を含む)
- 添付文書・インタビューフォームの作成と改訂
- 副作用情報の収集と評価、安全性情報の管理
- 学会・論文情報の収集と社内展開
- 製品説明資料の作成、MRへの教育
「対人業務」ではありますが、相手は患者ではなく医療従事者。窓口対応のストレスとは質が違います。
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年収と働き方のリアル
| 項目 | 傾向 | 備考 |
|---|---|---|
| 年収 | 500〜800万円程度 | 経験と企業規模による |
| 勤務形態 | 土日祝休み・完全週休2日が基本 | 薬局・DgSとの最大の違い |
| 残業 | 月10〜30時間程度 | 繁忙期は申請対応で増える |
| 勤務地 | 都市部の本社が中心 | リモート併用の企業も増加 |
※求人情報の一般的な傾向です。調剤薬局から移ると初年度は横ばい〜微減のこともありますが、数年で逆転するケースが多く見られます。
調剤経験はどう評価されるのか
学術・DIは「現場を知っている薬剤師」が評価される数少ない企業職です。
- 疑義照会の経験=医療従事者からの問い合わせ対応そのもの
- 添付文書を日常的に読み込んできた経験が直結する
- 副作用報告の経験があれば安全性情報部門でも通用する
- 服薬指導で培った「難しい内容を分かりやすく説明する力」が資料作成で活きる
調剤経験3年以上あれば、応募資格を満たす求人は珍しくありません。
未経験から目指すための現実的なステップ
- 英語力があると有利(外資系・海外情報の読解)。TOEIC600〜700あればアピールになる
- 医薬品情報の勉強(DI業務の基礎、PMDA情報の読み方)を独学でも進めておく
- 職務経歴書では「疑義照会◯件」「勉強会での説明経験」など、情報提供の実績を具体的に書く
- 20代〜30代前半が中心だが、専門性があれば30代後半の採用例もある
最大の壁は「求人が非公開で動くこと」です。学術・DIの求人は公開の求人市場にほとんど出ず、エージェント経由でしか出会えないケースが大半です。
まず求人を見てみるところから
「企業に移りたいけれど、どんな求人があるのか分からない」——ここで止まってしまう薬剤師が非常に多いのが実情です。
学術・DI職を扱うエージェントに登録して、自分の経歴で応募可能な求人があるかを確認するところから始めてみてください。応募するかどうかは、実際の求人を見てから決めれば十分です。
▶ あわせて読みたい:【必見】企業薬剤師という選択肢|病院・薬局に限界を感じたあなたへ
学術・DIの1日の流れ
実際の業務イメージが湧かないという声が多いので、典型的な1日を挙げます。企業や部署によって差はありますが、大枠はこのような流れです。
- 9:00 出社、メールと問い合わせキューの確認
- 9:30 医療機関・MRからの問い合わせ対応(電話・メール)。回答根拠を文献で確認しながら返す
- 11:00 添付文書改訂に向けた資料の読み込み、社内関係部署との調整
- 12:00 昼休憩(1時間確実に取れる)
- 13:00 安全性情報の評価、または社内会議
- 15:00 MR向け製品資料・Q&A集の作成
- 17:30 翌日の準備をして退社
調剤との最大の違いは、処方箋の来局に振り回されず、自分でスケジュールを組み立てられることです。
学術・DIで求められるスキル
必須に近いもの
- 添付文書・インタビューフォームを正確に読み解く力
- 根拠にもとづいて回答を組み立てる姿勢(推測で答えない)
- 文書作成能力(社内外に出す文章の正確さ)
- 医療従事者と対等に会話できる医薬品知識
あると評価されるもの
- 英語(外資系・海外文献の読解。TOEIC600〜700が目安)
- 統計・論文の読解力(EBMの基礎)
- Excel・PowerPointでの資料作成スキル
- 調剤現場での勉強会・新人教育の経験
「調剤経験しかないから無理」と考える方が多いのですが、疑義照会で医師と交渉してきた経験は、そのまま学術の素地になります。
学術・DIのキャリアパス
入社後にどう広がるのかも、転職前に知っておくと判断しやすくなります。
| 年数 | 主な役割 | 次の展開 |
|---|---|---|
| 1〜3年 | 問い合わせ対応、資料作成の実務 | 製品担当を持つようになる |
| 3〜5年 | 製品担当、添付文書改訂の主担当 | 薬事・安全性管理へ異動する道も |
| 5〜10年 | チームリーダー、教育担当 | マネジメント、またはメディカルアフェアーズへ |
学術で得た製品知識と社内人脈は、薬事(RA)・安全性情報(PV)・メディカルアフェアーズなど、他の企業職への横移動の土台になります。「企業薬剤師のハブ職種」と言える位置づけです。
調剤薬局から移った人が感じるギャップ
良い意味でのギャップ
- 生活リズムが安定し、土日祝が確実に休みになる
- 立ち仕事から解放されて身体的な負担が減る
- 「調べて答える」という薬剤師本来の専門性を深く使える
想定外だという声
- 成果が見えにくい(患者さんの「ありがとう」がない)
- 会議・調整・稟議など、調剤にはなかった仕事が増える
- 数字の目標(かかりつけ件数など)はないが、締切のプレッシャーはある
- 調剤の勘が数年で鈍る
やりがいの源泉が「目の前の患者さんの反応」にある人は、慎重に考えた方がよい職種でもあります。
企業規模による学術・DIの違い
同じ学術職でも、企業の規模によって仕事の幅と働き方が変わります。
| 企業タイプ | 業務の特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 大手内資 | 製品ごとに担当が分かれ、専門性を深く掘る | 一つの領域を極めたい人 |
| 外資系 | 英語で本社とやり取り、グローバル資料の展開 | 語学を活かしたい人 |
| 後発品メーカー | 多品目を少人数で担当、幅広く経験できる | 未経験から入りたい人 |
| CRO・受託 | 複数クライアントの案件を担当 | 変化のある環境が好きな人 |
未経験から入るなら、後発品メーカーが最も現実的な入口です。品目数が多く人手が必要なため、調剤経験者の採用に前向きな企業が少なくありません。
学術・DIとMSLの違い
混同されやすいのがMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)です。
- 学術・DI:社内外からの問い合わせに「問い合わせに回答する」内勤中心の仕事
- MSL:医師(KOL)と面談し、科学的な議論を通じて関係を築く外勤中心の仕事
- MSLは博士号や臨床経験が求められることが多く、難易度は高め
- 学術で製品知識を積んでからMSLへ移るキャリアも存在する
まず学術・DIで企業に入り、その後の選択肢としてMSLを視野に入れるのが現実的な順序です。
転職を成功させた人に共通する準備
実際に企業へ移った薬剤師の話を総合すると、準備の型はある程度共通しています。
- 在職中に応募している(離職後だと足元を見られ、条件交渉が難しくなる)
- 志望動機を「調剤が嫌だから」ではなく「情報提供という専門性を深めたい」と表現している
- 応募先企業の主力製品と領域を調べ、面接で具体的に触れている
- 職務経歴書に数字を入れている(処方箋枚数、疑義照会件数、教育した人数)
- 複数社に並行応募し、比較して決めている
逆に失敗しやすいのは、1社ずつ応募して結果を待ち、数ヶ月を消費してしまうパターンです。企業の選考は調剤薬局より時間がかかるため、並行して進めるのが鉄則です。
学術・DIの求人が動く時期
- 4月・10月:組織改編に伴う欠員募集が出やすい
- 新製品の承認前後:情報提供体制の強化で増員がかかる
- 年度末(1〜3月):次年度の体制に向けた採用
- 通年:後発品メーカーは慢性的に募集していることが多い
ただし学術・DIの求人は公開の求人市場にはほとんど出ません。時期を狙うより、エージェントに希望を登録しておき、出た瞬間に紹介を受けられる状態にしておく方が確実です。
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【最新業界動向】今の薬剤師が知っておきたいこと
薬剤師業界を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わってきています。最新の業界ニュースをもとに、キャリアを考えるうえで知っておきたいポイントを整理しました。
📰 ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
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📰 薬事日報 薬学生新聞デジタル トップ
出典:薬事日報
業務のデジタル化が進む中で、薬剤師に求められる役割も少しずつ変わってきています。DXに積極的な職場へ転職することで、将来にわたって安定したキャリアを築きやすくなります。
📰 米FDA、ナルコレプシー1型を包括的に治療する初の薬剤を承認
出典:薬事日報
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📰 2026年8月13日からの千葉県を中心とする大雨被害、保険診療受診や診療報酬算定に関する特例を適用—厚労省
本年(2025年)8月13日から、千葉県を中心に大雨により大きな被害が出ており、医療機関にも被害が及んでいます。被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。 状況を重く見た厚生労働省は、8月14日に事務連絡「令和8年8月13日からの大雨…(GemMed)
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こうした業界の動きを踏まえると、今の職場環境や将来のキャリアについて改めて考えてみる価値はあります。転職するかどうかは別として、まずはエージェントに相談して求人情報を見てみるのもひとつの方法です。登録・相談は無料です。
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よくある質問(FAQ)
Q. 転職エージェントは本当に無料で使えますか?
A. はい、求職者(薬剤師)側は完全無料です。エージェントは採用企業から成功報酬をもらうビジネスモデルのため、転職者に費用は一切かかりません。
Q. 複数のエージェントに登録しても問題ありませんか?
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Q. 登録したら必ず転職しなければなりませんか?
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Q. 在職中でも転職活動はできますか?
A. 可能です。在職中の方が精神的・経済的に余裕があり、好条件の求人をじっくり吟味できます。エージェントも在職中のサポートに慣れているので安心です。
Q. 年収交渉はエージェントに任せられますか?
A. はい、ほとんどの薬剤師専門エージェントが年収交渉を代行しています。自分では言いにくい交渉もプロが代行するため、年収アップの確率が高まります。
Q. ファルマスタッフとレバウェル薬剤師はどちらに先に登録すべきですか?
A. どちらも同時に登録するのがおすすめです。それぞれ独自の非公開求人を保有しているため、両方登録することで選択肢が広がります。
この記事の運営者:ぴろしき
調剤併設ドラッグストアで働く現役の管理薬剤師・薬局長。自身のパワハラ・転職経験をもとに、薬剤師が働きやすい環境を選ぶための情報を発信しています。詳しいプロフィールはこちら



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