2025年10月より、医療DX推進体制整備加算における「マイナ保険証利用率」の実績要件が大きく見直されます。
「マイナ保険証を使ってもらえない」「患者説明に時間がかかる」「レセプト対応が煩雑になる」——薬局現場では、さまざまな困難が浮き彫りになってきました。
今回は、中央社会保険医療協議会(中医協)が了承した制度改定の中身を解説するとともに、現場対応のヒント・転職成功事例を交えながら、これからの薬剤師に必要な「立ち回り方」を整理していきます。
📌1. 今回の見直しはなぜ行われるのか?
◾背景:マイナ保険証の“低利用率問題”
国は「マイナンバーカードの保険証利用」を2024年から強く推進していますが、実際の利用率は伸び悩んでいます。
厚労省の2025年6月時点のデータでは、全国平均の利用率は30〜35%程度に留まっており、薬局に限ってはさらに低い地域も。
その背景には以下のような現場事情があります。
- 高齢者層の理解が進んでいない
- システムの不具合・読み取り失敗
- 現場のオペレーションが複雑
- 利用案内をする人手が足りない
このような課題を克服し、マイナ保険証の利用を一気に促進するために、加算制度のハードルが“段階的に引き上げ”られることになったのです。
📊2. 医療DX加算の実績要件の新基準(2025年10月〜)
今回の見直しでは、2025年10月~2026年5月末までの間に、「2段階の引き上げ」が行われます。
加算区分 | 現行 | 2025年10月〜2026年2月 | 2026年3月〜5月 |
---|---|---|---|
加算1・4 | 45%以上 | 60%以上 | 70%以上 |
加算2・5 | 30%以上 | 40%以上 | 50%以上 |
加算3・6 | 15%以上 | 25%以上 | 30%以上 |
👶小児科特例について
- 6歳未満の患者割合が3割以上の小児科外来診療料を算定する医療機関については、加算3・6の実績要件が緩和されます。
📎電子カルテ情報共有サービスの経過措置延長
- 本格稼働予定だった電子カルテ情報共有サービスに関する経過措置も、2026年5月末まで延長されました(当初は2025年9月末まで)。
🧩3. 現場薬剤師にのしかかる“3つの壁”
❶ 利用率を達成するための「業務過多」
患者への声かけ、案内、トラブル対応、そしてレセプト対応まで。現場スタッフに求められる負担は年々増しています。
「本来の薬学的管理に集中したいのに、マイナ説明に1日中かかりきり……」
現場で働いている薬剤師の方であれば思ったことのない人はいないでしょう。
❷ 高齢者・ITリテラシーが低い層の対応
「カードを持ってきたが使い方がわからない」「読み取り端末が反応しない」など、現場での混乱は少なくありません。
❸ 薬局ごとの“温度差”
同じチェーン内でも、店舗によってDX対応の本気度が違うことがあり、連携がとれずに機会損失が生じるケースも。
💡4. 対応策まとめ:薬局が取り組むべき6つのアクション
アクション項目 | 内容 |
---|---|
1. マイナ普及のための声かけ | 患者への声かけマニュアルを整備し、スタッフ間でロールプレイングを行う |
2. 専用POPやポスター設置 | 高齢者にも視認しやすい掲示をレジ・入り口・待合に配置 |
3. トラブル時のフローを統一 | カード読取失敗時の代替手続きや患者対応マニュアルを明文化 |
4. 加算要件達成の見える化 | 各月の利用率を数値で掲示、チームで達成意識を持つ |
5. 患者教育への投資 | ポケットパンフや簡易説明動画の作成を検討 |
6. スタッフ教育 | レセプト対応やマイナ対応の研修会を定期開催 |
💼5. 【転職成功事例①】
▶ 地域密着薬局 → 全国チェーンの「DX先進店舗」へ
30代女性薬剤師(東京都・正社員)
「前職の個人薬局ではマイナ保険証の対応が“ほぼ放置”。加算も取れず、ストレスだけが溜まりました。
思い切って全国展開のチェーン薬局に転職したところ、DX対応が進んでいてびっくり。
マイナ利用も65%を超えており、現場スタッフが制度に理解のある職場だと、こんなに働きやすいのかと実感しています。」
💼6. 【転職成功事例②】
▶ 調剤併設ドラッグストア → デジタル推進型の中小薬局へ
40代男性薬剤師(福岡県・正社員)
「前職ではドラッグストア内の調剤部門に配属されていましたが、本部のIT対応が遅く、マイナ加算未達続き。
評価も上がらず、職場改善も望めなかったので、DX重視の経営を掲げる中小薬局に転職。
現場裁量が高く、IT導入に現場の声が反映される点に魅力を感じました。加算要件を満たせることで、会社にも貢献している実感があります。」
💼7. 【転職成功事例③】
▶ マイナ未対応の薬局 → 病院薬剤部へ異動・連携強化の中心に
20代後半女性薬剤師(大阪府・常勤)
「小規模薬局にいたときは、マイナ関連業務を1人で抱えていて疲弊していました。
大学病院併設の薬剤部へ転職したことで、診療情報連携の中心業務に携われるように。
今では、地域の薬局との電子カルテ共有プロジェクトに関わるなど、スキルアップも実感しています。」
🔁8. これからの薬剤師が意識すべき3つの“選択眼”
今後の薬剤師には、次の3つの視点が必要です。
視点 | 内容 |
---|---|
① 制度変化に強い薬局か | 法改正・加算要件の変化に即応できる体制があるか |
② 現場教育が機能しているか | 新人研修・制度研修があるか、OJTに頼りすぎていないか |
③ デジタル導入が中途半端でないか | マイナ保険証、電子カルテ連携などが“形だけ”になっていないか |
📝9. 今すぐできるアクションまとめ
✅ 店舗内のマイナ利用率を今すぐ確認する
✅ レセプトソフトの更新状況をチェックする
✅ 店舗責任者・本部に制度対応計画を確認する
✅ 「制度に強い薬局」への転職も視野に入れる
📣まとめ:マイナ加算は「生き残る薬局」と「淘汰される薬局」を分けるラインに
今回の見直しで、医療DX加算は“本気度”を問われる制度になりました。
現場薬剤師としても、制度を理解し、活かせる職場かどうかを選ぶ力が求められます。
いまこそ、「加算が取れる」薬局、「制度に強い」職場への転職を視野に入れましょう。

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