「残業が多いのに残業代が出ない」
「有給を使いたいけど毎回却下される」――

そんな経験はありませんか?
薬剤師の職場は医療・ドラッグストア・製薬など多様ですが、意外と労働基準法(労基法)の知識が浸透していません。
それもそのはずで、薬剤師等の医療系職種は学生時代に基本的に医学薬学に特化した知識しか勉強しないからです。
自ら学ぶ場合を除いて、労基法を知らずに搾取されてしまっているパターンが少なくありません。
労基法は、労働者の最低限の権利を守るための法律です。
知らなければ損するだけでなく、ブラック職場で消耗し続けるリスクもあります。
今回は、薬剤師が押さえておくべき労基法のポイントを5つに絞って解説します。
最後には、労基法を守る職場へ転職するためのチェックリストも紹介します。
1. 残業時間の上限と36協定

労基法では、原則として1日8時間・週40時間を超えて働かせることはできません。
これを超える場合は、36(サブロク)協定を締結し、労基署に届け出る必要があります。
- 残業時間の上限(2019年4月施行の改正労基法)
- 月45時間まで(原則)
- 年360時間まで(原則)
- 特別条項を使っても「年720時間以内」「複数月平均80時間以内」「月100時間未満」
ですが、これを知らない薬剤師は知らず知らずのうちに違法な職場に染まっていってしまいます。
❌薬剤師職場でありがちな違反❌
- 「繁忙期だから」と月80〜100時間残業させる
- そもそも36協定自体が未締結
- 管理薬剤師に残業代を出さない(※名ばかり管理職問題)
⭕対策⭕
- 自分の職場に36協定があるか確認⇒労働契約書チェック👌
- 勤務時間は打刻・メモ・写真で証拠化⇒手書きのメモでもOK👌
- 上限を超える場合は労基署相談も視野に⇒相談窓口は👇
2. 年次有給休暇の取得義務(5日取得ルール)

2019年4月から、年10日以上の有給が付与される労働者には、年5日の取得が義務化されました。
これは「本人が申請しなくても、会社が取らせなければならない」というルールです。
個人的には年5日では少ないと思います。労働者の権利ですので、しっかり働いているのならしっかり有給は取得しましょう👍(ちなみに私は直近1年で有給20日取得しました☺)
❌薬剤師現場で多い違反例❌
- 「有給は閑散期まで取れない」
- 「人手不足だからダメ」
- 「有給は全部買い取り」(例外除く)
⭕対策⭕
- ”強い気持ちで”有給を申請する
- もし有給が取れないならば記録を残し、交渉時に提示
- 時季変更権(下の引用参照)には注意
「時季変更権」とは、労働者が申請した有給休暇の取得時季(時期)を、使用者側の都合によって変更する権利です。
時季変更権の行使は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限って認められています。具体的には、以下のような場合に時季変更権の行使が認められます。
・代替人員を確保できない場合
・同じ時期に有給休暇の取得希望者が重なった場合
・本人の参加が欠かせない業務がある場合
・有給休暇が長期間にわたる場合
などこれに対して、時季変更の理由が漠然としている場合や、有給休暇の取得時季が退職直前である場合などには、時季変更権の行使は認められません。
https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/jikihenkoken/#:~:text=%E3%80%8C%E6%99%82%E5%AD%A3%E5%A4%89%E6%9B%B4%E6%A8%A9%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%A6%E8%AA%8D%E3%82%81%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
3. 休憩時間のルール(6時間・8時間の壁)

労基法では勤務時間に応じて休憩時間の長さが決まっています。
- 6時間超〜8時間以内:45分以上
- 8時間超:1時間以上
🔺よくある薬局のグレー🔺
- 閉店時間中も電話当番をしている → 実質休憩にならない
- 調剤室で待機 → 休憩ではなく労働時間
- 休憩時間に店舗(上司)からの呼び出しがある
⭕対策⭕
- 休憩時間は労働から完全に解放される必要があることを認識しておく
- 呼び出しがあるなら労働時間としてカウント
- 休憩削減は時間外労働として計算できる
4. 深夜業(22時〜翌5時)の割増賃金

ドラッグストアや病院の夜勤薬剤師は、深夜割増賃金のルールを知っておく必要があります。
- 割増率:通常賃金の25%以上
- 残業と重なる場合は割増率の加算が必要
- 例:深夜残業 → 通常賃金+時間外25%+深夜25%=50%増!
✅確認しておくべきコト✅
- 「夜勤手当」に深夜割増が含まれていない
- 時給制パートで深夜分が通常時給と同じ
⭕対策⭕
- 就業規則で深夜割増の扱いを確認
- 手当名だけでなく計算方法も要チェック
5. 休日出勤と代休・振休の違い

休日出勤をした場合、労基法では以下のような扱いになります。
- 法定休日に出勤 → 35%以上の割増賃金
- 振替休日(前もって休日を移動) → 割増なし
- 代休(後日休ませる) → 割増は必要
✅確認しておくべきコト✅
- 「代休を取ったから休日手当なし」→ 実は違法のケースあり
- 祝日は法定休日ではない(就業規則次第)
⭕対策⭕
- どの日が法定休日かを確認⇒基本、日曜日で認識しておくと◎
- 振替と代休の違いを理解しておく
- 出勤日と代休日を記録に残す
労基法違反がある職場で働き続けるリスク
労基法違反のある職場で働き続けることは、心身の摩耗に繋がります。
気が付いた時にはうつ病などが発症し、手遅れとなってしまうこともあり得ます。
最悪の場合、過労死ラインを超える働き方をしていることも…💦
また、薬剤師は生涯研鑽が大切な職種ですが、勉強や研修に充てる時間も少なくなり、キャリアアップの機会も奪われてしまいます。
たかが労基法違反と軽く見ず、派生しうるリスクを頭に入れておきましょう。
労基法を守る職場の見分け方
労基法を違反している可能性のある職場の見分け方としてまず大切なことは労働契約書を確認することです。
36協定や就業規則が開示されているかを確認しましょう📝
また、職場のホームページや求人票などに記載されている有給取得率も要チェック。
勤怠管理も重要です。タイムカードやICで正確に管理されているかも確認しておくと◎です。
ネットの口コミも意外と信ぴょう性が高い場合もあるので、調べられるなら見ておきましょう👇

まとめ
労基法は「守ってくれたらラッキー」なルールではなく、最低限守られるべき基準です。
特に薬剤師業界は「人手不足」を理由に、労基法の軽視が起こりやすい構造です。
もし現在の職場が明らかに違法状態であれば、労基署相談 or 転職という選択肢を早めに検討しましょう。
労基法を守る職場で働くことは、長期的な健康・収入・キャリアのために不可欠です。
💡 ここまで読んで下さった方に向けて次の一歩
- 自分の職場の36協定・有給取得状況を確認
- 不安があれば労働基準監督署へ相談
- 労基法遵守の求人を探すなら👇

コメント