「制度が変わっても、どうせ現場は変わらない」 何度も制度改定を見てきた薬剤師ほど、そう感じているのではないでしょうか。 ただ、他の業界では、実際に変わった例があります。しかもその変わり方には、薬局業界に決定的に欠けているものが含まれていました。
物流業界で何が起きたか
2024年4月から、トラック運転手にも時間外労働の上限規制が適用されました。年間960時間という上限です。
これによって従来の長時間労働を前提にした輸送体制が維持できなくなり、輸送能力が最大で3割程度減るとも試算されました。
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ここまでは、薬局でいう調剤報酬改定と似た話に見えるかもしれません。制度が変わり、現場が対応を迫られるという構図です。
ただ、物流業界ではこのあとが違いました。
負担を「発注する側」の義務にしました
2026年4月から、年間9万トン以上の貨物を扱う荷主は「特定荷主」に指定されることになりました。
指定された荷主は、荷待ち時間や荷役時間の削減について中長期計画を策定し、取り組み状況を定期的に報告することが義務づけられます(改正物流二法)。
ここが重要です。
運転手の労働時間を短くするために、運転手に頑張れと言ったのではありません。待たせている側、荷物を出している側に義務を課したのです。
現場の努力ではどうにもならない部分は、構造を変える側に責任を持たせる。この発想が制度として入りました。
薬局の負担は、いまだに誰の義務にもなっていません
薬局に置き換えてみてください。
処方箋がまとまって出る時間帯、疑義照会の返答を待つ時間、急な処方変更、時間外の持ち込み──こうした負担の多くは、薬局の外側から発生しています。
それでも、その負担を減らすことが、外側の誰かの義務になっている場面はほとんどありません。
結果として、調整はすべて薬局の現場で吸収されます。待つのも、謝るのも、残業するのも現場です。
「制度が変わっても現場は変わらない」という感覚は、正確です。制度が現場の外側に手を入れていないのだから、変わりようがありません。
だからこそ、会社の姿勢が決定的になります
外側の構造が変わらない以上、薬剤師の負担を減らせるのは、雇っている会社しかありません。
同じ調剤報酬改定を受けても、対応は会社によって割れます。
- 人員配置を見直した会社と、同じ人数のまま業務だけ増やした会社
- 開局時間や受け入れ件数を調整した会社と、現場に吸収させた会社
- 設備やシステムに投資した会社と、手作業のまま乗り切らせた会社
- 負担の増加を数字で把握している会社と、把握していない会社
制度は全社に等しく降ってきます。差がつくのは、そのあとに何をしたかだけです。
「うちも大変だから」で止まる会社の見分け方
経営が苦しいことと、何もしないことは違います。次のような反応が続く職場は、後者である可能性が高いと思います。
- 負担が増えた事実を伝えても、記録も検討もされない
- 改善案を出しても「予算がない」で終わり、代案が出てこない
- 他店舗との比較や、業界の動向を経営側が把握していない
- 設備投資の話が何年も出ていない
- 管理者が本部に状況を上げていない、または上げても返答がない
会社に体力がないこと自体は、責められることではありません。ただ、体力がない会社ほど、負担は現場に寄ります。そして、その状態は長く続きます。
確かめる順番
STEP1:負担を数字にして伝える
「忙しい」では動きません。処方箋枚数の推移、残業時間、休憩の取得実績を記録して、事実として提示してください。
物流業界で荷主に義務が課されたのも、荷待ち時間が数字として可視化されたからです。数えられていないものは、問題になりません。
STEP2:会社が何を検討したかを確認する
伝えたあと、会社が何を検討したのかを聞いてください。「検討します」で終わって何も起きないなら、それが回答です。
STEP3:投資できる会社かどうかで判断する
設備にも人にも投資できない会社は、次の改定でも同じことが起きます。制度は今後も変わり続けるからです。
会社を選ぶときは、今の条件よりも「変化に対応できる体力があるか」を見たほうが、長く働けます。
構造を変えられる会社は、確かにあります
同じ制度変更を受けても、人員や設備に手を入れて現場の負担を減らした会社は実在します。
動いている会社かどうかは、外からは見えません。求人票に書かれるのは条件だけで、「欠員が出たときに何をした会社なのか」は載らないからです。
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まとめ|現場の頑張りを前提にした仕組みは、いつか止まります
物流業界は、現場の努力では限界があると認めたうえで、外側に義務を課しました。
薬局業界には、まだそれがありません。負担は現場に降り、吸収できるかどうかは会社の方針に委ねられています。
つまり、あなたの働きやすさを決めているのは制度ではなく、いまの会社です。
制度が変わるのを待つより、対応できる会社を選ぶほうが早い。残念ですが、それが現実的な結論だと思います。
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この記事の運営者:ぴろしき
調剤併設ドラッグストアで働く現役の管理薬剤師・薬局長。自身のパワハラ・転職経験をもとに、薬剤師が働きやすい環境を選ぶための情報を発信しています。詳しいプロフィールはこちら



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