- はじめに:ドラッグストア転職の裏側、見えていますか?
- 第1章:調剤スキルが停滞・陳腐化しやすい― ドラッグストア勤務でキャリアの“核”を失わないために ―
- 第2章:ドラッグストア特有の“店舗運営業務”が増える― 薬剤師なのに“店長代理”?業務の変質とそのリアル ―
- 第3章:キャリアの専門性が薄くなる恐れ― 薬剤師として“市場価値”を落とさないために ―
- 第4章:調剤スキルが停滞・低下する―「使わないスキルは確実に衰える」という事実 ―
- 第5章:将来的なキャリアの幅が狭くなる―「選ばれる薬剤師」になれないリスク ―
- まとめ:ドラッグストア転職は“条件面”だけで選ばない
はじめに:ドラッグストア転職の裏側、見えていますか?
「年収が上がるらしい」「残業が少なそう」「接客が楽しそう」——こうした期待を抱いて、調剤薬局や病院からドラッグストアに転職する薬剤師が増えています。実際、ドラッグストアは薬剤師の転職先として人気があり、求人も豊富。特に地方や都市部では、好条件の求人を見かけることも少なくありません。
しかし、そうした“メリット”の裏に、見落とされがちなデメリットや落とし穴が潜んでいることも事実です。
この記事では、現場で働く薬剤師のリアルな声をもとに、「ドラッグストアに転職する際のデメリット5選」を徹底的に解説していきます。
第1章:調剤スキルが停滞・陳腐化しやすい― ドラッグストア勤務でキャリアの“核”を失わないために ―
1.1|調剤スキルの喪失は“薬剤師としての信用”を揺るがす
薬剤師にとって調剤スキルは、職能の核であり「信用の源泉」です。処方箋を正確に読み取り、薬学的な観点から疑義照会を行い、患者にわかりやすく服薬指導する。これは医療人として、また専門職としての薬剤師が世間から求められている最も重要な役割です。
しかしドラッグストアに転職すると、この「調剤業務」が激減、あるいは一切なくなるケースが少なくありません。調剤併設店であっても、実態としては「名ばかり調剤」になっていることすらあります。
1.2|“名ばかり調剤”の実態:処方箋枚数20枚未満の現場
例えば、調剤併設型ドラッグストアのA店。
一見すると「処方箋対応も可能な薬局」として機能しているように見えますが、実態は以下のようなものです。
- 処方箋枚数は1日あたり15〜20枚
- 近隣のクリニックが休診ならゼロに近い
- 薬歴記載は「簡易」形式が推奨される
- OTCとの売上比率は9:1
このような環境で働くと、薬歴の書き方も「患者背景に触れない形式」に偏りがちで、薬学的介入のチャンスが極端に減ることになります。
また、調剤業務は主にパート薬剤師が担当し、正社員はOTCや店舗管理に回されることも多く、フルタイムで働いていても調剤に関与できないという構造も珍しくありません。
1.3|「今はいい」が、数年後に効いてくる“スキルブランク”
多くの薬剤師は転職時に、「年収」「勤務地」「休日日数」といった条件に意識が集中します。しかし、調剤スキルの停滞がもたらす影響は、数年後にじわじわと効いてくるものです。
例:再転職時に響くポイント
- 「最後に処方箋を触ったのはいつですか?」
- 「最近、どんな疑義照会をしましたか?」
- 「在宅医療の経験はありますか?」
- 「特定の疾患に特化した服薬指導は?」
こうした質問に「もう3年以上やっていません」としか答えられないと、即戦力として見なされないリスクが高まります。
1.4|転職後に「スキル不安」を感じる瞬間とは?
実際にドラッグストアに転職した薬剤師からは、以下のような声がよく聞かれます。
- 「簡単な風邪薬の相談はできるけど、複雑な薬物相互作用は不安」
- 「服薬指導で『この薬はどうですか?』と聞かれても、ピンとこない」
- 「最新のガイドラインに触れる機会がないから、自信がなくなる」
- 「いざ調剤薬局に戻ろうとしたら、求人が書類選考で落とされた」
これらは全て、「スキルブランク」に起因する現実的な問題です。
特に、多剤併用・高齢者医療・在宅・緩和ケアなどの専門性を要する分野では致命的となることもあります。
1.5|「OTCがメイン」の働き方は悪なのか?
誤解のないように伝えたいのは、OTC販売が悪いわけではないということです。むしろ、第一類医薬品の選定、セルフメディケーションの促進、生活習慣改善のアドバイスなど、OTC分野にも高い専門性が必要です。
ただし、問題は以下の2点です:
- OTCスキルだけでは転職市場で差別化しづらい
- 調剤とOTCの“両立”が難しい店舗構造が多い
そのため、どちらかに偏ると、「薬剤師としての職能のバランス」が崩れやすくなります。
これが「陳腐化」の原因です。
1.6|知識の“更新頻度”が激減する環境
調剤現場にいると、医師や看護師、他の薬剤師とのコミュニケーション、処方内容のトレンド、疑義照会のやりとり、ガイドライン更新などを通じて、知識が自動的にアップデートされていきます。
一方で、ドラッグストア勤務ではその“更新ルート”が激減します。
- 日常業務での情報刺激が減る
- 業務マニュアルが旧態依然
- 教育研修が全社員一律で、専門性が浅い
これにより、「知らず知らずのうちに知識が古くなる」「最新の用量・用法に疎くなる」といった現象が起こります。
1.7|“調剤に戻れない”自分を作らないために
スキルの陳腐化を防ぐ具体的な対策:
✅ 1. 月1回は社外の勉強会・セミナーに参加する
日本薬剤師研修センターの集合研修やWeb単位取得を継続的に行い、最低限の臨床的勘をキープしましょう。
✅ 2. 調剤併設店舗の中でも「処方箋枚数の多い店」を希望
異動希望を出す際、ただ「調剤あり」ではなく「●●枚以上/月の調剤業務がある店舗」を条件に加えると精度が上がります。
✅ 3. 休日に症例ベースの学習をルーチン化
・今日の治療薬
・治療ガイドライン202●
・レジデントノートや薬剤師のための症例集 などで、自分だけの勉強サイクルを作るのが効果的です。
✅ 4. 3〜5年後の再転職も“視野に入れた”働き方を
「ドラッグストア→一生」ではなく、次のステップへ進むための通過点としての利用もアリです。そのためには“スキル維持”が必須となります。
1.8|まとめ:スキルの“防錆”は、自分でしかできない
調剤スキルの喪失は、年収や勤務地の条件だけでは補えない「無形資産」の喪失に繋がります。
これは、働く上で最も恐れるべき“見えないデメリット”です。
しかし逆に言えば——
自分で意識して行動すれば、「調剤もOTCもできる強い薬剤師」になることは可能です。
選んだ職場に不満を持つよりも、自分のスキルを育て続ける視点を持てるか。
その分岐点が「ドラッグストア転職時」だと言えるのかもしれません。
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第2章:ドラッグストア特有の“店舗運営業務”が増える― 薬剤師なのに“店長代理”?業務の変質とそのリアル ―
2.1|「薬剤師=医療人」の意識が変わる瞬間
調剤薬局や病院からドラッグストアに転職した薬剤師が最初に戸惑うのは、医療職からサービス職へと軸足がシフトする瞬間です。
調剤薬局や病院では…
- 処方箋の鑑査・調剤・服薬指導
- 医師との疑義照会
- 薬歴の作成と管理
- 地域連携や在宅訪問、病棟業務
といった“医療従事者”としての業務が明確に設定されていました。
一方、ドラッグストアに入社すると、こうした業務が一部残る場合もありますが、以下のような“店舗運営業務”が主軸になっていきます。
2.2|薬剤師の“非薬剤師的業務”とは?
具体的に、ドラッグストアで薬剤師が担う店舗業務にはどんなものがあるのでしょうか。よくある業務を以下に挙げます。
✅ 売場の品出し・棚替え・発注
OTC売場や食品コーナーなどの棚を補充したり、季節ごとの売場レイアウトを考えたりする作業。
✅ 発注・在庫管理
医薬品だけでなく、飲料・日用品・お菓子などのPOSデータを元に在庫補充や自動発注の設定をする。コスト意識も求められます。
✅ クレーム対応
「この商品がない」「店内放送がうるさい」など、お客様からの一般的な苦情や質問への対応を任されることもあります。
✅ アルバイト・パートの教育・シフト作成
新人スタッフへのレジ研修・接客マナー研修・品出し指導。中にはシフト作成や勤怠確認も任されるケースも。
✅ 売上目標の管理
本部から与えられた売上目標(○月は前年比120%)に対して、販促企画を立てたり、ポップを作成したりします。
2.3|「なんでこれが私の仕事?」と感じる瞬間
ドラッグストアに入った薬剤師の多くが、「え?これ薬剤師の仕事なの?」と感じる瞬間があります。
例)
- 売場の装飾準備で風船を膨らませていた
- お客様に「洗濯用洗剤、どれが一番落ちますか?」と聞かれた
- トイレの清掃チェック表に自分の名前が…
- レジ応援に駆り出され、会計ミスで怒られた
これらは、単なる例外ではありません。日常的な“業務の一部”として扱われることが多いのです。
2.4|「店長代理」や「店舗責任者」になる薬剤師
さらに、キャリアを重ねていくと、薬局長ではなく「副店長」や「店舗責任者」になるケースも増えていきます。
そのポジションになると、以下の業務が加わります:
- 損益計算書(P/L)の確認と月次報告
- 従業員の評価面談と査定
- 店舗全体の売上管理・ロス削減
- 本部との定期ミーティング参加
- 店舗内トラブルの初期対応と報告書作成
このように、「管理職=医療マネージャー」ではなく「販売責任者」になるのが、ドラッグストア特有のキャリア構造です。
2.5|「管理薬剤師」≠「薬局管理責任者」
誤解しがちですが、ドラッグストアにおける「管理薬剤師」と「店舗責任者」は別物です。
- 管理薬剤師は薬事法的な届け出責任者
- 店舗責任者(または副店長)は売上・スタッフ管理の会社としての責任者
つまり、「薬機法に基づく管理」と「店舗運営上の責任」は別々に存在しているわけです。
そのため、「薬剤師のキャリア」として積みたい経験と、「店舗業務」として求められる内容に乖離が生じることがあります。
2.6|業務の“軸”が変わることの怖さ
店舗運営業務は、確かにチームワークやビジネス視点を養える貴重な経験です。
しかし、以下のようなリスクも孕んでいます。
❌ スキルの評価軸が“医療”ではなく“売上”になる
例:
- 「第一類医薬品を何件販売したか」
- 「PB(プライベートブランド)商品の販売率」
- 「LINE会員数の伸び率」
医療的な介入数や指導内容ではなく、「数字」が主な評価対象になることで、医療職としてのモチベーションを失うこともあります。
❌ チームが“薬剤師中心”ではない
調剤薬局や病院の薬剤部では、薬剤師を中心に業務が回るのが常識でした。
しかしドラッグストアでは、店長やスーパーバイザーが「非薬剤師」であることが多く、薬剤師としての意見が通りにくい構造となっています。
2.7|「やりがい」はあるが、「専門性」との両立が難しい
店舗運営は、確かにやりがいのある業務です。
売上を伸ばす楽しさ、チームビルディング、目標達成の喜びなど、「医療職とは違う達成感」が得られます。
しかし、その一方で…
- 最新のガイドラインに触れる時間がない
- 薬歴が形骸化しがち
- 疑義照会の経験が減る
- 処方解析の感覚が鈍る
といった形で、薬剤師としての専門性を失うリスクが高くなるのも事実です。
2.8|“バランスの取れたキャリア”を築くために
店舗運営業務に携わりつつも、薬剤師としての専門性を損なわないための工夫は可能です。
✅ 1. 調剤対応が一定数ある店舗を選ぶ
面接時に「店舗の1日あたり処方箋枚数」を確認しましょう。
最低でも30枚/日以上ある店舗なら、調剤業務とのバランスが取れます。
✅ 2. 会社の人事評価項目を事前に確認
「売上指標しか評価されない」企業と、「薬剤師スキルも加味される」企業では、働き方の自由度がまったく異なります。
✅ 3. あえて“調剤薬局との掛け持ち”を選ぶ
週5勤務のうち、3日はドラッグストア、2日は派遣で調剤業務に入るといった“複業スタイル”も、スキル維持の選択肢です。
✅ 4. 転職時に“キャリアの最終目的地”を意識する
「10年後、どんな薬剤師でいたいか」を逆算し、そのために今“店舗運営”という経験が必要かを見極めましょう。
2.9|まとめ:“店舗運営”はプラスにもマイナスにもなる
ドラッグストアに転職すると、薬剤師という職業が、医療人であると同時に“商業人”でもあることを実感します。
この変化を「チャンス」として受け止め、スキルと両立できれば、他の薬剤師にはない強みを得ることも可能です。
逆に、店舗業務だけに飲まれれば、“薬剤師の肩書を持った売場責任者”に留まってしまうリスクもあります。
自分の軸は医療か、マネジメントか、それとも両方か?
答えが出ないまま働き続けることが、一番のリスクです。
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第3章:キャリアの専門性が薄くなる恐れ― 薬剤師として“市場価値”を落とさないために ―
3.1|「ドラッグストアの薬剤師」=専門職?
薬剤師がドラッグストアに転職すると、しばしば「専門性が薄くなった」と感じる瞬間に出会います。
調剤薬局や病院では、薬剤師の専門性は“医師との連携”や“処方解析”、“薬物治療の適正化”という形で発揮されていました。
一方、ドラッグストアの薬剤師業務は以下のように変わります:
- OTC販売の補助(薬選びの相談)
- 健康食品やサプリの提案
- 店舗業務(前章参照)
- 一部の調剤(規模による)
つまり、「薬学的知見を使う頻度が減る」のです。
3.2|なぜ専門性が薄れるのか?
医療職からサービス職への移行
ドラッグストアは「医療機関」ではなく「小売業」です。
そのため、患者との関係性も“顧客サービス”としての要素が強くなります。
服薬指導というよりは…
「この風邪薬、子どもでも飲めますか?」
「花粉症っぽいんですけど、おすすめあります?」
「口内炎って、ビタミンで治りますか?」
といったOTC相談や雑談ベースの対応が中心です。
これらも重要なスキルですが、「医師との連携」や「処方解析」といった高度な薬剤業務とは方向性が異なることは明白です。
3.3|調剤比率の低下=処方解析力の鈍化
多くのドラッグストアは調剤併設店舗ですが、処方箋の受付枚数はまちまちです。
例えば、店舗により差はあるものの、
- 調剤専門薬局:1日あたり処方箋60〜100枚
- ドラッグストア併設薬局:1日あたり10〜30枚
- 調剤なし:処方箋なし
この処方枚数の差は、臨床判断力・疑義照会の経験数に直結します。
調剤業務が少ないと:
- 服薬指導のスキルが衰える
- 処方傾向の読解力が低下する
- 疑義照会の機会が減る
- 薬歴記載のスピード・質が落ちる
結果的に、他施設へ転職した際に「即戦力として通用しにくくなる」という現象が起こります。
3.4|「スキルが陳腐化する」という現実
薬剤師の専門性は、“使わなければ退化する”という側面があります。
❌ 医療制度・薬価・ガイドラインの変化に乗り遅れる
調剤業務が少なくなると、医療制度の変化や薬剤ガイドラインに触れる機会も減少します。
結果的に:
- 特定薬剤の服薬指導が古い知識のまま
- 対物業務と対人業務の切り分けが不明瞭
- 「この加算、今も取れるんだっけ?」と不安になる
というように、“今の薬剤師像”との乖離が生まれてしまいます。
3.5|ドラッグストアでは評価されるが、他では通用しないスキル
ドラッグストアで重宝されるスキルには以下のようなものがあります:
- 売上管理やPOP作成能力
- OTC商品の知識と提案力
- チームリーダーとしての店舗運営能力
- パート・アルバイト指導力
これらは、医療職以外の能力としてはとても価値があります。
ただし注意点は、それが…
「病院・薬局など医療寄りの職場では評価されにくい」
ということです。
実際に転職活動をしたときに、履歴書の「ドラッグストアでの売上管理経験」が面接官に伝わらず、「薬学的な強みが伝えにくい」というケースも見られます。
3.6|“専門性の空洞化”が進んだ薬剤師の末路とは?
以下のような状況が続くと、専門性がさらに弱まっていきます:
- 調剤業務がないまま数年経過
- OTC相談もルーチン化している
- 店舗業務中心で、医療に触れる機会が激減
- 新薬の情報がアップデートされていない
- 他の薬剤師とのディスカッションもない
こうした環境で5年、10年働いてしまうと――
いざ転職しようとしても、「スキルの棚卸しができない」状態になります。
結果として:
- 望む職場で「即戦力扱い」されない
- 新人教育を受け直す必要が出てくる
- 給与が希望よりも下がってしまう
- 面接で「最近の医療トピック」に答えられず沈黙…
このような状況に陥ることも、決して稀ではありません。
3.7|“専門性”を保ち続けるためにできること
✅ 1. 調剤業務の比率が高い職場を選ぶ
転職時には「1日あたりの処方箋枚数」を聞くようにしましょう。
可能であれば、処方元の診療科も確認しておくと、扱う薬剤の幅がわかります。
✅ 2. 社外の勉強会や学会への参加を継続する
業務内で学ぶ機会が乏しい分、自発的に外部の知識を取り入れる努力が不可欠です。
✅ 3. OTC販売にも“薬学的根拠”を取り入れる
「なんとなく売る」のではなく、「この成分は○○系だから」と論理的な説明をセットにすることで、スキル低下を防げます。
✅ 4. 外部資格・認定を取得する
たとえば:
- 認定薬剤師制度(JPALS等)
- 抗菌薬適正使用支援薬剤師
- 健康サポート薬局対応研修
など、キャリア証明になる資格を積み上げることも一つの防御策です。
3.8|“選ばれる薬剤師”であり続けるために
薬剤師が1万人以上余っていると言われる時代。
今後のキャリアは「資格があるだけ」では成立しません。
では、どんな薬剤師が生き残るのでしょうか?
それは、「他者に代替されにくいスキル」を持った薬剤師です。
たとえば:
- 処方鑑査に強い
- 在宅医療・多職種連携に精通している
- 公演・勉強会で発信できる
- 店舗運営と医療を両方マネジメントできる
このような人物像を目指すためには、意識的に“専門性の貯金”をし続けることが欠かせません。
3.9|まとめ:“キャリアの専門性”は日々失われるもの
ドラッグストアは確かに働きやすく、やりがいもあります。
しかし、そこに甘んじすぎると――
気づいたときには、「医療職」としての自分が空洞になっていた。
という未来もあり得ます。
専門性は、努力しない限り“毎日少しずつ失われる”もの。
それに気づくのが早ければ早いほど、軌道修正はしやすい。
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第4章:調剤スキルが停滞・低下する―「使わないスキルは確実に衰える」という事実 ―
4.1|調剤スキルは“実務”によって磨かれる
薬剤師国家試験に合格した時点では、知識はあっても「調剤スキル」はまだ未熟です。
このスキルは、日々の実務の積み重ねによってのみ向上するものであり、以下のような要素を含みます:
- 錠数計算や粉薬の分包などの調剤技術
- 処方意図の読み取り、用法用量の確認
- 疑義照会の判断と実行
- 服薬指導スキル
- 薬歴記載とその記録の質
こういった“実務経験でしか養えない部分”が、ドラッグストアへの転職によって大きく影響を受ける可能性があるのです。
4.2|ドラッグストアで調剤経験が積みにくい理由
❶ 調剤部門の規模が小さい
多くのドラッグストアでは、調剤併設型であっても「調剤スペースは狭く」「処方箋枚数も少ない」という特徴があります。
例)
- 大手ドラッグストアA店:1日平均処方箋20枚
- 中小チェーンB店:週100枚未満
- 調剤専門薬局:1日50〜100枚
この差は圧倒的です。つまり、調剤の“場数”が極端に減ってしまうのです。
❷ 非薬剤師業務が多い
- 売場対応(レジ、商品補充)
- 生活用品の案内
- サプリや健康食品の説明
- 売上ノルマの管理
こうした業務に時間が取られ、「調剤業務に集中する」環境が整っていないことも多いです。
4.3|停滞・低下が起きるスキル一覧
ドラッグストア勤務で特に影響を受けやすい調剤スキルを以下に整理します:
スキル項目 | 停滞・低下の理由 | 影響内容 |
---|---|---|
疑義照会の判断力 | 医師とのやりとりが少ない | 処方意図の読み違いが増える |
多剤併用の薬歴記載力 | 簡単な処方が中心になる | 複雑なケースへの対応が不安定に |
服薬指導スキル | OTC販売が主軸になりがち | 患者ごとの対応にムラが出る |
副作用の早期発見力 | モニタリングの機会が少ない | 医療安全リスクが高まる |
在宅医療・対人業務力 | 店舗型で在宅経験が積みにくい | 訪問薬剤管理の視点が弱くなる |
4.4|「ミスをしにくい現場」=「成長しにくい現場」
ドラッグストアの調剤は、単純処方が多く、内容もルーチン化しやすい傾向があります。
その結果:
「何も考えずに薬を出して終わり」
という日々が続いてしまう危険性があります。
たとえば、以下のような「判断」をする場面が極端に減ってしまいます:
- この処方、腎機能は考慮されているか?
- 併用薬との相互作用は大丈夫か?
- 患者さんの背景を考えて、服薬アドバイスすべきか?
こうした“臨床的な頭の使い方”をする機会が減ると、スキルはあっという間に退化します。
4.5|転職市場で見られる「スキルブランク」
人材紹介会社や薬剤師向け転職サイトでは、「スキルのブランク」も評価に大きく影響します。
実際に、以下のようなケースが報告されています:
- ドラッグストア勤務5年→病院転職希望→「教育枠扱い」に
- 調剤ブースが無い店舗勤務→「調剤経験なし」と判断される
- 転職面接で「疑義照会の経験ありますか?」→言葉に詰まる
つまり、「何年働いたか」よりも「どんなスキルを維持してきたか」が重要になってくるのです。
4.6|調剤スキルの停滞が招く“キャリアの選択肢の狭まり”
調剤スキルが低下してしまうと、次のようなデメリットがあります:
- 病院・在宅系施設に再転職しづらくなる
- 管理薬剤師や指導薬剤師の道が遠のく
- スキルベースでの昇給・昇進が難しくなる
- キャリアの“専門職ルート”が断たれる
特に30代以降は「専門性を活かすポジション」へのシフトが重要になりますが、そこで調剤スキルが不足していると一気に不利になります。
4.7|スキル維持・成長のために今できること
✅ 1. 処方箋枚数が多い店舗へ異動希望を出す
チェーン内でも処方箋の多い店舗に異動するだけで、実務の幅が広がります。
✅ 2. OTC販売にも“調剤視点”を持ち込む
たとえば風邪薬を勧めるときに:
- 「この成分は○○との併用に注意が必要です」
- 「お薬手帳を拝見してもよろしいですか?」
といった一言を加えるだけで、実践的なスキル維持が可能になります。
✅ 3. 外部勉強会・学会に積極参加
日常業務で学べない分、休日や空き時間を活用して知識の更新を図りましょう。
✅ 4. 転職を視野に入れる
もし「スキルが失われていく危機感」が強いなら、早めに調剤中心の職場への転職を検討するのも選択肢の一つです。
4.8|“専門職としての軸”を自分の手で守る
薬剤師のキャリアは、「国家資格を取って終わり」ではありません。
むしろ、資格を取った後がスタートラインです。
使わないスキルは、確実に劣化する。
だからこそ、日々「実務で鍛える」環境に身を置くことが必要不可欠なのです。
4.9|まとめ:スキルを“育てるか、腐らせるか”は自分次第
ドラッグストア勤務が悪いわけではありません。
しかし、その中で調剤スキルをいかに維持・発展させるかを考えることは、専門職として極めて重要です。
「5年後、あなたの薬剤師スキルは今より高まっているか?それとも鈍っているか?」
この問いに、自信を持って「YES」と言える働き方を、今日から選びましょう。
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第5章:将来的なキャリアの幅が狭くなる―「選ばれる薬剤師」になれないリスク ―
5.1|薬剤師キャリアの本質は“選択肢の広さ”
薬剤師としてのキャリアは、「調剤業務」だけでは完結しません。
以下のように、多種多様な選択肢が用意されています。
- 調剤薬局(管理薬剤師・エリアマネージャー)
- 病院薬剤師(臨床薬剤師・認定取得)
- 在宅医療(訪問服薬指導)
- 製薬企業(DI・安全性・MR)
- 行政機関(保健所・厚労省)
- 研究職・教育職(大学・研究機関)
- 開業(薬局経営・独立支援)
この中から将来的に「自分に合った道」を選べることが、薬剤師の特権であり可能性なのです。
しかし――
ドラッグストアに長期間勤務すると、この“可能性”が次第に消えていきます。
5.2|なぜキャリアの幅が狭まるのか?
❶ 調剤業務の比率が低下する
→ 「調剤専門薬剤師」としての市場価値が下がる
調剤スキルや薬歴管理力が問われる職場(病院や在宅医療)においては、ドラッグストア経験が評価されにくくなります。
❷ 一般販売業務が中心になる
→ 「薬剤師以外でも代替可能」なポジションになりやすい
販売スキルや売上目標達成力などは、必ずしも薬剤師でなくても担える役割。
これに依存しすぎると、“資格者としての希少性”が薄れます。
❸ 認定・研修制度から遠ざかる
→ 専門認定薬剤師や研修認定薬剤師の取得が困難に
忙しさや店舗都合により、定期的な学習や研修の継続が難しくなり、キャリアの軸を育てられなくなります。
5.3|「選ばれる薬剤師」になるには?
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要素 | 内容例 | ドラッグストア勤務での維持難度 |
---|---|---|
専門性 | 糖尿病療養指導士、認定薬剤師、がん指導薬剤師等 | 高い |
柔軟性 | 在宅・外来・病棟・地域連携への対応力 | 中程度~高い |
実績 | 多職種連携、在宅医療の導入経験、マネジメント経験 | 高い |
これらの要素がないと、再び調剤薬局や病院薬剤師に戻ろうとしても
「あなたに頼みたい」という評価にはつながりません。
5.4|30代以降のキャリアに顕著な影響が出る
20代ではドラッグストア勤務も“現場経験”として評価される傾向があります。
しかし30代を超えてくると、転職先の見る目も変わります。
たとえば:
- 「あなたはどんな専門性を持っていますか?」
- 「これまでのキャリアの軸は何ですか?」
- 「その経験をどう次に活かせますか?」
といった質問に対し、明確な答えを持てない場合、
他の薬剤師との差別化が困難になります。
結果として、以下のような負のループに陥ります:
スキルが浅い → 良い転職先が見つからない → 給与が伸びない → さらなるスキルアップの機会も逃す
5.5|キャリアの幅を狭めた薬剤師の“リアルな声”
実際に、ドラッグストア勤務を続けた結果、
「転職がうまくいかない」「将来に不安を感じている」と話す薬剤師の声は少なくありません。
▼ Aさん(37歳・ドラッグストア10年勤務)
「転職エージェントに『病院は難しいかも』と言われてショックでした。
もっと早く気づいていれば、違ったキャリアを選べたかもしれません。」
▼ Bさん(32歳・地方の調剤併設ドラッグストア勤務)
「OTCの売上は順調。でも、いざ転職しようとすると“薬歴をまともに書いてこなかった”自分が浮き彫りに…」
このように、「スキルはなくても働けてしまう環境」ほど、長期的なリスクは大きいのです。
5.6|キャリアの広がりを失わないために、今できること
✅ 1. 定期的に“キャリアの棚卸し”をする
- 今の職場で得られているスキルは?
- 5年後にどんな薬剤師になっていたい?
- そのために何が足りない?
このような問いを“自分に投げかけ続ける”ことが重要です。
✅ 2. 社外でも使えるスキルを意識的に育てる
- 研修認定薬剤師の継続
- Webセミナーや学会への参加
- 在宅や病棟の体験・見学
ドラッグストアに勤務しながらでも、外の世界とつながる意識を持ちましょう。
✅ 3. 将来を見据えた“転職準備”を始める
- スキルが通用するうちに転職する
- “引き抜かれる存在”になるための実績を積む
- キャリアコンサルタントと面談し視野を広げる
5.7|「安定」は“惰性”の言い換えになり得る
ドラッグストアは給与が安定し、福利厚生も整っている職場が多いです。
そのため、何年も惰性で働き続けてしまう方が多いのも事実。
しかし、変化の早い医療・薬剤師業界においては、
「変化を拒む人材」=「淘汰されやすい人材」
になってしまいます。
5.8|キャリアは“点”ではなく“線”で考えるべき
単発的な仕事経験ではなく、「どう積み上げてきたか」のストーリーが重要です。
- 販売 → 調剤 → 在宅 → 管理薬剤師
- 調剤 → がん認定取得 → 病院薬剤師 → 外来化学療法室
- OTC販売 → フリーランス → 開業薬局経営
こうした“連続性のあるキャリア”を描ける人ほど、
市場価値が高まり、選択肢が広がっていきます。
5.9|まとめ:キャリアの自由度は「今」の積み重ねで決まる
薬剤師人生は長いですが、転職・スキルアップしやすい“柔軟な期間”は限られています。
「いつか動こう」では遅い。
「今、何を積み重ねるか」で未来は決まる。
キャリアの幅を自ら閉ざさないよう、今の環境に甘えすぎない意識を持ちましょう。
📈 今の環境でキャリアに不安を感じたら、未来に備える動きを始めてみましょう。
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まとめ:ドラッグストア転職は“条件面”だけで選ばない
ドラッグストアへの転職は、確かに年収や雇用安定性の面で魅力的です。ただし、調剤スキルの維持や、専門性、働き方の柔軟さを重視する人にとっては、向いていない環境も存在します。
自分に合った職場を見極めるポイント
- その店舗の処方箋枚数、OTC比率は?
- 管理薬剤師の役割範囲はどこまでか?
- 昇格や異動のルールは明確か?
- ライフスタイルとの両立はできそうか?
最後に:転職は“情報戦”です
自分に合ったドラッグストアを見つけるには、内部事情に詳しい転職エージェントの力を借りるのも1つの手です。求人票だけでは分からない「店舗の実情」を知ることができ、ミスマッチを避けやすくなります。
🔽 今の働き方に少しでも不安や違和感を感じたあなたへ
この記事でご紹介したように、ドラッグストアには確かに多くのメリットがありますが、見落とされがちなデメリットも存在します。
「今の職場は自分に合っているのか?」
「もっと心地よく働ける場所があるんじゃないか?」
そう感じたのなら、それは立派な行動のサインです。
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