――47点の意味、▲15点減算の現実、1000点評価の実効性、在宅100点の収支構造
2026年度の調剤報酬改定は、見出しだけを見るとインパクトのある数字が並びます。
調剤基本料1は45点から47点へ引き上げ。
一方で門前薬局等への▲15点減算。
後発品体制加算は廃止され、地域支援・医薬品供給対応体制加算(27点〜67点)へ再編。
さらに服用薬剤調整支援料2が1000点で新設。
在宅薬学総合体制加算2は50点から100点へ。
数字だけを見ると、「選別が始まった」「機能評価への大転換」といった印象を受けます。
しかし、制度の思想と実際の経営インパクトは必ずしも一致しません。
本稿では、象徴的な表現を避け、実際の処方箋枚数・点数規模・人件費とのバランスで検証します。
47点と▲15点減算の力関係
まず最も分かりやすいのが基本料です。
45点 → 47点。
増加は2点です。
一方、減算は最大▲15点。
仮に月2000枚応需する薬局で減算対象となった場合、
15点 × 2000枚 = 30,000点/月
年間では 360,000点
です。
これに対し、基本料2点増の効果は
2点 × 2000枚 = 4,000点/月
年間 48,000点
となります。
増加分と減算分を比較すると、
48,000点(増) − 360,000点(減) = ▲312,000点
という構造です。
基本料の「引き上げ」は象徴的ですが、経営インパクトの中心は明らかに減算側です。
ここを見誤ると、改定の重心を読み違えます。
1000点評価は“救済策”になり得るのか
服用薬剤調整支援料2は1000点です。
非常に大きな数字に見えます。
しかし算定上限は月4回。
最大算定しても、
1000点 × 4件 = 4,000点/月
年間 48,000点
です。
これは先ほどの年間減算影響36万点の約7分の1に過ぎません。
つまり、1000点は「単独で収益を支える柱」ではありません。
さらに重要なのは、算定の難易度です。
・6種類以上の内服薬
・2種類以上減薬
・医師への提案
・医学的妥当性の担保
・患者同意
・継続的フォロー
これらをすべて満たして初めて算定できます。
月4件を安定して達成できる薬局は、実務的には限定的でしょう。
1000点は経営補填策というよりも、
「減薬提案を制度上評価する」という政策メッセージと捉える方が妥当です。
地域支援体制加算67点の“収支計算”
27点と67点では40点差があります。
月2000枚なら、
40点 × 2000枚 = 80,000点/月
年間 960,000点
理論上は大きな差です。
しかし67点取得には、
・24時間対応体制
・在宅実績
・麻薬小売業者免許
・一定品目数の備蓄
・ICT連携
・地域連携会議参加
などの条件があります。
仮に薬剤師1名を当番制で待機させ、待機手当を月5万円支給すると仮定します。年間60万円です。
麻薬在庫のロス、ICT費用、連携業務時間を含めれば、年間コストは100万円規模になる可能性もあります。
960,000点(=約96万円相当)と単純比較すると、収支は拮抗します。
処方箋枚数が少ない薬局では赤字になる可能性もあります。
つまり67点は、枚数規模との相関が強い加算です。
体制を整えれば自動的に利益が出るわけではありません。
在宅100点は本当に“倍”か
個人宅訪問は50点から100点へ。
確かに数字は倍です。
しかし同一建物内訪問や効率訪問への評価は抑制されています。
仮に月50件個人宅訪問を行う場合、
100点 × 50件 = 5,000点
年間 60,000点。
ただし訪問1件あたり往復移動30分、滞在30分と仮定すると、1時間の人的コストが発生します。
薬剤師人件費を時給3,000円換算すれば、
50件 × 3,000円 = 150,000円/月
点数換算の収入とほぼ均衡します。
車両費・保険・書類作成時間を含めれば利益率は高くありません。
したがって在宅は「高収益分野」というより、
・機能評価の維持
・地域支援加算の条件充足
・将来改定への備え
という意味合いが強いと考えられます。
人件費との関係
現在、薬剤師年収は地域差がありますが、500万円〜650万円程度が中心帯とされます。
仮に年収600万円の薬剤師1名を雇用する場合、社会保険料等を含めると実質負担は700万円近くになります。
年間70万点以上の純増がなければ、人件費1名分は吸収できません。
1000点最大算定48,000点。
在宅50件60,000点。
地域支援差分960,000点(ただし体制コスト発生)。
単体加算で人件費を支える構造にはなっていません。
結局、処方箋枚数と基本料構造が経営の土台です。
改定の本質は何か
短期収益ではなく、「評価軸の転換」です。
・立地依存の抑制
・成果介入の可視化
・在宅重視
・24時間体制の義務化方向
これは5年単位で強まる可能性があります。
今は補填規模が小さく見えても、将来的に1000点が2000点になる、在宅評価がさらに強化される、といった拡張余地はあります。
逆に門前減算は今後拡大する可能性もあります。
結論
今回の改定は、
1000点で劇的に儲かる改定ではありません。
在宅で一気に利益が倍増する改定でもありません。
67点が無条件の成功モデルでもありません。
しかし、
減算圧力は確実に存在します。
機能評価への方向転換も明確です。
短期の損益だけでなく、
「どの機能を持つ薬局として残るか」という構造選択を迫る改定です。
そして、薬剤師として生き残っていくために大切なことは、
改定がある度に一喜一憂するのではなく、
薬剤師としての仕事の軸をブラさず、改悪に負けない充分な実力をつけられる職場で働くことです。
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