2025年10月20日、厚生労働省保険局医療課が発出した「疑義解釈資料の送付について（その30）」で、病院敷地内薬局に関する重要な追記が行われました。
対象は、総合入院体制加算および急性期充実体制加算の施設基準。これらの加算を算定する病院では、「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がないこと」が条件とされています。
この“特別な関係”という文言は、2024年度診療報酬改定以降、現場でたびたび議論の的となっていました。
「建物を共有している場合はどうなのか？」
「敷地内にある診療所と薬局の関係は“特別”とみなされるのか？」
――そんな現場からの疑問に、今回の疑義解釈が明確な線を引いた形です。
具体的な追記内容は以下の通りです。
ただし、総合入院体制加算及び急性期充実体制加算の施設基準においては、
病院が特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係があれば、
当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合でも、
「特定の保険薬局との間で不動産取引等その他の特別な関係がない」には該当しない。
つまり、「薬局のある建物に診療所があればセーフ」ではなく、経済的関係があればアウトということ。
建物の構造や位置よりも、「経済的・契約的な結びつき」が判断基準となる――これが今回の追記の本質です。
なぜこのタイミングで追記されたのか？
厚労省の説明によると、「現場から多数の問い合わせがあったため」とのことです。
もともと、特別調剤基本料の疑義解釈には以下のような規定がありました。
「当該保険薬局の所在する建物内に診療所が所在している場合は、ここでいう『保険医療機関と不動産取引等その他の特別な関係を有している保険薬局』には該当しない。」
これを参照して、「病院でも同様では？」と解釈する向きが一部にありました。
しかし、病院加算の趣旨は“医療提供体制の独立性確保”であり、薬局との経済的関係はより厳しく見られるべきです。
そのため、今回の追記では「病院は別」と明記することで、線引きを明確化。
これはいわば「病院と薬局の関係をよりクリーンにしなさい」という国からのメッセージでもあります。
現場薬剤師への影響を考えてみましょう。どんな職場がリスクを抱えるのでしょうか？
制度改定の文章を見ると、「経営者・管理者に関係する話」と感じる薬剤師も多いでしょう。
しかし、実際には勤務薬剤師の働き方や将来の安定性にも直結する問題です。
以下のような職場に勤めている場合は、要注意です👇
- 病院の敷地内、または隣接地にある薬局
- 医療法人のグループ会社が運営する薬局
- 病院側から物件を借りて営業している薬局
- 病院からの紹介患者が売上の大部分を占める薬局
これらのケースでは、制度改定の影響を最も受けやすい立場にあります。
今後、病院側が加算を維持するために「関係性の見直し」を迫られる可能性があり、
最悪の場合、契約解除や閉局リスクすら考えられます。
特に若手薬剤師や子育て世代の薬剤師にとっては、
「職場の構造的リスク」は年収よりも重要な要素です。
どんなに待遇が良くても、制度変更で職場そのものが揺らぐ可能性があるからです。
私は、制度が変わるたびに“転職タイミング”が生まれると考えています。
薬剤師業界は、診療報酬改定や薬機法改正のたびに環境が揺れ動きます。
そのたびに、業界内で「転職のチャンス」と「リスク回避のタイミング」が同時に訪れるのです。
今回の追記もまさにその典型です。
病院系列薬局・敷地内薬局の経営が見直される流れの中で、
今後は以下のような薬局が注目される可能性があります。
- 独立採算型で地域医療連携を重視する薬局
- 在宅医療・居宅訪問を強化している薬局
- 医療DX（電子処方箋・オンライン服薬指導）に積極的な薬局
- ドラッグストア併設型でセルフメディケーションを推進する薬局
これらは、病院の加算や建物関係に依存しない独立したビジネスモデルを持つ職場です。
制度変更に左右されにくく、安定して長く働ける傾向があります。
ここで、敷地内薬局で働く現場薬剤師の声を紹介します。
実際に敷地内薬局勤務の薬剤師からは、以下のような声が上がっています。
「病院との契約更新時に、条件が急に変わった」
「建物賃貸の関係で“独立性”の説明を求められた」
「監査の時に病院との関係性を細かく聞かれた」
制度的には“グレーゾーン”であっても、
現場レベルでは常に監査・行政指導のリスクを抱えているのが実情です。
こうした環境に不安を感じ、
「今のうちに制度に左右されにくい職場に移りたい」
と考える薬剤師が増えているのも頷けます。
これからは有効なキャリア戦略として、“敷地外”薬局や地域密着型へ転職が挙げられます。
今回の追記によって、敷地内薬局の立場はより厳格に管理されます。
一方で、敷地外薬局や地域密着型薬局には追い風が吹いています。
1️⃣ 制度変更に強い職場構造
病院との関係に依存しないため、報酬改定の影響を受けにくい。
かかりつけ機能や在宅業務で安定的な収益が見込める。
2️⃣ 多様なキャリアを築ける
在宅医療・地域包括ケア・健康サポート薬局など、成長分野で経験を積める。
病院にいた薬剤師の臨床経験も活かしやすい。
3️⃣ 柔軟な働き方が可能
勤務時間の調整や時短勤務、在宅ワーク併用など、
ワークライフバランスを取りやすい職場が増えている。
以下に、薬剤師におすすめの転職サイトの比較（病院・調剤薬局向け）を載せておきます👇
| サイト名 | 特徴 | 向いている薬剤師 |
|---|---|---|
| ファルメイト | 派遣・短期・スポット対応に強く、柔軟な働き方が可能。時給換算で高収入も狙える。 | 子育て中・副業希望の薬剤師 |
| ファーマキャリア | コンサルタント1人が全工程を担当。条件交渉力に定評あり。 | 給与や勤務条件を細かく調整したい人 |
| ファゲット薬剤師 | 病院・企業・調剤・ドラッグストアまで幅広くカバー。サポートが丁寧。 | 初めての転職を安心して進めたい人 |
| アイリード（iLead） | 地域密着型で非公開求人が多く、Uターン・Iターンにも強い。 | 地方勤務希望者 |
| マイナビ薬剤師 | 大手ならではの情報量とサポート体制。満足度が高い。 | 首都圏・大都市圏で転職を考える人 |
今のように制度変更が続く時期は、「どの職場が安定しているか」を把握することが大切。
転職サイトのアドバイザーは、現場の経営状況や行政指導事例にも詳しいため、
“制度リスクの少ない職場”を提案してくれるという強みがあります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
制度が変わる今こそ、自分の働く場所を見直すチャンスです。
今回の疑義解釈追記は、
一見すると「一文の追加」に過ぎません。
しかしその背景には、
「医療と薬局の関係をより透明に保つ」という国の明確な意志があります。
今後、病院系列薬局・敷地内薬局はますます厳しい監視対象となり、
独立性を確保できない職場は淘汰されていく可能性があります。
だからこそ、薬剤師は今こそ自分のキャリアを“制度リスク”から守る行動を取るべきです。
転職は逃げではなく、リスクマネジメントの一環。
これからの10年を安心して働くために、
今こそ一度、自分の職場と向き合ってみてください。
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