2025年6月15日、東京で開催された「薬経連フォーラム2025」において、厚生労働省の薬剤管理官・清原宏眞氏が登壇し、2026年度調剤報酬改定の見通しについて講演を行いました。テーマはズバリ「2026年調剤報酬改定に向けて」。
講演の中で清原氏は、薬局経営者や薬剤師にとって非常にインパクトのある一言を口にしました。
「はっきり言って、厳しい」
この発言は、調剤報酬改定の動向を注視している現場の薬剤師にとって、決して他人事ではありません。本記事では、清原氏の講演内容を踏まえつつ、薬剤師・薬局が今からどのような備えをしておくべきか、3つの視点で解説します。
1. 調剤報酬は“安泰”ではない:減少する外来患者と増え続ける薬局
清原氏はまず、全国的に「患者数・外来件数が減っている一方で、薬局数が増加している」現状に警鐘を鳴らしました。
つまり、パイ(患者数)は縮小しているのに、薬局というプレイヤーは増え続けているという構造です。結果として、薬局の淘汰は避けられず、「何をやっている薬局なのか?」を社会に対して明確に説明できなければ、報酬もポジションも守れないという時代になってきています。
特に、従来型の「処方箋を待つ」「調剤するだけ」といった受動的な薬局モデルは、今後ますます報酬面での評価が難しくなります。
✅ 対策のヒント
- 薬局のミッションや強みを明文化し、スタッフ全員が説明できるようにする
- 薬歴記載の質を上げることで、業務の可視化を強化する
- 単なる調剤からの脱却(服薬支援・在宅訪問・地域ケア会議など)を模索する
2. 在宅医療へのシフトは“避けられない流れ”
次に注目すべきは、「在宅対応」です。清原氏は今後、外来患者数のピークアウトとともに、「在宅医療のニーズがより一層高まる」と指摘しました。
実際、2024年度調剤報酬改定でも在宅分野の加算が手厚く評価されており、2026年度も引き続き「定着と充実」がキーワードとなる見通しです。
つまり、薬局が医療提供者としての役割を果たすには、在宅への対応が必須になってくるということです。
✅ 対策のヒント
- 在宅訪問件数を徐々に増やす準備(ケアマネ連携・居宅医との関係構築など)
- 在宅に対応できる人材を育成・確保(研修参加・薬剤師の役割分担など)
- 業務の仕組み化(移動管理、訪問記録、算定管理など)を早期に着手する
3. 「後発医薬品調剤体制加算」は本当に不要なのか?
後発医薬品の使用割合が9割を超えたことで、一部では「もう後発医薬品調剤体制加算は不要なのでは?」という声も出ています。
これに対して清原氏は、「不要になったわけではない」と明言。
たとえ使用率が高くても、薬局側には以下のような“見えにくい負担”が今も存在していると指摘しています。
- 多品目在庫管理によるコスト
- 保管スペースの確保
- 変更情報の収集と提供(特に患者説明)
- 供給不安へのリスク対応
こうした“努力の見える化”が評価されるべきだというのが、今回の主張でした。
✅ 対策のヒント
- 後発品管理の業務フローを棚卸しして見える化(外部への説明にも活用)
- **患者説明の記録強化(薬歴・帳票)**で情報提供の証拠を残す
- 加算維持に必要な届出や基準を再確認し、漏れなく対応
地域支援体制加算の取得状況にも言及:「加算2のモチベーションが低い」
さらに清原氏は、「加算1にとどまる薬局が多すぎる」という点を問題視しました。
理由はシンプルで、加算1と加算2の点数差がたった8点しかないためです。小規模薬局では加算2を目指すインセンティブが乏しく、取得率が低迷しているという構造です。
一方、大手チェーンなどは**加算4(加算3から+22点)**を目指す動きが顕著であり、今後は“地域支援体制”を明確に示す薬局しか生き残れない可能性が高まっています。
今後の論点:物価・人件費上昇と業態別の評価軸
最後に、清原氏は**「物価や賃金の上昇にも向き合わなければならない」と強調**しました。特に、薬局業態がドラッグストア型・チェーン型・個店型と大きく異なる収益構造を持っていることから、「どう評価していくかが課題」と語りました。
例えば同じ調剤基本料でも、
- ドラッグストア併設型の薬局ではOTCや食品販売も含めた総合収益で回っている
- 一方、個店型では純粋な調剤報酬が収入の柱である
このように、「公平な評価軸」のあり方が、2026年度改定では重要なテーマになってきそうです。
📝まとめ:2026年度改定で“生き残る薬局”とは?
2026年度調剤報酬改定は、「はっきり言って厳しい」と明言されるほど、抜本的な変革が予測されています。
この大きな波をどう乗り越えるか――それは薬局ごとの対応力にかかっています。
✔ 外来だけでなく「在宅対応」も担える体制づくり
✔ 調剤報酬だけに頼らない「薬局の価値の言語化」
✔ 小さくても「地域支援体制加算2」を目指す姿勢
✔ 「後発品加算」の評価根拠を見える化
時代に合わせて進化する薬局こそが、これからの地域医療を担っていく存在になるのです。
🔄「今の薬局で頑張る」だけが正解じゃない。環境を変えるという選択肢も
2026年度調剤報酬改定に向けて、薬局経営はますます厳しさを増していくと言われています。在宅への対応、地域支援体制加算の取得、加算維持のための届出や体制整備など、やるべきことは山積みです。
でも、**「今の職場でそれが本当に実現できるか?」**と問い直してみることも、プロとしての大事な視点です。
✅ 人手不足で在宅対応に取り組めない
✅ 体制や理念が古く、新しい加算に対応できる雰囲気がない
✅ 努力しても正当に評価されない環境
こうした状況が続くなら、「別の薬局で新しい挑戦をする」ことも、薬剤師としての成長を加速させる選択肢になります。
🧭転職で“次のキャリア”を考える薬剤師へ
今の職場での限界を感じている方は、薬剤師専門の転職サイトでまずは情報収集してみませんか?
▶️ ファルマスタッフ
大手調剤薬局グループ運営で、職場見学や在宅業務のある求人も豊富。キャリアアドバイザーの質が高く、在宅対応薬局を希望する方にもおすすめ。
▶️ ファゲット
独立志向のある薬剤師や、地域密着型の小規模薬局への転職に強み。「地域支援体制加算2以上を目指す薬局」へのマッチングにも定評あり。
▶️ ファルメイト
派遣・短期からの働き方改革をしたい方に。報酬改定の過渡期に“お試し勤務”で環境を見極めたい方にもおすすめです。
👉 無理に転職をすすめるのではなく、「選択肢を持つこと」が大切です。
少しでも「このままでいいのかな?」と思ったら、ぜひ一歩踏み出してみてください。
▼参考記事はこちら

コメント