2025年7月30日、首都圏で調剤薬局を展開するシティ・メディカル・ホールディングス株式会社(以下CMH)と関連会社3社が、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、同日中に保全管理命令を受けました。
この報道は、調剤薬局業界だけでなく、薬剤師・医療関係者・投資家にとっても非常に大きなニュースとなっています。本記事では、その概要と背景、そして今後の展望について詳しく解説します。
会社更生法とは?再建型法的整理の基礎知識
「会社更生法」とは、倒産した企業の財産を清算するのではなく、事業を継続させながら再建を目指す法的手続きです。
ポイント
- 負債の整理や返済計画を立て直すことが可能
- 事業継続により従業員の雇用も守られやすい
- 経営権は保全管理人が管理
CMHの場合も、営業中の調剤薬局店舗はすべて通常通り営業継続しており、利用者や薬剤師への即時的な影響はないと見られます。
なぜ倒産?グループ内の資金トラブルと成長戦略の綻び
2020年に設立されたCMHは、急速な拡大路線を歩み、2020年5月期には売上高22億円超を達成していました。調剤薬局「薬局コア・ファーマシー」「富士薬局」など、首都圏を中心に21店舗を展開していました。
しかし…
問題の核心
- グループ内の資金繰りの悪化
- 金融機関への返済リスケを要請する状態に
- 根本的な財務体質の弱さと経営統合の未熟さ
成長を急ぎすぎたことによる資金ショートが、今回の会社更生申請の主因と考えられます。
スポンサー候補「株式会社ウィーズ」とは? 再建のキーマン
現時点で、CMHは大阪府茨木市の株式会社ウィーズを暫定的スポンサーとして選定。資金繰りの維持と必要な支援を得ることで、再建を進めています。
ウィーズとは?
- 全国に調剤薬局を展開する中堅企業
- 再生支援の経験も豊富
- 教育制度や地域密着型経営に定評あり
CMHにとってウィーズは、「資金提供者」であると同時に、「経営再建の指南役」として機能する存在となるでしょう。
現場薬剤師への影響は?雇用・業務・転職市場に注目
「倒産=職を失う」と直感的に思われがちですが、会社更生法による再建型整理では、雇用維持が最優先課題となるケースが多いです。
現時点での影響
- 調剤薬局の店舗はすべて通常営業中
- 処方箋の受付、医薬品供給も継続
- 薬剤師の給与支払いに関する不透明感はやや残る
不安を感じた薬剤師が転職活動を始める可能性も高いため、今後の求人市場への影響も要注目です。
関連会社の倒産状況と債務額まとめ
会社更生法を申請したのは、以下の4社。グループ合計で約30億円の負債を抱えていると報じられています。
会社名 | 設立年 | 所在地 | 負債額 |
---|---|---|---|
シティ・メディカル・ホールディングス(株) | 2020年 | 東京都文京区 | 約6.5億円 |
シー・シー・コア・ファーマシー(株) | 1996年 | 東京都文京区 | 約18.6億円 |
コア・ファーマシー(株) | 1996年 | 埼玉県戸田市 | 約2.4億円 |
(株)コンフィアンス | 2011年 | 茨城県日立市 | 約2.7億円 |
今後のスポンサー選定や債権者説明会など、注目すべき動きが続くでしょう。
調剤薬局業界全体への影響──地方中小薬局も他人事ではない
この倒産劇は、業界構造の脆さをあらためて露呈するものでもあります。
背景要因
- 医療費抑制政策による報酬改定の影響
- 地域密着型薬局の過当競争
- M&Aによる再編圧力の高まり
特に、独立系薬局や小規模チェーンにとっては「明日は我が身」といえる状況かもしれません。
今後の展望と薬剤師が取るべき行動
今後の注目ポイント
- 最終的なスポンサー企業の決定
- 従業員の処遇と雇用維持の方針
- 医薬品供給や処方箋応需体制の継続可否
薬剤師や薬局関係者としては、以下の対応が重要です:
✅ 情報収集を怠らない
✅ 雇用が不安な場合は早めに転職サイトに登録
✅ 地域の医療機関と連携し、患者への混乱を最小限に
倒産・経営不安を機に転職した薬剤師たちのリアル成功例【3選】
「うちは大丈夫」と思っていた薬局が、突然の倒産。経営不安が一気に現実のものになることは、決して他人事ではありません。ここでは、実際に“会社の経営危機”をきっかけに転職し、キャリアの幅を広げた薬剤師の事例を3つご紹介します。
◆成功例①:地域密着薬局から大手ドラッグストアへ転職(年収+100万円)
佐藤直樹さん(仮名)/32歳/埼玉県・調剤薬局勤務 → ドラッグストア調剤部門へ
佐藤さんは、地元で20年以上続く家族経営の調剤薬局に勤務していました。しかし、コロナ禍以降、経営が悪化。2024年には給与遅配が発生し、店舗の閉鎖も検討されるように。
「『患者さんのために』という理念は素晴らしかったけれど、経営の実態はガタガタでした。家族経営で内部統制も弱く、長く続けるのは難しいと感じました。」
思い切って転職サイトに登録し、2か月後に大手ドラッグストア(調剤併設)へ転職成功。
現在は、安定した月給+物販インセンティブもあり、年収ベースで100万円のアップを実現。
「もっと早く動いていればと後悔すらしました。研修制度や福利厚生も整っていて、薬剤師として“守られている感覚”があります。」
◆成功例②:M&Aで急な体制変更により退職→在宅医療を重視する薬局へ
高橋ゆかりさん(仮名)/37歳/東京23区・チェーン薬局 → 在宅特化型薬局へ
高橋さんは、都内の中規模薬局チェーンに10年以上勤務。ところが、外資系企業に買収され、急な人事異動と評価制度の変更が実施されました。
「子育て中だったので、“急に明日から隣県の店舗へ”という内示に不安しかありませんでした。」
その後、調剤薬局特化の転職エージェントに相談。自宅近くで在宅医療を軸にした新興薬局を紹介され、即決。
現在は、週4勤務で家庭と両立しながら、ケアマネや訪問看護ステーションとの連携を楽しんでいるとのこと。
「自分の裁量で働けることが何よりの安心。売上ノルマもない環境で、本当に患者さんと向き合える日々です。」
◆成功例③:倒産後に異業種転職!製薬企業の安全性情報(PV)部門へ
田村健一さん(仮名)/40歳/神奈川県・調剤薬局 → 製薬企業・PV担当へ
田村さんは、勤務先の薬局グループが事実上倒産し、会社更生法が適用されたことをきっかけに転職を決意。
「“薬剤師だから薬局勤務”という思い込みを捨てて、業界の広さを見直しました。」
エージェントのアドバイスで、製薬企業の安全性情報部門(Pharmacovigilance)にチャレンジ。
これまでの調剤経験が「市販後調査の視点」として評価され、転職成功。
「研修で一から学び直しましたが、“40代で初のデスクワーク”という挑戦も悪くなかった。土日休み・残業なしで、家族と過ごす時間が増えました。」
まとめ:会社の信用は「永遠」ではない。今すぐ転職活動の“種”をまこう
今回のシティ・メディカル・ホールディングスの倒産は、調剤薬局に勤めるすべての薬剤師にとって警鐘といえます。
✅ 安定して見える会社も、わずか数年で崩れることがある
✅ 今の職場に「なんとなくの違和感」があるなら、行動は早めが吉
✅ 薬剤師の転職市場は活況。情報を持つことが最大の防御力
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「会社の再建を信じる」のも大切ですが、“備えながら信じる”のが本当のリスクマネジメントです。
おわりに:転職を検討する薬剤師へ
このような事例は、個人としても将来のリスクに備える良いきっかけです。
特に「経営の不安定な薬局で働いている」「店舗異動が激しい」などの状況に心当たりがある方は、転職も視野に入れるべき時期かもしれません。
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