薬学部の「出口問題」が深刻化しています。
文部科学省が2025年10月31日に公表した調査によると、
6年制薬学部の退学率が2割台に達する大学が10校にのぼり、
前年より2校増加しました。
「薬学部に入れば薬剤師になれる」――
そんな時代は、すでに過去のものとなりつつあります。
かつては薬剤師不足が社会問題とされ、多くの大学が新設されました。
しかし現在では、薬学部の乱立と学生の学力格差により、
「卒業できない」「国家試験に通らない」学生が増えています。
この記事では、最新データをもとに薬学部の現状を整理し、
薬剤師としてキャリアを築くために“今すぐできる行動”を考えます。
まず、退学率が高止まりする薬学部の実態を解説します。
退学率の上位大学(2025年度調査)です👇
| 大学名 | 退学率 |
|---|---|
| 千葉科学大学 | 39.3% |
| 姫路獨協大学 | 33.3% |
| 北陸大学 | 33.1% |
| 日本薬科大学 | 32.4% |
| 第一薬科大学 | 29.9% |
| 医療創生大学 | 29.8% |
| 大阪大谷大学 | 28.4% |
| 青森大学 | 27.8% |
| 奥羽大学 | 25.7% |
| 九州医療科学大学 | 25.6% |
全体の平均退学率は非公表ながら、
「2割台」=5人に1人が退学している大学が珍しくない状況です。
一方、最も退学率が低かったのは福岡大学の1.7%。
星薬科大学2.7%、安田女子大学3.6%、北里大学3.7%と続きます。
つまり、大学によって退学率には20倍近い差があるのです。
ストレート合格率にも鮮明な格差が出ています。
文科省が同時に公表した「2025年度薬剤師国家試験・ストレート合格率」の結果も衝撃的です。
| 合格率上位 | 合格率下位 |
|---|---|
| 北里大学 84.2% | 千葉科学大学 14.8% |
| 福岡大学 80.5% | 姫路獨協大学 20.0% |
| 慶應義塾大学 77.5% | 日本薬科大学 21.6% |
| 京都薬科大学 75.6% | 第一薬科大学 25.2% |
| 星薬科大学 73.8% | 大阪大谷大学 29.9% |
ストレート合格率50%未満の大学は23校(前年より1校増)。
つまり、全国の私立薬学部の約4割が「2人に1人も受からない」状態にあります。
なぜ退学率・不合格率が高いのか?
退学率や合格率の低下は単なる「学生の努力不足」ではありません。
背景には、薬学教育全体の構造的な問題が横たわっています。
まず第一に、私立薬学部の乱立と学力格差の拡大があります。
2006年の6年制移行以降、私立薬学部は急増。
偏差値40台前半〜50前後の大学が多数誕生しました。
結果、入試の難易度が大きく低下。
「とりあえず薬学部へ」と進学する層が増えた一方で、
入学後の学習量についていけず退学する学生が増えています。
薬学部のカリキュラムは理系最難関クラス。
有機化学・薬理・生化学・製剤・法規など膨大な知識を6年間で詰め込む必要があり、
“入るより出る方が難しい”のが現実です。
2つ目に、実習・国家試験対策の壁もあります。
5年次には病院・薬局実習(計22週間)、
6年次には卒業試験・国家試験対策が待ち受けています。
「CBT(Computer Based Testing)」や「OSCE(実技試験)」を突破しなければ
実習に進めないという壁もあり、途中で心が折れる学生も少なくありません。
さらに、近年の国家試験は出題傾向が実践的になり、
暗記だけでは通用しなくなりました。
その結果、ストレート合格率が6割を切る大学が増加しています。
そして3つ目に、経済的負担とモチベーションの低下があります。
私立薬学部の学費は6年間で1,000万~1,200万円。
一人暮らしなら生活費を含め1,500万円超の出費となります。
奨学金を借りて進学しても、退学すれば返済だけが残る。
親の支援が途絶えたり、進級の見通しが立たずに中退する学生も増えています。
現場の薬剤師たちは、この現状をどう見ているのでしょうか。
「昔より国家試験は難しくなった。単に“資格を取るだけ”では通用しない」
(40代・調剤薬局勤務)
「実習生を受け入れていても、“薬剤師になる覚悟”が足りない学生が多い」
(30代・病院薬剤師)
薬剤師免許を取ること自体がゴールではなく、
そこからどうキャリアを積み上げるかが問われる時代に入っています。
「退学率が高い=合格率も低い」負の相関関係もあります。
文科省の調査によれば、
退学率が高い大学ほどストレート合格率も低い傾向が続いています。
実際、退学率20%を超える大学でストレート合格率50%を上回ったのは
徳島文理大学のみ。
つまり、退学者を出してでも厳格に進級判定を行う大学は少数派で、
多くの大学では「進級はできたが、国家試験に通らない」という事態が常態化しています。
「卒業後」の方が難しい時代になってきています。
薬剤師になれば安泰の時代はもう終わりました。
仮に国家試験に合格しても、そこからが本当のスタートです。
薬剤師としてのキャリアは、
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 病院薬剤師
- 製薬企業(CRA・MR・学術)
などに分かれ、それぞれに年収・労働環境・将来性の差があります。
ここでもまた、「入って終わり」ではなく、
“どこで働くか”が人生を大きく左右する時代なのです。
たとえ免許を取っても、こんな声は珍しくありません。
- 「病院薬剤師になったけど給料が低い」
- 「調剤薬局で同じ作業ばかり。スキルアップできない」
- 「ドラッグストアでノルマがきつくて辞めたい」
国家資格を持っていても、キャリアの軌道修正をしなければ疲弊していく。
だからこそ、早い段階で“キャリア戦略”を立てることが大切なのです。
若手の薬剤師にとって有効な手段は、転職サイトを活用して“キャリア防衛”をすることです。
転職というと「辞める」イメージが強いですが、
本質は“自分の市場価値を知る”ことです。
転職エージェントとの面談では、
以下のような情報を無料で得ることができます👇
- 自分の年収が相場と比べてどうか
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ここで、おすすめ薬剤師転職サイト3選を紹介しておきます。
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- “薬剤師資格”はゴールではなくスタート。
- 薬学部選びも大事だが、“働き方選び”はもっと大事。
- 転職は逃げではなく、最適化。
- 情報を持つ薬剤師がキャリアで勝つ。
数字の裏側には“人生のリアル”があります。
退学率39%、ストレート合格率14%――
これらの数字の背景には、「夢を諦めた学生」と「疲弊する現場」があります。
しかし、薬剤師として働くあなたにはまだ無限の選択肢がある。
キャリアを諦めるのではなく、方向転換すればいいのです。
未来を変える第一歩は、“情報を取りに行くこと”。
薬剤師としての未来に少しでも不安を感じたら、
それは「チャンス」のサインです。
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