序章:男性薬剤師と育休 ― 社会的背景と現状
近年、少子高齢化や共働き家庭の増加により、男性が育児に積極的に関わることは社会全体の重要なテーマとなっています。特に薬剤師という職業は、医療従事者でありながらも「勤務先の形態によって働き方が大きく変わる」点が特徴です。病院薬剤師、調剤薬局、ドラッグストア、製薬メーカーといった様々な選択肢があり、それぞれにおける労働環境は一様ではありません。
その中で、男性薬剤師が「育児休業(育休)」を取得することは、まだまだ珍しいケースとして見られがちです。厚生労働省の統計によれば、男性全体の育休取得率はここ数年でようやく 40%まで上昇してきましたが、医療・福祉業の男性育休取得率は「15.9%」前後と依然として低い水準にとどまっています。
背景には次のような要因があります。
- 薬局や病院では「人員不足」による育休取得の難しさ
- 男性が長期で職場を離れることへの職場内の抵抗感
- 労基法や育児・介護休業法など制度面の理解不足
- キャリア形成や昇進への不安
一方で、労基法や育児介護休業法は、性別に関わらず育休を取得できる権利を保障しています。つまり、「男性薬剤師だから取れない」というのは誤解であり、むしろ制度を正しく理解し、職場に伝えることで権利を行使できるケースがほとんどです。
この記事では、労基法の基本から、男性薬剤師が育休を取得する際の実務的なポイント、職場環境との関係、さらにキャリア形成とのバランスまでを徹底的に掘り下げます。
私自身、男性薬剤師ですが育休を1年取得してきています。経験から、男性も一定期間以上育休を取得すべきということを痛感しております。1人でも多くの方に男性育休取得の重要性を感じていただければ幸いです。
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第1章:労基法と育休制度の基本理解

まず誤解されがちな点を整理しましょう。
育休は「労働基準法」そのものには規定されていません。正しくは 「育児・介護休業法」 によって定められており、労基法は労働時間や賃金などの基本的な労働条件を規定する法律です。
ただし、労基法の「解雇制限」や「不利益取扱いの禁止」などと密接に関係しています。たとえば、
- 育休を理由に解雇するのは違法(労基法+育児介護休業法の両面から保護)
- 取得希望を出した従業員に対し、減給や人事評価の不当な引き下げも禁止
つまり「育休の根拠は育児介護休業法」「守られる基盤は労基法」と理解するとスッキリします。
男女雇用機会均等法の観点からも、性別による制限は一切ないことがポイントです。薬局勤務であろうと病院勤務であろうと、正社員であれば原則として育休取得が可能。パート・契約社員の場合でも、一定の条件(雇用が継続される見込みなど)を満たせば取得可能です。

男性薬剤師も法律上は問題なく育休を取得できます!
ちなみに、2022年の改正により、男性向けに「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。出産後8週間以内に、最大4週間まで分割して取得できる制度です。薬剤師の場合ももちろん適用され、短期間であっても利用することで「最初から育児に関与する父親」というスタートラインを切れます。
第2章:男性薬剤師が育休を取得するメリットと課題

1. 男性薬剤師が育休を取得するメリット
「薬剤師として育休を取るのは現実的なのか?」
「育休を取ったらキャリアが止まるのでは?」
そんな疑問を持つ男性薬剤師は少なくありません。
しかし、法律上の権利として育休を取れることはもちろん、その経験がキャリアや人生設計にプラスに働く側面も大きいのです。
一方で、現場ではまだまだ根強い課題も残っています。ここでは、男性薬剤師が育休を取得することの メリットと課題 を整理していきましょう。
育休を取得する最大の意義は、家族と過ごす時間を確保できることです。
薬剤師はシフト制勤務が多く、土日勤務や夜勤対応もあり、家庭の時間を持ちにくい職種です。特に子どもの乳児期は、わずか数か月でも集中して育児に参加することが、子どもとの絆形成やパートナーの負担軽減に大きな影響を与えます。
「父親としての存在感を持てた」
「パートナーとの関係が改善した」
といった声は、実際に育休を経験した男性薬剤師から多く聞かれます。
また、意外に思われるかもしれませんが、育休経験はキャリア形成にプラスに働くことがあります。
薬剤師は免許制職種であり、一度資格を取れば更新や試験は不要です。たとえ半年〜1年の育休で現場を離れても、復職・転職のハードルは比較的低いです。
また、育児を経験することで「時間管理力」「優先順位の付け方」「共感力」といったスキルが高まり、将来的に薬局長や管理職に就いた際に役立ちます。
優先順位の付け方についてはこちらの記事を参考にしてみて下さい👇
さらに、最近は「男性育休を取った経験がある薬剤師=柔軟な働き方を理解している人材」として評価する企業も増えています。特に大手調剤薬局や病院では、育休取得経験がネガティブではなく「安心材料」になる場合もあります。
薬剤師は女性が多い職場なので、育児で急遽早退することになったり、そもそも時短勤務で長時間働けなかったりして現場に負担がかかることが少なくなりません。そのような中で、男性で育休経験があれば”育児に理解のある人”という認定をされるので、重宝されることがよくあるのです。
そして、キャリア面のみでなく精神面でもメリットがあります。
「育児に主体的に関われた」という実感は、薬剤師としての仕事のモチベーションにもつながります。
仕事だけでなく家庭でも役割を果たせることで、「どちらかを犠牲にしている感覚」から解放され、長期的に働き続ける活力になります。
2. 男性薬剤師が直面する課題
まずは、”職場の理解不足”という課題が挙げられます。
特にドラッグストアや中小薬局では「男性が育休を取る」という発想がまだ根付いていません。
「人手不足なのに本当に休むの?」
「奥さんがいるなら大丈夫でしょ」
といった圧力を感じて、申請をためらうケースは少なくないのです。
次に、”収入面”においても課題があるでしょう。
育児休業給付金は最大で休業前給与の67%(半年以降は50%)ですが、薬剤師はもともとが比較的高収入のため、生活水準によっては「家計が回るのか」という不安が大きくなります。
特に住宅ローンや教育資金を抱えている世帯では、育休期間の収入減をどう補うかが現実的な課題になります。
ちなみに、育休を1年取った場合のシミュレーションはこちらの記事で解説していますのでぜひ読んでみて下さい👇
3. メリットと課題を天秤にかけたとき
男性薬剤師が育休を取るメリットは、家庭・キャリア・精神面のいずれにおいても非常に大きいといえます。
一方で、職場の理解不足や収入減といった課題は現実的に存在します。
大切なのは、「課題を理由に諦める」のではなく、制度の知識を武器にし、計画的に育休を取得すること。
例えば、給付金のシミュレーションを事前に行う、上司への伝え方を工夫する、必要であれば転職も視野に入れるといった戦略が必要になります。
薬剤師という国家資格職であることは、「一度休んでもキャリアをリカバリーしやすい」という大きな強みです。
この強みを理解したうえで育休を選択できるかどうかが、今後の人生設計を左右するのです。
そして何よりも重要なことは、育休を取得しやすい雰囲気の職場を選んでおくことです。
法律上、制度としてはどこの職場にも育休制度は存在します。ですが、だからと言って「みんな育休を取れる」雰囲気であるかどうかは別問題です。
この雰囲気がどうかということについては、独りでネットを眺めていても絶対に分かりません。
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第3章 育休取得と職場環境 ― 法律と現実のギャップ
まず前提として、育児休業は労働基準法ではなく、育児・介護休業法によって保障された制度です。
男女を問わず、一定の条件を満たす労働者には「育休を申請する権利」があり、会社はこれを拒むことができません。また、育休を取得したことを理由に解雇・降格・減給などの不利益な扱いをすることも、法律で明確に禁止されています。
つまり、制度の上では男性薬剤師も女性薬剤師と同じように育休を取れるのです。
しかし、法律が整備されていても、現場の実態は必ずしも理想どおりではありません。特に薬剤師の職場は、ドラッグストアや中小薬局を中心に慢性的な人員不足に悩まされており、ひとり抜けると業務が回らない状況が常態化しています。
そのため、男性薬剤師が育休を希望しても、
「代わりがいないから現実的に難しい」
「女性ならまだしも男性は取らなくても…」
「復帰後に席が無いかもよ…」
といった“見えない圧力”を感じるケースが少なくありません。
この「制度はあるが、使いづらい」という空気感こそが、法律と現実の大きなギャップです。
職場の規模によっても、育休取得のハードルは大きく異なります。
以下はあくまで傾向ですが、
- 大手調剤薬局や病院
人員体制が比較的整っており、育休制度を活用する前例もあるため、男性薬剤師でも比較的取得しやすい。法人内での人事異動やヘルプ体制もあり「戻りにくい雰囲気」が薄い。 - 中小薬局
法律上は制度が整っていても、1店舗あたりの薬剤師数が少なく、ひとり抜けると業務が成り立たないため「制度はあるが申請しにくい」ケースが多い。戻った後も「迷惑をかけた」という空気が残ることも。 - ドラッグストア
新規出店の多発で、そもそも人員不足が常態化。育休を「権利」として行使するより「無理を承知でお願いする」形になりやすいが、会社によっては育休取得を促進しているところもある。
このように、同じ「薬剤師」という職種でも、職場規模や業態によって現実は大きく違うのです。
男性薬剤師が育休を検討するとき、頭をよぎるのは「制度的には取れる。でも職場の空気的に言い出しにくい。」という板挟みです。
特に男性の場合、まだ「育休=母親のための制度」という認識が残っている職場も多く、同僚や上司の理解を得にくいのが現状です。
結果として、
- 「有給を小出しに使って誤魔化す」
- 「結局取らずに産後も働き続ける」
- 「取ったとしても短期間にとどめる」
といった妥協的な選択肢になりやすくなります。
では、この「法律と現実のギャップ」を埋めるにはどうすればいいのでしょうか。
- 個人として権利を正しく理解する
まず大前提として、「育休は誰にでもある権利」であることを本人が理解しておくことが必要です。知識がなければ、見えない圧力に押し負けてしまいます。 - 職場内で前例をつくる勇気
誰かが最初に声を上げなければ、職場文化は変わりません。男性薬剤師が自ら取得することで、「男性でも当たり前に取れる」という空気を広げられる可能性があります。 - 転職も選択肢に入れる
どうしても理解が得られない職場であれば、「制度が使える環境に移る」こともキャリア戦略の一部です。国家資格を持つ薬剤師は環境を変えることがしやすいので、恩恵にあずかることも有効な戦略の一つです。
第4章 転職・キャリア形成と育休の関係性

男性薬剤師の多くが抱える不安のひとつに、
「育休を取ったらキャリアに傷がつくのでは?」
というものがあります。
これは一般企業でもよく聞かれる悩みですが、薬剤師という職業においては必ずしも当てはまりません。なぜなら、薬剤師は国家資格職であり、資格そのものが一定の市場価値を保証しているからです。
むしろ、育休を取ることは「家庭を大切にできる人材」「ワークライフバランスを意識している人」として、高評価につながる可能性すらあります。
育休を通じて得られる経験は、薬剤師としてのキャリア形成にもプラスに働きます。
子育てを経験した薬剤師は、同じく子育て中の患者や家族に対して、より深い理解と共感を持って接することができます。これは服薬指導や生活支援の場面で大きな強みになります。
また、家庭と仕事を両立した経験は、自分自身の働き方を見直すきっかけになります。「時短勤務」「リモート会議の活用」など、新しい働き方を模索する姿勢は、組織にとってもプラスです。
さらに、育児は時間管理・優先順位付け・マルチタスクの連続です。これらの経験は、調剤薬局やドラッグストアでのチームマネジメントに直結します。
タスク処理の優先順位付けに関してはこちらの記事でも詳しく解説しています👇
薬剤師の転職市場において、育休の取得はマイナス要素ではありません。むしろ現在の人材不足状況を考えると、育休経験によるキャリアブランクはほとんど問題視されないのが実情です。
また、大手調剤薬局やドラッグストアなどは「育休を積極的に取得している人材」を歓迎する傾向があります。なぜなら、その経験が患者や同僚との関係づくりに役立ち、組織の多様性推進にもつながるからです。
つまり、「育休を取ったから転職できない」という不安は過度な心配に過ぎないのです。
一方で、育休と転職のタイミングには工夫が必要です。
- 育休前に転職する場合
→ 育休制度が整っている職場を選べるメリットがある。妊活・出産を見据えたライフプランに沿った転職戦略が立てやすい。 - 育休中に転職を検討する場合
→ 時間が確保しやすい反面、面接や職場見学が制限されるデメリットも。実際には「復職後のキャリア」を意識しながら情報収集するのが現実的。 - 育休後に転職する場合
→ 育休を取得した実績があり、それをプラスにアピールできる。職場復帰後に環境が合わなければ「次のステップ」に踏み出しやすい。
このように、転職と育休は切り離して考えるのではなく、ライフイベントとキャリア形成をリンクさせることが重要です。

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第5章:男性薬剤師が「労基法」を味方につけて働き方を変える方法

薬剤師の現場では、患者対応や人員不足を理由に「仕方がないから残業」「男性は休まず働いて当然」といった空気が残っているケースが少なくありません。
しかし、労働基準法(労基法)はこうした「我慢の強要」から労働者を守るためのルールです。
- 時間外労働の上限
- 有給休暇の取得義務
- 育児・介護休業法と連動する休業制度
これらを理解していれば、無理な働き方を押し付けられそうになったとき、法律を根拠に交渉できるのです。
男性薬剤師が育休を取りたいと申し出たとき、職場からは以下のような反応が返ってくることがあります。
「人手不足だから、正直困る」
「男性は前例がないからやめてほしい」
「休むのは自由だけど評価に響く(または戻ってくるポジション無い)かも」
こうした“圧力”に対しても、法律は味方になります。
- 労基法第136条(不利益取扱いの禁止)
→「育休を理由に降格・解雇・不利益な評価をしてはならない」 - 育児・介護休業法第5条
→「男女を問わず、子が1歳になるまで育休を取得する権利がある」
つまり、会社が「男性だからダメ」と言うこと自体が違法。
この根拠を押さえておくことで、感情論ではなく制度論で冷静に交渉できます。
育休に限らず、日常業務でも労基法を活かすことで働き方を改善できます。
- 残業時間の上限(36協定)
年間720時間、月45時間を超える残業は原則禁止。
→「薬剤師だから仕方ない」という言葉では、違法残業は正当化されません。 - 有給休暇の5日取得義務
年10日以上の有給がある労働者は、最低でも年5日は取得必須。
→「忙しいから取れない」は会社側の管理責任。 - 深夜労働(22時〜5時)の割増賃金
→ドラッグストアの遅番でも、正しく計算されなければ違法。
つまり「薬剤師は特殊だから」といった空気に流されず、
自分の時間を守る法的根拠を持つことが、心身の健康を守る第一歩にもなります。

薬剤師が知っておくべき労基法については以下の記事でも解説しています!ぜひ読んでみて下さい👇
男性薬剤師が労基法を理解して実際に行動することは、自分だけでなく職場全体を変えるきっかけになります。
誰かが労基法を持ち出せば職場に法律を意識する雰囲気が生まれますし、
管理職などの上層部が「無理を言えない…」と気づき、制度を守るようになります。
さらに、後輩の薬剤師が「先輩が育休取れたから自分も取りやすい」と考えるようになり、従業員定着率にも好影響が出ます。
つまり、労基法を味方につける行動は“職場文化”を変えるリーダーシップでもあるのです。
加えて、長期的な視点で見ると、労基法を理解し、正しい働き方を実践できる男性薬剤師は、転職市場でも強みを持つ人材になります。
- 「法律に基づいた労務管理に強い薬剤師」
- 「チーム全体の働き方を改善できる人材」
- 「自分と家庭を大切にしながら成果を出せる薬剤師」
これは単に“いい人材”というだけでなく、今後の薬剤師需要の変化にも適応できる人材像です。
✅まとめると、労基法を知ることで――
- 無理な働き方を拒否できる「盾」になる
- 育休取得をスムーズにする「根拠」になる
- 職場環境を変え、転職市場での評価も上がる
つまり、男性薬剤師が自分の人生を主体的にデザインするための最強のツールが「労基法」なのです。
まとめと次の一歩
男性薬剤師が育休を取ることは、単なる個人の選択ではなく――
家庭を守ることや職場の文化を変えること、そして自分のキャリアを切り開く事にもつながるステップです。
そしてその道しるべになるのが「労基法」というルール。
これを知り、使いこなすことで、あなたの薬剤師人生はより豊かに、より長期的に輝くはずです。
「労基法を守る環境で働けているか?」
一度立ち止まって考えたときに、「今の職場では難しいかもしれない…」と感じる方もいるでしょう。
そんなときに頼れるのが 薬剤師専門の転職サービス です。
- 労基法を遵守しているかどうか
- 育休や時短勤務の取得実績があるか
- 実際に働いている薬剤師の声
こうした情報は、ネットで求人票を見ているだけでは見えてこない部分です。転職エージェントを通すことで、内部事情や実際の制度運用状況まで知ることができます。
「今すぐ転職するつもりはない」という方でも、情報収集として登録しておくことは強い武器になります。
“法律を守る職場”で働けるかどうかは、これからのキャリアと家庭を守るために欠かせない視点だからです。
育休や労基法に理解のある職場で働きたい方へ
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