アルツハイマー病の治療薬「レケンビ」(レカネマブ)と「ケサンラ」(ドナネマブ)の電子添文の「警告」に、投与を始める前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮することが加わりました。厚生労働省が2026年8月17日に出した使用上の注意の改訂指示によるものです。
この記事では、改訂の中身と理由、国内の副作用報告の集まり方、薬剤師が患者さんやご家族から質問を受けたときに確かめておきたいことをまとめます。
※2026年11月6日時点で、PMDAに掲載された改訂指示の資料と調査報告書をもとにしています。治療をどうするか、検査を受けるかどうかは主治医と相談して決めることです。最新の情報は各製品の電子添文で確かめてください。
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この記事の要点
- レケンビ・ケサンラの「1. 警告」に、投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮することが加わった(2026年8月17日の改訂指示)
- 理由は、APOEε4ホモ接合型キャリアでARIAの発現割合が高い傾向があったことと、2026年7月にAPOE遺伝子検査が保険収載されたこと
- 検査は「考慮」。しなかった場合も、投与中に必要と考えれば検査を検討する
- 検査の意義を患者さんと家族・介護者に十分に説明し、同意を得る。MRI検査を含むARIAの管理は保因状況にかかわらず続ける
対象になった薬
| 一般名 | 販売名(承認取得者) | 販売開始 |
|---|---|---|
| ドナネマブ(遺伝子組換え) | ケサンラ点滴静注液350mg(日本イーライリリー) | 2024年11月 |
| レカネマブ(遺伝子組換え) | レケンビ点滴静注200mg・500mg(エーザイ) | 2023年12月 |
どちらも効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」です。
出典:PMDA「ドナネマブ(遺伝子組換え)、レカネマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について」(2026年8月17日)
改訂の中身
2つの薬とも、「1. 警告」と「8. 重要な基本的注意」が改められました。
| 項目 | 加わった内容(要約) |
|---|---|
| 1. 警告 | APOEε4ホモ接合型キャリアでARIAの発現割合が高かったことから、投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮する |
| 8. 重要な基本的注意 | ARIAのリスク管理のために、原則として投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮する。考慮した結果、投与開始前に検査をしなかった場合も、投与中に必要と考える場合には検査の実施を検討する |
| 8. 重要な基本的注意(検査の方法) | 承認された体外診断用医薬品を用い、最新のガイドラインなどを参考に、APOE遺伝子検査の意義について患者さんと家族・介護者に十分に説明し、同意を得る |
| 8. 重要な基本的注意(変わらない点) | APOEε4の保因状況にかかわらず、規定のMRI検査を含むARIAの管理を行う |
改訂前から、APOEε4のキャリアではARIAがより高い頻度で認められると書かれていました。電子添文によると、ApoEε4ホモ接合型キャリアの割合は、アルツハイマー病の患者さんで約15%(レケンビ)、ケサンラの国際共同第Ⅲ相試験(AACI試験)で16.7%、海外第Ⅲ相試験(AACQ試験)で10.1%でした。
出典:医薬安発0817第1号「使用上の注意」の改訂について(2026年8月17日)、ドナネマブの改訂内容(別紙1)、レカネマブの改訂内容(別紙2)
なぜ今、改訂されたのか
PMDAは、製造販売後調査、国内の副作用報告、承認時の臨床試験、海外の添付文書、ガイドラインなどを調べ、専門委員の意見も聞きました。そのうえで、次の2つを理由に、使用上の注意を改訂するのが適切と判断しています。
- APOEε4ホモ接合型キャリアで、ARIAの発現割合が高い傾向が認められた
- 2026年7月に、APOE遺伝子検査が保険収載された
報告書には、国内のARIA関連の症例の集まり方も載っています。
| 薬 | ARIA関連の国内症例 | うち死亡 |
|---|---|---|
| ドナネマブ(ケサンラ) | 95例 | 0例 |
| レカネマブ(レケンビ) | 87例 | 1例 |
これはPMDAの副作用等報告のデータベースに登録された症例の数で、因果関係の評価はしていないと注記されています。使った人のうち何%に起きたかを示す数字ではありません。
出典:PMDA調査報告書(2026年8月17日)、PMDA「使用上の注意の改訂指示通知(医薬品)2026年度指示分」
薬剤師が確かめておきたいこと
- 投与前の説明の流れ:病院では、投与前の説明文書や同意書に、APOE遺伝子検査の意義と、検査をしない場合の扱いが入っているかを確かめる
- ご家族からの質問:「遺伝子検査を受けないといけないのか」と聞かれたら、改訂の文言は「考慮する」であり、受けるかどうかは主治医と相談して決めることを伝える
- 異常があったときの連絡:電子添文の警告には「異常が認められた場合には、速やかに主治医に連絡するよう指導すること」とある。いつもと違う様子があれば、次の予約を待たずに主治医に連絡するよう伝える
- 薬局での併用薬の確認:レケンビ・ケサンラは点滴の薬なので薬局の薬歴に載らないことがある。お薬手帳や聞き取りで治療中と分かったら、薬歴に記録し、ほかの医療機関の処方と重ならないよう必要に応じて処方医と情報を共有する
同じ時期の安全性の改訂は、抗てんかん薬と車の運転の注意の改訂の記事や、小児用抗菌薬の低カルニチン血症の注意の記事でも紹介しています。
新しい薬の管理に関われる職場は限られる
レケンビ・ケサンラのように、検査やMRIの予定と組み合わせて使う薬は、病院の薬剤部が投与のスケジュールや説明資料の整備に関わります。こうした仕事にどこまで関われるかは、病院の規模や、認知症の専門外来があるかどうかで大きく変わります。転職を考えるときは、次の点も聞いてみましょう。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 新薬の導入への関わり | 「新しい薬を採用するとき、薬剤部はどこまで関わりますか」 |
| 病棟・外来での説明 | 「外来の患者さんへの薬の説明は、薬剤師が担当していますか」 |
| 改訂の情報共有 | 「添付文書の改訂は、どのように院内に共有されますか」 |
よくある質問
Q. APOE遺伝子検査を受けないと、レケンビやケサンラは使えなくなったのですか?
いいえ。改訂の文言は、投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を「考慮すること」です。考慮した結果、投与開始前に検査をしなかった場合でも、投与中に必要と考えれば検査の実施を検討することとされています。
Q. なぜ今、検査の考慮が加わったのですか?
PMDAの報告書によると、APOEε4ホモ接合型キャリアでARIA(アミロイド関連画像異常)の発現割合が高い傾向が認められたことと、2026年7月にAPOE遺伝子検査が保険収載されたことが理由です。
Q. 検査のときに気をつけることは書かれていますか?
はい。承認された体外診断用医薬品を用いること、最新のガイドラインなどを参考に、APOE遺伝子検査の意義について患者さんと家族・介護者に十分に説明し、同意を得ることが書かれています。
Q. 検査の結果にかかわらず、MRI検査は続けるのですか?
はい。改訂後も、APOEε4の保因状況にかかわらず、電子添文に規定されたMRI検査を含むARIAの管理を行うこととされています。
まとめ
- レケンビ・ケサンラの電子添文に、投与開始前にAPOE遺伝子検査の実施を考慮することが加わった(2026年8月17日の改訂指示)
- 理由は、APOEε4ホモ接合型キャリアでARIAの発現割合が高い傾向があったことと、2026年7月のAPOE遺伝子検査の保険収載
- 検査は「考慮」で、しなかった場合も投与中に必要なら検討する。MRI検査を含むARIAの管理は続ける
- ARIA関連の国内症例はケサンラ95例(死亡0例)、レケンビ87例(死亡1例)。因果関係の評価はしていない
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