2026年診療報酬改定が示した「本当のメッセージ」
2026年度診療報酬改定について、厚生労働省保険局医療課の清原薬剤管理官が語った言葉は、これまでの改定説明とは明らかに重みが違いました。
「立地依存型(門前・医療モール型)から脱却し、地域に根ざした対人業務へ転換してほしい」
この一文は、単なる制度の説明ではありません。
薬局経営モデルそのものに対する、方向転換の宣言です。
「患者のための薬局ビジョン」から10年が経過しました。
しかし、かかりつけ機能の普及は想定ほど進まず、処方箋の集中率はむしろ上昇している。
都市部への出店集中も止まらない。
理想と現実の乖離が広がったまま、ついに報酬で誘導する段階に入った――それが今回の改定です。
門前薬局等立地依存減算の意味
今回新設された「門前薬局等立地依存減算」は、過密地域に新規出店し、高い集中率を維持する薬局を対象としています。
東京23区や大阪市だけでなく、政令指定都市まで範囲が広がりました。
これは門前薬局を即座に否定する制度ではありません。
しかし、これまで立地によって守られてきた経営モデルに対し、「そのままでは評価しない」という明確なメッセージを出したことは間違いありません。
門前モデルは合理的でした。
処方箋枚数は安定し、業務は標準化しやすく、収益の見通しも立てやすい。経営としては効率的です。けれども、制度は今、「効率」よりも「機能」を重視する方向に舵を切っています。
急激に壊すのではなく、じわじわと構造を変える。今回の改定はその第一歩です。
1000点という強烈なシグナル
象徴的なのが、服用薬剤調整支援料2の1000点という設定です。
従来のかかりつけ薬剤師指導料を整理し、患者ごとの薬物療法の個別最適化を評価する仕組みに再設計されました。
1000点は、単なる点数ではありません。
「薬剤師にここまで期待している」という国からのメッセージです。
ただし、この評価はルーチン業務では届きません。患者背景を深く理解し、主治医に責任を持って提案し、治療方針の調整に関与する。そうした高度な介入が前提になります。
つまり制度は、「処方箋を正確にさばく薬剤師」から「治療に介入する薬剤師」への転換を求めているのです。
今の職場で、その経験は積めますか
ここで一度、冷静に考えてみてください。
今の職場で、医師に積極的に提案する文化はありますか。
対人業務に時間を割ける体制は整っていますか。
経営層は枚数重視から本気で方向転換しようとしていますか。
門前高集中型の現場では、一日を回すことが最優先になりがちです。
対人業務に時間を使えば「現場が回らない」と言われる。医師への提案も、積極的に後押しされるとは限らない。
制度が変わっても、職場が変わらなければ、薬剤師の役割は変わりません。
そして3年後、5年後、その差は履歴書に表れます。
どれだけ枚数を扱ったかよりも、どれだけ治療に介入したかが問われる時代に入るからです。
「目玉焼き」比喩が示すもの
清原薬剤管理官は地域医療を「目玉焼き」に例えました。
効率のよい“黄身”だけでなく、支援が必要な“白身”も支えることが行政の役割だと語っています。
この比喩は象徴的です。効率だけを追い求める医療提供体制から、地域全体を支える構造へ。
薬局もその一部として再定義されようとしています。
後発品調剤体制加算を廃止し、「地域支援・医薬品供給対応体制加算」に統合したのも同じ流れです。安定供給や在庫管理、地域への責任を評価軸に加えたことは、薬局に求められる役割が広がっている証拠です。
変化の中で取り残されないために
2026年改定は劇的な革命ではありません。しかし、方向性は明確です。
立地から機能へ。枚数から介入へ。効率から地域責任へ。
この流れの中で、薬剤師のキャリアは静かに二極化していきます。
今の職場でその変化に対応できるなら問題ありません。
しかし、もし環境が変わらないままなら、数年後に市場価値の差が広がる可能性があります。
だからこそ、今一度、自分の立ち位置を確認してほしいのです。
転職エージェントを「情報収集」として使う
転職という言葉に身構える必要はありません。まずは情報を得るだけでいいのです。
薬剤師専門の転職エージェントであれば、求人票に書かれない内部事情まで把握しています。
✅実際に服用薬剤調整支援料2を算定しているのか。
✅在宅はどの程度行っているのか。
✅処方箋集中率はどうか。
✅経営方針は改定をどう捉えているのか。
こうした情報を知るだけでも、自分の現在地が見えてきます。
相談や登録は無料ですし、必ず転職しなければならないわけではありません。
むしろ目的は、将来の選択肢を増やすことです。
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10年後に後悔しないための一歩
制度はゆっくり変わります。
しかし評価軸が変わった瞬間から、差は少しずつ積み上がります。
2026年改定は、薬局と薬剤師に「変わる覚悟」を問いかけました。
あなたの職場は、その変化に本気で向き合っていますか。
あなた自身は、5年後も市場で評価される経験を積めていますか。
もし少しでも不安があるなら、まずは外の世界を知ることから始めてください。情報を持つ人だけが、最後に選べる側に残ります。
未来のキャリアは、今日の小さな行動で変わります。
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