1. はじめに:なぜ薬剤師は資産運用を考えるべきか
薬剤師という職業は、医療系の中でも安定した収入と社会的信用を得やすい立場にあります。国家資格を持ち、病院や薬局、ドラッグストアなど幅広い就業先があるため、景気の波に左右されにくいのが特徴です。
しかし、近年の医療業界は決して安泰とはいえません。薬価改定や調剤報酬の引き下げ、ジェネリック普及による利益減少、人件費抑制の流れなど、薬剤師の給与水準に影響を及ぼす要因は増えています。
さらに、日本全体では少子高齢化と社会保障制度の不安が進行しています。公的年金だけで老後生活を賄うことは難しい時代になりつつあり、「今の収入が安定しているから大丈夫」という考えはリスクになります。
だからこそ、薬剤師は安定収入を武器に、早めに資産運用を始めることが重要です。
2. 薬剤師の強みと資産運用の相性
薬剤師は資産運用との相性が抜群です。理由は大きく3つあります。
- 安定した収入基盤
景気後退時でも需要が落ちにくく、失業リスクが低いため、長期的に投資を続けられる。 - 高い社会的信用
国家資格を持つことで信用力が高く、証券口座開設や投資枠拡大、住宅ローン審査なども有利。 - 数字とデータに慣れている
日常的に処方箋や薬効データを扱うため、数字に抵抗が少なく、投資分析にも適応しやすい。
このような背景から、薬剤師は他職種よりも計画的な長期投資を行いやすい立場にあります。
3. 株式投資の基礎知識
株式投資は「企業の株を買うことで、その企業のオーナーの一部になる」ことです。保有株式数に応じて、利益や配当金を受け取る権利が得られます。
3-1. 利益の種類
- キャピタルゲイン:株価の値上がりによる売却益
- インカムゲイン:配当金や株主優待から得られる利益
3-2. 投資スタイル
- 長期投資:10〜20年単位で保有し続け、複利効果を享受
- 短期売買:数日〜数か月単位で売買して利益を狙う(高リスク)
- 中期投資:数か月〜数年保有(テーマ株や成長株など)
薬剤師におすすめなのは長期投資。その理由は後述しますが、安定収入と相性が良く、心理的にも楽だからです。
4. 長期投資をすすめる理由
4-1. 複利効果が最大化する
長期投資では、得られた利益を再投資することで元本が増え、その元本からさらに利益が生まれます。これを複利効果といい、雪だるま式に資産が増える仕組みです。
例:月5万円を年利5%で20年間運用すると…
元本1,200万円 → 約2,045万円(+845万円)
短期売買ではこの複利効果を最大限活かせません。
4-2. 市場の短期変動に左右されない
株価は短期的には上下を繰り返しますが、長期的には世界経済の成長とともに上昇傾向を見せます。長期保有なら一時的な下落も気にならなくなります。
4-3. 本業に集中できる
短期売買は毎日の株価チェックや情報収集が必要で、薬剤師業務に支障をきたす恐れがあります。長期投資は一度仕組みを作れば、年1〜2回の見直しで十分です。
5. なぜ「自分の業界」に投資しない方がいいのか
薬剤師として製薬会社やドラッグストアに勤務していると、「自分のよく知っている業界だから安心」と考えて同業種の株を買いたくなるかもしれません。しかし、それは危険な集中投資です。
5-1. 給与と株価が同時に下がるリスク
同じ業界に依存すると、不況や規制強化があったときに給与と株価が同時に打撃を受けます。
5-2. 規制リスクが大きい
医薬品業界は薬価改定、特許切れ、ジェネリック参入など、国の政策や制度変更に左右されやすい業界です。
5-3. 情報バイアス
業界に詳しいがゆえに、「この会社は伸びるはず」という思い込みが生まれ、冷静な判断を妨げます。
6. 異業種投資のすすめ
自分の収入源と関係のない業界に投資することで、リスク分散が可能になります。
6-1. おすすめの異業種
- IT:マイクロソフト、Apple、Google
- 消費財:P&G、コカ・コーラ
- インフラ:東京電力、米国電力株
- 物流:UPS、FedEx
6-2. 世界株インデックス投資
全世界株式インデックスファンドを1本買うだけで、IT、金融、インフラ、消費財など幅広い業種に分散投資できます。
7. 薬剤師向けモデルポートフォリオ
7-1. 投資初心者向けポートフォリオ
目標:低リスクで世界全体に分散投資し、まずは「投資習慣」を作る
資産クラス | 割合 | 銘柄例 | 特徴 |
---|---|---|---|
全世界株式インデックス | 70% | eMAXIS Slim 全世界株式、楽天VT | 世界中の株式に自動分散。先進国+新興国もカバー |
債券ETF | 20% | AGG(米国債券ETF)、eMAXIS Slim 先進国債券 | 株の値動きと逆相関。株価下落時のクッション |
金(ゴールド) | 10% | GLD(米国ETF)、純金積立 | 有事の保険。株や債券と異なる値動き。世界情勢が不安定になると価値↑ |
ポイント
- 為替や景気変動リスクを分散
- 暴落時でも精神的に耐えやすい
- 毎月の積立額を決めて淡々と買う
7-2. 中級者向けポートフォリオ
目標:配当収入を増やしつつ、成長株も取り込む
資産クラス | 割合 | 銘柄例 | 特徴 |
---|---|---|---|
米国高配当ETF | 50% | VYM、HDV、SPYD | 年利3〜4%の配当。景気変動に強い企業多め |
全世界株式ETF | 30% | VT | 成長国も含めた分散投資 |
国内REIT | 20% | 日本ビルファンド、ジャパンリアルエステイト | 不動産収益からの分配金(年利3〜5%)が狙える |
ポイント
- 配当金で再投資 or 生活費補填が可能
- 株価の上下に一喜一憂せず「キャッシュフロー」に注目
- 医療・製薬セクターを避け、異業種をメインに構築
8. 実践ステップ(超具体版)
Step 1:証券口座を開設
- SBI証券、楽天証券のいずれかが王道
- NISA口座(非課税枠)も同時に申し込む
Step 2:生活防衛資金を確保
- 生活費の6〜12か月分を現金または普通預金でキープ
- 例:生活費20万円/月 → 最低120万円は現金で確保
Step 3:積立額を決める
- 目安は手取りの15〜20%
- 例:手取り30万円 → 月5〜6万円を投資に回す
Step 4:商品を選び自動積立設定
- 初心者なら「全世界株式インデックス」に一括設定
- 中級者ならETF+REIT+債券で配分設定
Step 5:年1回リバランス
- 例:全世界株式70%、債券20%、金10%が崩れたら元に戻す
- SBI証券なら「投信積立変更」だけで調整可能
これらのステップを1人でこなしていく自信が無ければ、スクールの活用がオススメ👍
1人で進めるよりも講師のアドバイスを聞きながら進めると成功確率もグンとアップしますよ👇

9. 成功事例
ケース1:30代女性 調剤薬局勤務
- 毎月5万円を全世界株式インデックスに20年間積立
- 年利5%で運用 → 元本1,200万円 → 最終2,045万円
- 本業の安定収入で20年間一度も積立を止めず達成
ケース2:40代男性 病院薬剤師
- ポートフォリオ:米国高配当ETF(VYM)50%、全世界株30%、REIT20%
- 毎月10万円を10年間積立+配当再投資
- 年利4%+配当年50万円 → 退職後は配当を生活費補填に使用予定
ケース3:50代女性 調剤薬局経営者
- 手元資金1,000万円を一括でVT+VYMに投資
- 年配当40万円+評価益
- 本業収入と配当金で老後資金を計画的に増やす
10. まとめ:守るべき5つのルール
- 買ったら基本的に売らない
- 自分の業界には投資しない
- 毎月一定額を自動積立
- 年1回見直し以外は放置
- 生活防衛資金を確保
薬剤師として日々患者さんの健康を守るあなたは、すでに「計画性」と「継続力」という投資成功に不可欠なスキルを持っています。
資産運用も同じく、短期的な変化に一喜一憂せず、淡々と積み上げる姿勢が何より大切です。
今日が、あなたの人生で一番若い日です。
10年後、20年後の自分や家族が「ありがとう」と言ってくれるよう、まずは小さな一歩を踏み出してみましょう。
買ったら慌てて売らず、長く保有し、自分の働く業界からは少し距離を置く――それだけで、資産はゆっくりと、しかし確実に育っていきます。
未来の安心は、今の行動から生まれます。
あなたの「今日の選択」が、明日の自由をつくります。

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