- はじめに
- 制度変更の背景を薬剤師として理解する
- 薬剤師として現場でどう対応するか?
- 特別用途食品としての「経口補水液」とは?~成分基準・許可制度のポイントを薬剤師目線で整理~
- 販売現場の変化と現場薬剤師ができること~OTC売り場の運用・POP・在庫管理・説明のすべてをアップデート~
- 経口補水液の主要製品比較と使い分けの実際
- 制度改正がもたらす未来と薬剤師の新たな役割~経口補水液を“売る”から、“正しく届ける”へ~
- 制度は変わる、薬剤師の価値は進化する
はじめに
2025年6月より、「経口補水液(ORS)」の販売ルールが大きく変わります。
これまでは、ナトリウムやブドウ糖を一定量含んでいれば、清涼飲料水として「経口補水液」や「熱中症対策飲料」と表示して販売することが一般的でした。しかし、今後は**「特別用途食品(病者用食品)」としての許可が必要**となり、許可のない製品にこれらの表示は一切できなくなります。
この制度変更により、私たち薬局・ドラッグストア勤務の薬剤師には以下のような影響が出てきます:
- 店頭陳列の見直しと表示管理
- 調剤・OTCカウンターでの接客説明の変更
- 製品知識のアップデート(特別用途食品としての基準)
- 無許可製品と許可製品の違いの説明責任
今回は、薬剤師としてどのように対応すべきかを、制度の背景から実務への落とし込みまで徹底解説します。
制度変更の背景を薬剤師として理解する

「表示できなくなる経口補水液」とは?
従来は「経口補水液」「熱中症対策飲料」などの表現は、法的な定義が曖昧で、多くの清涼飲料水にも使用されていました。しかしその中には、ナトリウム濃度が基準値に満たなかったり、脱水症状への効果を裏付けるエビデンスが不十分な商品も多く、消費者が“何を選べば良いか分からない”状態にあったのが実情です。
消費者庁はこれを問題視し、2023年に「経口補水液」の表示基準を明確化。
2025年6月からは、「特別用途食品(病者用食品・許可基準型)」の許可を受けていない製品は、経口補水液と表示してはいけないという運用に切り替わることとなりました。
なぜ“今”なのか?熱中症リスクの高まる時期と重なる
2025年6月といえば、まさに熱中症予防が社会的に注目される時期。つまり薬局・ドラッグストアにとって、経口補水液のニーズが最も高まるタイミングです。この時期に「売れ筋商品」の表示が使えなくなる、というのは店頭にとっても大きなインパクトがあります。
制度変更により、薬剤師の業務内容が広がる一方で、現場の負担やストレスも増えつつあります。
「今の職場でこの先も働き続けられるのか?」と感じたら、キャリアの見直しどきかもしれません。
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薬剤師として現場でどう対応するか?

今後は以下のような対応が求められます。
● 陳列管理:許可製品と無許可製品の分離
→ 「経口補水液」として販売できるのは許可製品のみ。一緒に並べると誤認を招く可能性があり、景品表示法・健康増進法に抵触するリスクがあります。
● 売り場POP・販促物の修正
→ 「熱中症対策に!」といった表示も見直しが必要に。販促表示のチェックが必須となります。
● 接客時の説明内容のアップデート
→
- 「これは経口補水液ではありませんが…」
- 「こちらは許可を受けた製品なので、脱水予防に適しています」
など、基準や効果に基づいた説明が求められるようになります。
特別用途食品としての「経口補水液」とは?~成分基準・許可制度のポイントを薬剤師目線で整理~

2025年6月から「経口補水液」として販売するためには、「特別用途食品(病者用食品・許可基準型)」の許可を受けていることが必須条件になります。ここでは、薬剤師として現場で正確な説明ができるようになるために、制度の中身・成分基準・許可条件を整理しておきましょう。
特別用途食品(病者用食品・許可基準型)とは?
「特別用途食品」とは、特定の健康状態にある人向けに作られた食品であり、その効果や目的を明確に表示できる食品カテゴリです。病者用、妊産婦用、乳児用、栄養調整用などがあります。
「経口補水液」はその中でも**「病者用食品」**に位置付けられ、脱水状態にある人のための補水目的で設計された飲料として認定されるのです。
経口補水液の表示許可を取得するための条件とは?
2023年の制度改正で、経口補水液は「許可基準型(=基準を満たせば届出によって許可されるタイプ)」の対象になりました。具体的な許可条件は以下のとおりです:
● 成分基準(100mLあたりの目安):
成分 | 基準値(目安) | 説明 |
---|---|---|
ナトリウム | 40〜115mg | 発汗・下痢・嘔吐で失われやすい電解質の補給に必要 |
カリウム | 78〜195mg | 心筋や神経機能に関わる電解質 |
ブドウ糖 | 1.8〜3.6g | ナトリウム吸収の補助とエネルギー供給 |
塩素 | ナトリウムに相当 | 電解質バランスの調整 |
浸透圧 | 240〜270mOsm/kg程度 | 水分吸収を高めるために等張またはやや低張が適正 |
● 表示要件:
- 「病者用食品」および「経口補水液」との記載が明示的に可能
- 「脱水状態にある人の水・電解質補給に適する」旨の表示ができる
- 商品ラベルに消費者庁許可マークと許可番号が付される
● その他の条件:
- 衛生管理基準や製造工程管理など、安全性に関する規定あり
- 栄養成分の含量や有効性・安定性などのエビデンスが必要
無許可製品との違いをどう説明するか?
制度が切り替わると、以下のような区別が必要になります。
比較項目 | 許可取得製品(経口補水液) | 無許可製品(清涼飲料水) |
---|---|---|
表示できる文言 | 「経口補水液」「病者用食品」など | 使用不可 |
成分基準 | 国が定めた基準を満たす | 任意(必ずしも基準に適合しない) |
医師・薬剤師からの推奨 | 可能(根拠に基づく) | 表現に制限あり |
販売時の取り扱い | 医療的アドバイスを伴って可 | 誤解を与える表示は禁止 |
薬剤師としては、「これは“経口補水液”としての表示が認められた製品で、脱水時の補給に効果が期待できます」といった説明が許されるのは、許可製品だけであることを念頭におく必要があります。
OTCカウンター・調剤室での対応ポイント
制度変更に伴い、調剤薬局やドラッグストアで以下のようなアプローチが求められます。
● 「商品選びのサポート」にプロの視点を
「下痢や嘔吐で水分が摂れていないんです…」という相談に対して、
→ 許可取得の経口補水液をおすすめできるかを確認し、在庫管理も含めて対策を。
● 「成分を見て選ぶ」指導も重要
ナトリウム濃度や糖濃度など、患者の疾患状態(腎機能、糖尿病など)に応じた指導が可能になるため、商品パッケージ等の読み方を把握しておくことがカギです。
● 「制度の変化をわかりやすく伝える」コミュニケーション力
→ 「これからは“経口補水液”という言葉が使えない製品も増えるんですよ」
→ 「効果が認められている製品かどうかを見分けるポイントは…」
など、信頼を高める情報提供の場として活用できます。
薬剤師としてのプロフェッショナリズムが試される時代へ
制度変更によって「何でもORSとは言えなくなる」ことは、薬剤師にとってチャンスでもあります。情報の取捨選択が難しい時代だからこそ、正しい商品を選び、適切な助言をできる薬剤師の役割はますます大きくなるのです。
OTC販売の最前線で、専門職として信頼される存在になるために、今回の制度変更をきっかけとして**「商品知識」と「説明力」**の両面を強化していきましょう。
「特別用途食品」などの制度に詳しくなることは、薬剤師としての専門性を高めるチャンスです。
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販売現場の変化と現場薬剤師ができること~OTC売り場の運用・POP・在庫管理・説明のすべてをアップデート~

2025年6月から「経口補水液」と表示できるのは、特別用途食品(病者用食品)として国の許可を得た製品のみとなります。
この制度変更は、私たち薬剤師の現場業務にも確実に影響を及ぼします。とくにOTCの売り場運用や患者対応において、誤認を防ぎ、信頼を築くためのアップデートが不可欠です。
この章では、薬局・ドラッグストアの実務で「薬剤師ができること」を4つの観点から整理します。
売り場・陳列の見直しと「誤認防止」の工夫
まず大きなポイントとなるのが、許可製品と無許可製品の明確な分離です。
● 以前のような「まとめ陳列」は避けるべき
従来は、「経口補水液」「熱中症対策飲料」といったPOPのもと、OS-1などの許可製品と、スポーツドリンクや清涼飲料水が混在して販売されていた売り場が一般的でした。
しかし今後は、それが景品表示法や健康増進法に抵触するリスクを含むようになります。
薬剤師が関与する形で、以下のような陳列を実現すべきです:
- 許可製品コーナー:「経口補水液(特別用途食品)」として明示
- 無許可製品コーナー:「清涼飲料水」「日常の水分補給用」などと表示
- 中間ゾーンの廃止:境界が曖昧な陳列は誤認リスクが高い
● 陳列棚に説明カードを添えるのも有効
「この商品は消費者庁の許可を受けた“経口補水液”です」など、
薬剤師監修のミニ情報カードを掲示したりすることで、店頭での混乱を減らせます。
POP・販促物の見直しと「表示の適正化」
経口補水液と表現できるのは、許可を受けた製品だけ。
そのため、売り場や広告物に使う言葉選びにも注意が必要になります。
● 使える言葉/使えない言葉の整理
表現 | 許可製品で使用可 | 無許可製品で使用可 |
---|---|---|
経口補水液 | ○ | ×(使用禁止) |
病者用食品 | ○ | ×(使用禁止) |
熱中症・脱水対策に最適 | ○(条件付き) | ×(曖昧な表現) |
水分・塩分補給に | ○(表現調整) | △(個別判断) |
スポーツ時の水分補給に | △ | ○ |
薬剤師としては、売り場のPOPや販促企画に関与する場合、“薬機法・景表法・食品表示法”の観点からも確認できる視点を持つことが、現場での信頼につながります。
在庫管理・商品知識のアップデート
● 経口補水液の棚割りを再構成する
制度変更にともない、従来の売れ筋商品が「経口補水液としては扱えなくなる」ケースも出てきます。
薬剤師主導で、下記のような基準で棚構成を見直すと良いでしょう:
- **許可取得済み製品(OS-1、アクアソリタ等)**を第一群に配置
- **類似製品(アミノ酸飲料、スポーツドリンク等)**は別棚で「補助用」として整理
- お客様の誤解を招きやすい商品(似た見た目、類似名称)は特に表示を明確に
● 商品知識の棚卸しを行う
現場薬剤師が「この製品はなぜ経口補水液とは言えないのか?」「どんな点で違うのか?」を即答できるように、店舗内での勉強会や商品比較リストの整備をおすすめします。
患者対応力・説明スキルの向上
制度変更後は、患者や来局者からの質問に答える場面が確実に増えます。
薬剤師は単なる「販売補助」ではなく、情報提供者・信頼の窓口としての役割を強く求められます。
● よくある質問と想定回答
Q:この飲み物も“経口補水液”って書いてあった気がするけど?
→ 「2025年6月から表示ルールが変わり、“経口補水液”と名乗れるのは国の許可を受けた商品だけになりました。」
Q:どっちが脱水に効くの?スポーツドリンクとどう違う?
→ 「スポーツドリンクは日常の水分補給向けですが、経口補水液は電解質濃度や浸透圧が脱水時に最適化されています。症状に応じて選ぶことが大切です。」
Q:子どもや高齢者に飲ませてもいい?
→ 「許可製品であれば、安全性・成分が確認されており、医療現場でも使用されています。」
● 「選び方」のポイントを整理して伝える
- 「今の症状は脱水が進んでいる状態か?」
- 「水分だけでなく塩分(電解質)も失われていないか?」
- 「持病がある方は糖分やカリウムの摂取に注意が必要か?」
これらを踏まえた提案ができれば、薬剤師としての信頼は確実に向上します。
まとめ:制度変更はチャンス。薬剤師の価値を“可視化”できる場面に
経口補水液の制度変更は、確かに煩雑な対応を求められるものです。
しかしその一方で、薬剤師が店頭で「価値ある情報提供者」として活躍できる絶好の機会でもあります。
- 商品の効果的な使い方
- 成分や許可の有無による選別
- 誤解を防ぐプロフェッショナルな接客
これらを丁寧に提供することで、「薬剤師に聞けば安心」という顧客の信頼を醸成できるのです。
制度改正により、現場での説明責任や判断力が求められる今。
適正な人員配置・教育体制が整った職場でなければ、やりがいを発揮するのは難しいかもしれません。
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経口補水液の主要製品比較と使い分けの実際

~「許可あり」VS「許可なし」で何が違う?症状別・年齢別の選び方~
制度改正後、現場薬剤師に求められるのは「この製品がなぜ経口補水液と呼べるのか」「どの商品がどんな患者に向いているのか」を判断・説明できる力です。
本章では、主要な製品を比較しながら、実際の症状や患者層に応じた使い分けのコツを解説します。
【一覧】許可製品と非許可製品の主な違い
まず、「経口補水液」として表示できる許可製品と、そうでない類似製品(例:スポーツドリンク・電解質飲料)を一覧表で整理しましょう。
製品名 | 区分 | ナトリウム(mg/100mL) | 糖質(g/100mL) | 浸透圧(mOsm/kg) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
OS-1(大塚製薬) | 許可製品 | 約115 | 約1.8 | 約270 | 医療機関・介護施設でも使用 |
アクアソリタ | 許可製品 | 約80 | 約2.5 | 約240 | 高齢者向けで飲みやすい風味 |
アクエリアス(清涼飲料) | 非許可製品 | 約40〜50 | 約5.0〜6.0 | 約340 | 糖質・カロリー高め、脱水時には不適 |
ポカリスエット | 非許可製品 | 約49 | 約6.2 | 約340 | 日常補給には良いが脱水補正には不向き |
※数値はおおよその目安です。商品リニューアルにより変動する場合があります。
成分と効果の違いを薬剤師視点で解説
● ナトリウム濃度が鍵を握る
→ 経口補水液の要件である「ナトリウム40~115mg/100mL」をクリアしていないと、脱水時の水分吸収が不十分になります。
とくに嘔吐・下痢・発熱・高齢者の脱水では、ナトリウムが多く必要。
● 糖質量と浸透圧のバランスも重要
→ 一般的なスポーツドリンクは糖質過多の傾向があり、浸透圧が高くなりすぎて胃内停滞や下痢を誘発するリスクもあります。
→ 経口補水液は、ブドウ糖1.8~3.6g/100mL程度に調整されており、ナトリウム吸収を助けながら過剰負荷にならないよう設計されています。
年齢・症状別の使い分けアドバイス
● 【高齢者】
- 脱水リスクが高く、食事量も減りがち。
- 甘さに敏感な方には、アクアソリタなど“マイルド風味”の許可製品を推奨。
- 服薬中の利尿薬・糖尿病治療薬などとの相互作用も要注意。
● 【小児】
- 味の好みで飲めないケースもあるため、冷やす・ストローを使うなど工夫が必要。
- 下痢・嘔吐時はOS-1などの適正濃度製品を中心に。スポーツドリンクはNG。
● 【成人/スポーツ時】
- 軽度脱水・汗かき後など、状況により選択。
- 脱水の兆候(立ちくらみ、頭痛、口渇)がある場合は、スポーツドリンクではなく経口補水液を。
● 【慢性疾患患者】
- 腎機能障害、心不全、糖尿病などがある場合、カリウムや糖分の摂取に要注意。
- 成分表の確認と医師への確認を忘れずに。
許可製品だからできる説明・できない説明
薬剤師としての対応力が問われるのは、「何を伝えてよくて、何を言ってはいけないのか」を理解しているかどうかです。
● 許可製品に対して:
→ 「消費者庁から特別用途食品としての許可を受けた“経口補水液”です」
→ 「軽度から中等度の脱水症状の補水に適しています」
→ 「医療・介護現場でも使用されています」
● 非許可製品に対して:
→ 「“経口補水液”ではありませんが、日常の水分補給用として販売されています」
→ 「熱中症予防には適さないことがあります。脱水時には注意が必要です」
ポイントは、“明確な根拠”に基づいた説明を行うこと。
販売ではなく、適正使用のアドバイスを行う姿勢が信頼構築の鍵になります。
店頭での「比較提示」と顧客満足を両立させる
薬剤師が積極的に介入することで、「なんとなく選ぶ」から「納得して選ぶ」購買へと顧客の行動が変わります。
● 比較表や成分リストを掲示する
→ 「この成分バランスならこの症状に適している」
→ 「許可製品にはこのマークがあります」
→ 「ナトリウム濃度が不足している製品は脱水時には向きません」など
● POPや接客ツールを薬剤師が監修する
→ 「薬剤師おすすめの補水アイテム」
→ 「熱中症が気になるあなたに:正しい水分補給とは?」
→ 「“なんとなくポカリ”から、“ちゃんと選ぶOS-1”へ」など、啓発的なコピーが有効です。
まとめ:薬剤師の「説明力」が選ばれる時代に
制度が変わり、誰でも経口補水液を販売・表示できる時代は終わりました。
これからは、「なぜそれが適しているのか」を科学的根拠と制度理解をもとに説明できる薬剤師が選ばれる時代です。
- 成分の違いを即座に説明できる
- 症状や年齢に応じた製品を提案できる
- 販売にとどまらない健康支援ができる
この力を武器に、店頭の主役としての薬剤師価値をさらに高めていきましょう。
OTCシーズンは忙しく、薬剤師の時間が奪われがち。
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制度改正がもたらす未来と薬剤師の新たな役割~経口補水液を“売る”から、“正しく届ける”へ~

2025年6月から施行される経口補水液の表示ルール改正は、ただの「販売ルールの見直し」ではありません。
それは、“薬剤師が果たすべき役割”がより明確化された制度変更です。
この章では、制度変更が現場に及ぼす中長期的な影響と、薬剤師がどのような姿勢で臨むべきかについて考察します。
なぜ経口補水液に「特別用途食品」の制度が適用されたのか
経口補水液は、体液に近い電解質バランスと浸透圧を持ち、「体調が悪いときに飲むことが前提」の飲料です。
したがって、以下の理由から、特別用途食品(個別許可型)という明確な制度の枠組みが必要とされました。
● 医療的な使い方をされることが多い
→ 発熱・下痢・嘔吐・熱中症など、「疾病時の水分補給」として使用される
● 誤った選択で悪化するリスクがある
→ スポーツドリンクや清涼飲料では、糖質・ナトリウム濃度が不適切なケースも
● 消費者が“見た目”や“イメージ”で選んでしまう
→ 「パッケージが似ているから安心」と誤認されるリスクが高い
制度の背景には、**「本当に必要な人に、正しく使ってもらうための安全装置」**という考え方があるのです。
ドラッグストア薬剤師の専門性が問われる時代へ
制度改正により、パッケージや販促ツールから“経口補水液”の表記が消える製品が出てきます。
一方、許可製品には「特別用途食品(病者用)」の表示が明確になります。
この変化は、私たち薬剤師にとって大きなチャンスです。
● 「どれが経口補水液ですか?」と聞かれる場面が増える
→ → 薬剤師の説明を求められる機会が増える
● 医師の処方や看護指示がない場所でも、正しいアドバイスが可能に
→ → 市販薬・セルフケア領域のプロフェッショナルとして活躍できる
● 顧客の“なんとなく買い”を“納得して選ぶ”に変える力が求められる
→ → 服薬指導に近い形での“選択支援”が可能になる
制度の目的は、「薬剤師を経口補水液の“案内役”にすること」ではありません。
むしろ、「薬剤師が“誤解されがちな製品”を科学的に正しく分類し、必要な人に最適な選択肢を届けること」が本質です。
製薬会社・メーカーとの連携も変化する
今回の制度改正に伴い、製薬会社や飲料メーカーも以下のような対応を進めています:
- 特別用途食品の個別許可を取得する動き
- 医師・薬剤師向けの製品説明資料の刷新
- POP・パネルの作成依頼の増加
- 研修・セミナー開催の活性化
薬剤師としては、これらの情報や資材を**受け取るだけでなく、「現場で活かす提案力」**が求められます。
「どんな販促物なら患者・顧客に伝わるか」「どのような設置場所が効果的か」を、現場視点でフィードバックすることも製品普及への貢献です。
顧客との信頼関係を築く絶好のチャンス
制度改正によって、「え?今までと何が違うの?」という声が顧客から聞かれるようになります。
この“疑問”は、実は信頼獲得の入口です。
例:接客会話のシナリオ
顧客🧓「最近OS-1のPOPが変わったね?」
薬剤師🥼「そうなんです。実は国が“経口補水液”の表示ルールを見直して、許可を受けた製品だけに限定することになったんですよ。だからOS-1やアクアソリタのような製品は、正式に認められた経口補水液なんです」
→ 一言で済ませるのではなく、“制度の意義”を伝えることで、
**「ただの売り手」ではなく「健康を守る専門家」**としての印象を与えることができます。
これからの薬剤師に求められる3つの視点
制度が変わっても、現場で求められる本質は変わりません。
ただし、“求められ方”は少しずつ進化します。
(1) 【教育視点】
→ 顧客に“正しい水分補給”を教える存在に
→ ポスター、接客ツール、SNSなどでも活躍
(2) 【臨床視点】
→ 患者背景(年齢・疾患・脱水リスク)を読み取る力
→ 「この人には経口補水液を勧めるべきか」を判断
(3) 【社会貢献視点】
→ 熱中症予防キャンペーン、地域セミナー、介護施設との連携など
→ 「薬を出すだけの人」から「健康を守る地域の要」へ
この3つの視点を持てる薬剤師は、制度が変わっても“選ばれ続ける存在”になります。
患者に安心して経口補水液を勧めるには、製品知識だけでなく現場での裁量や接客時間の余裕も必要です。
それが難しいと感じたら、今の職場が自分に合っていないのかもしれません。
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制度は変わる、薬剤師の価値は進化する

経口補水液の表示制度変更は、「薬剤師が主役になるチャンス」です。
これまで漠然と「熱中症対策にいいよ」と伝えていたものが、
科学的・制度的に根拠ある説明へと進化していきます。
私たち薬剤師がやるべきことは明確です:
- 成分や表示の意味を正しく理解する
- 顧客にわかりやすく伝える力を磨く
- 現場で“選ばれる存在”であり続ける
「売る」のではなく、「正しく届ける」。
この視点こそが、薬剤師の社会的価値をさらに高めてくれるはずです。
制度改正は、薬剤師の社会的意義を見直す絶好のチャンス。でも、今の職場で“その役割”を発揮できていますか?
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