吐き気止めとして広く使われているドンペリドン(ナウゼリンなど)とメトクロプラミド(プリンペランなど)の電子添文に、「重篤な不整脈」の注意が加わりました。厚生労働省が2026年8月25日に出した使用上の注意の改訂指示によるもので、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が日本のレセプトなどのデータを使って調べた結果がもとになっています。
この記事では、改訂の中身、もとになった調査の結果、薬局で確かめておきたいことをまとめます。同じ日に改訂が指示されたアセトアミノフェン、オランザピン、葛根湯についても紹介します。
※2026年11月5日時点で、PMDAに掲載された改訂指示の資料と調査結果をもとにしています。処方を変えるかどうかは処方医の判断です。最新の情報は各製品の電子添文で確かめてください。
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この記事の要点
- ドンペリドンとメトクロプラミドの「重要な基本的注意」と「重大な副作用」に、重篤な不整脈(心室頻拍、心室細動など)が加わった
- 必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと、症状があれば速やかに受診するよう指導することが求められている
- もとになったNDBの調査では、使っていない時期と比べて、使っている時期の致死性不整脈・心突然死のオッズ比が2.48(ドンペリドン)、2.73(メトクロプラミド)だった
- 同じ日に、アセトアミノフェン(代謝性アシドーシス)、オランザピン(制吐目的の糖尿病患者への投与)、葛根湯(多形紅斑)の改訂も指示された
ドンペリドン・メトクロプラミドの改訂の中身
改訂の対象は、ドンペリドン(ナウゼリン錠・OD錠・ドライシロップ・坐剤など)、塩酸メトクロプラミド(プリンペラン注射液など)、メトクロプラミド(プリンペラン錠・シロップ・細粒など)です。後発品も含みます。
| 電子添文の項目 | 加わった内容 |
|---|---|
| 8. 重要な基本的注意 | 国内外の疫学調査で、致死性不整脈と心突然死のリスクの増加が示唆されている(メトクロプラミドは「国内の疫学調査で致死性不整脈が、国内外の疫学調査で心突然死のリスク増加が示唆」)。心室頻拍、心室細動などの重篤な不整脈があらわれることがあるので、次の点に注意する |
| 注意する点 | ・必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しない ・関連する症状が認められた場合は、速やかに受診するよう患者に指導する ・観察を十分に行い、関連する症状が認められた場合は速やかに心機能検査(心電図検査など)を行う |
| 11.1 重大な副作用 | 重篤な不整脈:心室頻拍、心室細動などの重篤な不整脈があらわれることがある。異常が認められた場合には、中止、救命処置、除細動などの適切な処置を行う |
出典:ドンペリドンの改訂内容(別紙3)、メトクロプラミドの改訂内容(別紙4)、PMDA「ドンペリドン及び塩酸メトクロプラミド/メトクロプラミドの「使用上の注意」の改訂について」(2026年8月25日)
もとになったNDBの調査
PMDAの資料によると、ドンペリドンは海外で静脈注射の製剤を使ったあとの心臓突然死が報告され、欧州では2014年に1日の最大量を30mgとするなどの見直しがありました。日本では、欧州より経口剤の最大量が少ないことなどから、心疾患のある患者さんへの注意にとどめていました。一方、日本人を対象とした研究はなかったため、PMDAがNDB(匿名医療保険等関連情報データベース)を使って調べました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 2012年4月〜2023年3月に、経口のドンペリドンまたはメトクロプラミドを処方された20歳以上の患者(悪性腫瘍、パーキンソン病、遺伝性不整脈のある人などは除く)。調査対象は約1936万人 |
| 調べ方 | 致死性不整脈または心突然死を起こした人(83,958人)と、性別・年齢などが同じで起こしていない人(839,190人)を比べる方法(コホート内症例対照研究) |
| 「使っている時期」の定義 | 処方期間の終わりが、発症日の7日前以降にある場合 |
結果:使っている時期は、オッズ比が2倍あまり
使っていない時期(処方の終わりが発症日の68日以上前)と比べた、致死性不整脈・心突然死の調整オッズ比は次のとおりでした。
| 薬 | 使っている時期 | 使い終えて8〜67日 |
|---|---|---|
| ドンペリドン | 2.48(95%信頼区間 2.39〜2.58) | 1.60(1.53〜1.67) |
| メトクロプラミド | 2.73(2.61〜2.86) | 2.00(1.91〜2.10) |
ドンペリドンの1日の処方量で分けると、30mgを超える場合は1.75、30mg以下の場合は1.91で、量が少なくてもリスクの上昇が示唆されました。65歳以上や、心疾患などの既往がある人で特にリスクが高い傾向は見られなかったとしています。
資料では、アウトカムの定義の妥当性を確かめていないこと、飲酒歴やBMIなどの影響を除ききれないこと、院外での死亡を完全にはとらえられないことなどの限界にも触れています。オッズ比は「起こる確率が何倍になるか」をそのまま示すものではない点にも注意が必要です。
出典:PMDA「NDBを用いた調査結果の概要(ドンペリドン又はメトクロプラミドによる致死性不整脈イベント発現のリスク評価)」(2026年8月25日)
同じ日に改訂が指示された主な薬
| 薬 | 主な改訂 |
|---|---|
| アセトアミノフェン(配合剤を含む) | 「合併症・既往歴等のある患者」に、重篤な腎障害・肝障害、敗血症、栄養障害などでピログルタミン酸が蓄積しやすい患者を新設。アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスがあらわれるおそれ |
| オランザピン(経口剤) | 抗悪性腫瘍剤(シスプラチンなど)による吐き気・嘔吐に使う場合に限り、糖尿病またはその既往のある患者への投与について警告を新設。治療上の有益性が上回る場合以外は投与しない、毎日頻回の血糖測定など。統合失調症・双極性障害では引き続き禁忌 |
| 葛根湯 | 重大な副作用に「多形紅斑」を追加 |
出典:アセトアミノフェンの改訂内容(別紙1)、オランザピンの改訂内容(別紙2)、葛根湯の改訂内容(別紙14)、PMDA「使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)2026年度指示分」
薬局で確かめておきたいこと
- 長く続いている処方:ドンペリドンやメトクロプラミドが、はっきりした期間の区切りなく何カ月も続いている場合は、改訂の趣旨(漫然と投与しない)をふまえ、必要に応じて処方医に確かめる
- 患者さんへの説明:関連する症状があれば速やかに受診するよう伝える。どんな症状に気をつけるかは、改訂後の電子添文と患者向医薬品ガイドで確かめる
- 薬歴や監査システムの設定:重大な副作用の追加をシステムの薬品情報に反映できているか確かめる
- 葛根湯の相談:市販薬として相談を受けることもある薬。発疹などが出たら使用をやめて相談するよう、説明の機会を逃さない
同じ時期の安全性の改訂は、アメナリーフ錠の重大な副作用に「アナフィラキシー」追加の記事でも紹介しています。品質の面では、ニトロソアミン検出のお知らせのまとめも参考にしてください。
改訂の情報を共有する仕組みは職場によって違う
使用上の注意の改訂は、毎月のように出ます。本部や薬剤部がまとめて要点を流してくれるのか、各店舗の薬剤師がそれぞれPMDAのページを確かめるのかで、窓口の負担は大きく変わります。転職を考えるときは、次の点も聞いてみましょう。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 改訂の情報共有 | 「添付文書の改訂は、どのように店舗に共有されますか」 |
| システムへの反映 | 「薬品マスタや監査システムの更新は、誰が担当していますか」 |
| 疑義照会の体制 | 「長期処方を処方医に確かめるときの手順は決まっていますか」 |
よくある質問
Q. ナウゼリンやプリンペランは、もう使えないのですか?
いいえ。今回の改訂は、電子添文の「重要な基本的注意」と「重大な副作用」に重篤な不整脈の注意を加えるもので、使えなくする内容ではありません。改訂では、必要最小限の使用にとどめ、長期にわたり漫然と投与しないこと、関連する症状があれば速やかに受診するよう患者さんに指導することなどが求められています。
Q. なぜ今になって不整脈の注意が加わったのですか?
PMDAが、レセプトなどのデータベース(NDB)を使って日本人の患者さんを調べた結果、ドンペリドンとメトクロプラミドの両方で重篤な不整脈のリスクが示唆されたと判断したためです。PMDAの資料では、これまで日本人を対象とした研究は報告されていなかったため、調査が必要と考えたと説明されています。
Q. ドンペリドンの量が少なければ、リスクは低いのですか?
NDBの調査では、ドンペリドンの1日の処方量が30mgを超える場合も、30mg以下の場合も、使っていない人と比べてリスクの上昇が示唆されました。量が少ないから心配ないとは言えない結果です。
Q. 患者さんにはどう伝えればいいですか?
改訂では、関連する症状があれば速やかに受診するよう指導することが求められています。どんな症状に気をつけるか、いつまで飲むのかは処方医の指示によります。自己判断で量を増やしたり、長く飲み続けたりしないことも伝えましょう。
まとめ
- ドンペリドン(ナウゼリンなど)とメトクロプラミド(プリンペランなど)の電子添文に、重篤な不整脈の注意が加わった(2026年8月25日の改訂指示)
- 必要最小限の使用にとどめ、漫然と投与しないこと、症状があれば速やかに受診するよう指導することが求められている
- NDBの調査では、使っている時期のオッズ比が2.48(ドンペリドン)、2.73(メトクロプラミド)。ドンペリドンは30mg以下でも上昇が示唆された
- アセトアミノフェン、オランザピン、葛根湯も同じ日に改訂が指示された
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