「休憩時間も勤務に含まれるの?」
「着替えや引き継ぎは労働時間?」
薬剤師として働く上で、労働時間の正しいカウント方法を知らないと、大きな損につながります。
この記事では、労働基準法に基づき、薬剤師が知っておくべき労働時間の考え方をわかりやすく解説します。
労基法の知識は雇用主として働く人はもちろん、被雇用者として働く場合も自分の身を守るために必須の知識です。
一緒に、学んでいきましょう👍
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労働時間の基本ルール
労働基準法では、労働時間を以下のように定めています。
- 原則:1日8時間、週40時間以内
- 超過分:36協定を締結している場合に限り、時間外労働が可能
- 休憩時間:6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間が必要
つまり「働いた」とカウントされるかどうかが、残業代や休日手当の支払いに直結します。
薬剤師が注意すべき「労働時間に含まれるケース」

1. 清掃・環境整備
薬局内の掃除や棚卸し、ゴミ出しなど。
「簡単な作業だから勤務時間外で🙏」
とされることもありますが、業務指示の一環であれば労働時間です。
職場の清掃や環境が労働時間に含まれるかどうかは、「使用者(会社)の指揮命令下にあるかどうか」が大きな整備判断基準となります。
つまり「業務命令として行う掃除や環境整備」は、労働時間に含まれると考えて良いでしょう。
また、労働基準監督署の調査では現状を総合的に見て判断しますので、ルールや運用に不安があっても、具体的な状況ごとに専門家へ相談されるのが安心。
困ったときはまず「労働基準監督署(総合労働相談コーナー)」か「労働条件相談ほっとライン」に直接相談するのがおすすめです。
2. 引き継ぎ・日報作成
勤務時間終了後の患者情報(薬歴)や在庫状況等の引き継ぎ、日報入力は業務の一部。
外来業務が忙しいとこのような内部作業は業務である感覚がしなくなってくることもありますが、これらは労働時間にカウントされるべきです。
仕事の引き継ぎは、業務上必要な作業であり、暫定終了後でも会社や上司から指示されている場合は労働時間として扱われます。
日報の作成も業務の一部であり、会社・上司の指示に基づいて作成している場合は、その時間は労働時間です。
定時後や「タイムカードを押した後」でも、指示された中で作業していれば労働時間であり、残業代の対象ともなります。
「使用者(会社)の指揮命令下」であれば労働時間となり、1分単位で給与計算される対象です。
閉局後に薬歴を書いたり、ひどいケースだと店休日に薬歴を書きに行ったりするケースもありますが、これを当たり前にしてはいけません。
3. 開店準備・閉店作業
薬歴の立ち上げやレジ準備、片付け・清掃も業務です。
「準備だから残業じゃない」という主張は誤りで、残業代の対象となります。
開店作業や閉店作業は、日本の労働基準法上の「労働時間」に含まれます。
- 労働時間とは「使用者(会社・店主)の指揮命令下にある時間」を言います。つまり、実際の接客や販売業務だけでなく、制服への着替え・レジ締め・店内清掃・ゴミ出し・開店準備・閉店後の片付けなど、業務に必要な準備・片付けの時間にも労働時間に該当します。
- 開店ミーティング前や閉店後の勉強会なども、会社が義務付けていれば労働時間になります。休憩中に店長から電話がくる時間なども含まれます。
- 労働時間の記録については、シフト表ではなく、タイムカードやICカードなど客観的な記録が重要です。タイムカードは実際の勤務に合わせて打たれる必要があり、開店準備や閉店作業が終わるまでが労働時間です。
- 一時的に「開店前や閉店後は労働時間に含めない」とされていても、使用者の指示があって業務を行っている場合は、労働時間に算入されるべきとされています。
したがって、開店作業や閉店作業は会社から求められていれば、原則として労働時間に含まれ、残業代の対象となります。
よくあるシフトで、開局時間が10:00-19:00なのにシフトも10:00-19:00となってしまっているパターンです。
これでは、「開店・閉店作業はいつやるの?」となってしまいます。
このようなシフトが常態化しているようであれば、良い職場とは言えないかもしれません。
もし自分の職場に違和感を感じたら、他の職場を見てみることが有効な手段の1つとなります。
搾取される日を1日でも少なくするため、早目に行動することをオススメします。
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4. 勉強会・研修
会社主催で参加が義務付けられている勉強会は労働時間に含まれます。
ただし、任意の勉強会や自主参加のセミナーは対象外です。
ポイントをまとめてみましたので確認してみて下さい👇
労働時間に含まれるケース
- 会社や社長から参加を指示された場合:雇用主の指揮命令下で行われるため、労働時間に該当します。
- 業務時間内で実施される研修や勉強会:業務の遂行としてみなされ、労働時間に含まれます。
- 強制参加、または参加しないことで人事評価や業務に不利益が出る場合:実質的に参加が強制されている場合は労働時間になります。
- 研修後にやレポートなどの提出が義務付けられている場合:業務指示とみなされ、労働時間に含まれます。
- 業務と緊密な関係がある内容の場合(業務に必要な知識や技能習得など):業務上必要性が高い場合は、労働時間となります。
労働時間に含まれないケース
- 任意参加である場合:自由参加の研修・勉強会は労働時間として扱われません。 なお、表面上任意であっても、参加しないことで不利益がある場合は労働時間になる可能性があります。
- 業務と関係の軽い内容の勉強会・研修(例:業務に関係しない趣味や英会話講座など)は労働時間に含まれません。
- 会社から任意の指示がなく、業務終了後に自主的に参加する場合:完全に自主参加で、業務との関連・会社からの指示がなければ、労働時間には該当しません。
「指揮命令下かどうか」「強制・義務か任意か」「業務との関連性」「参加しないことで不利益があるか」などが主な判断基準です。
適切に運用できている職場であれば業務に必要性の高い研修であれば出勤扱いにしてくれます。
薬剤師などの医療職は自己研鑽を絶えず行い続けなければならない印象が強いですが、職場の指示であればそれは労働時間です。
適正な対価を請求したいところですね。
5. 呼び出し・待機時間
「オンコール待機」や、薬の急配に備えて薬局内で待つ時間は、
使用者の指揮命令下にあるため労働時間とされる場合があります。
呼び出しや待ち時間労働時間に該当するかどうかは、以下のような基準で判断されます。
- 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間。
- 自宅待機の場合は、実際に通話がなければ、基本的に労働時間には該当しません。
- 会社や事業所内での休憩や、外出に厳しい制限がある場合は、指揮命令下にあると判断され、休憩時間にも労働時間に含まれます。
- 病院内での宿直待機時間や、事業所での待機時間は労働時間と判定されるケースが多いです。
- 法的には、時間の取り扱いは個別具体的な事情や判例により異なるため、労働契約、規則的待機、慣行の内容も考慮されます。
ただし、通話がかかって実際に業務を行う時間は労働時間です。自宅で待機していても通話がなければ労働時間には含まれませんが、事業所内待機や場所の拘束が強い場合は待機時間も労働時間とされます。
最近の判例としてこのような事例があります。
大阪地裁R7.3.24
麻酔科医がクリニックから、就業時間外も、クリニックまたは自宅において待機し、呼出しの連絡があれば、その着信に遅滞なく気付き、必要に応じて直ちに駆け付け、麻酔科医として勤務する必要があったとして、この呼び出し待機時間も労働時間であると主張。約1億7000万円の割増賃金を請求した
https://nishikawa-lawyer.com/900/
→呼出し待機時間中に労働からの解放が保障されていたといえるか否かは、呼出しの頻度、呼び出された場合に求められる対応の迅速さの程度、待機時間中の行動の制約の程度等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。
この点、本件では、呼び出しの件数は月2、3回程度であり、まれとまではいえないが、頻繁とはいえない。
また、クリニックは、リスクの低い妊娠のみを取り扱う一次施設であり、無痛分娩は緊急性の高いものではなく、麻酔科医が麻酔を施行するまでには一定の時間的余裕があった。緊急帝王切開についても、多くの場合、麻酔科医は、正式な呼出しの連絡を受ける前の段階で、内診をした助産師から緊急帝王切開になるかもしれない旨の連絡を受けており、そのような連絡を受けてから正式な呼出しの連絡を受けてクリニックに出勤するまでには一定の時間的余裕があった。グレードAの緊急帝王切開については、母児の生命等に関わることから、30分以内の娩出を目指すことが求められていたものの、それ以外のグレードについては、そこまでの緊急性はなく、グレードAの緊急帝王切開であっても、産婦人科医又は麻酔科医のうち早くクリニックに到着した者が麻酔を施行する体制がとられており、必ずしも直ちにクリニックに出勤しなければならないわけではなかった。
さらに、医師は、自宅や外出先という私的な生活領域で待機し、その待機時間中も食事、入浴、睡眠をとるなど、比較的自由に過ごすことができたことが認められる。このことは、待機時間の労働時間性を否定するかなり大きな事情になる。
このような呼出しの頻度、呼び出された場合に求められる対応の迅速さの程度、待機時間中の行動に対する制約の程度等に照らせば、待機時間中の行動や待機場所に一定の制約があったことや、待機時間中にいつ呼出しの連絡があるか分からないという心理的負担があったと考えられることを踏まえても、待機時間中に労働からの解放が保障されていなかったとはいえない。待機時間は、労働時間には当たらないと判断。
薬局で言うと、オンコール携帯を持っているだけでは労働時間には該当しない可能性が高いです。
ただし、時間的な制限や場所の制限が強く、「電話に限ること」「特定の場所にいなければいけない」「飲酒禁止」などの厳しい指示がある場合は、すぐに休憩時間も労働時間とされる傾向があります。
電話がかかってきて実際に対応した時間は間違いなく労働時間です。
過去の裁判例や現場により判断されるため、契約書で「携帯を持っているだけは労働時間に含まれない」とたとえ一度でも拘束的であれば労働時間になる場合があります。
頻繁に呼び出される、業務対応により実質的に自由な時間制限されている場合は労働時間と判断されやすいです。
ご自身の場合はどうか、振り返ってみて下さい👍
労働時間をごまかされないための対策
- タイムカードや勤怠システムを記録として残す
- 実際の業務開始・終了時間をメモする
- 36協定の内容を確認する
- 不当な扱いを受けたら労基署に相談する
証拠を残しておくこと、第3者機関に相談すること
が有効な手段となります。
このような手段は使わないに越した事は無いですが、自分の身を守るための選択肢として知っておくと良いでしょう。
まとめ|正しい労働時間の理解が収入を守る
薬剤師の労働は、調剤や服薬指導以外にも多岐にわたります。
その中で「労働時間に含まれるのか曖昧な作業」が多く、サービス残業の温床になりがちです。
労働時間の正しいカウント方法を知ることで、
✅ 不払い残業を防ぐ
✅ 健康とワークライフバランスを守る
✅ 適正な労働環境を選ぶ判断材料になる
「知らなかった」で損をしないために、今の働き方を一度見直してみましょう。
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